結婚できない男
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放送後の感想
ドラマが始まる前はそれほど期待していたわけではなかったけど、終わってみたら想像以上によくできたドラマだった。まず、このドラマの成功の要因はキャスティングが抜群だったこと。あの桑野というキャラクターは阿部ちゃんでなければ演じられなかっただろう。まあ、憎まれ口ばかりたたいて、人付き合いが極端に悪く、話をしても妙な薀蓄ばかりときたら、傍から見ればものスゴく嫌な奴なのかもしれないけど、それをなぜか、憎めなくて、周りの人たちがちょっと好奇心にかられてしまうというキャラクターとして成立させたのはまさに、阿部ちゃんのもつキャラクター性の賜物だと思う。そして、相手役の夏川結衣さんもすばらしかった。阿部ちゃんと夏川さんの掛け合いや間の取り方の妙は見事だった。その他、国仲涼子さん、塚本高史さん、高島礼子さん、高知東生さん、草笛光子さんあたりもぴったりのキャスティング。あ、そうそう、KENさん役のこつぶ氏は助演男優賞級の存在感だったなあ。
次に挙げられるのは、脚本の仕上がりのよさだ。尾崎将也さんは作品によって出来不出来にムラがあるのだけど、このドラマは尾崎さんの中で最高傑作といっていいくらい。人間の心の機微をうまく捉えて、リアルで思わず笑ってしまうような場面を描出しながらも、ほどよくドラマらしいデフォルメも施されており、実によくバランスが取れていた。演出もとても間の作り方がうまくて、役者の出す面白みを絶妙に切り取っていてくれた。特に、随所に挿入されるKENさんの画の挿入のタイミングは抜群だった。間とか行間という部分をスゴく大事にしてくれているドラマだからこそ、ラブ・ストーリーっぽいことは何もしていなくても、しっかりとラブ・ストーリーとして成立したのだと思う。原作ものが幅を利かせる中、これだけの作品をオリジナルとして成立させたというのは最大級の賛辞を贈るべき。
最終回は初回を超える視聴率22.0%という有終の美を飾り、「アットホーム・ダッド」「ドラゴン桜」を超え、阿部ちゃん自身最高のヒット作に。いい作品がしっかりと評価される、これはとてもいいことだと思う。
最終話 9/19放送 視聴率22.0% 演出:三宅喜重
評価★★★★★★★★☆☆ 8
今回は、前回に引き続き、みちる(国仲涼子)と桑野の関係を描きながら、最終的には早坂先生との話へと収束させていた。このドラマは結局、桑野と早坂先生のラブ・ストーリーだったということだけど、下世話な話になって申し訳ないが、抱き合ったり、キスしたりとかいう直接的な描写は一切することなく、2人のやり取りとか、1人の時間の空白の間とか、そういった部分をうまく使いながら、2人の気持ちの接近をしっかりと表現していた。見た目的にはここ最近のラブ・ストーリーの中では一番ラブ・ストーリーっぽくなかったかもしれないけど、内容から見たら一番ラブ・ストーリーとして優秀だったし、実際、面白かった。
やはり、最もこのドラマらしいかな、と思ったのは、桑野が早坂先生に思いを告白するシーン。桑野らしく照れて、どもりながら、早坂先生への好意を伝える。それを聞きながら、感極まった状態の早坂先生。とってもいいシーンで、見ているこちらもちょっと感動しちゃっている最中、「結局は、結婚できないんですけどね」という桑野の一言。告白してそのままOKとはいかず、一旦、喧嘩別れしてしまってワンテンポ置いた後、ラストシーンでもう一度いいシーンのやり直しへ。そして、ラストカットも直接、台詞で桑野の思いを表現するのではなく、うまい方法で桑野の早坂先生への最終的な思いを表していて、実に出色だった。
あと、謎の男、金田(高知東生)を憎らしく見ていたはずの桑野だったが、最終的に、「意外といい奴じゃないか」と親近感を抱くという結末には笑えたな。桑野が散々、ツッコミを入れていたあの金田のHPに、桑野自身が金田とのツーショット写真で載ってしまったというオチも秀逸。まあ、心残りといえば、最後まで高知・高島夫妻の夫婦による同シーンでの共演がなかったことか。
一筋縄では行かず、ワンテンポ外してくるあたりが、実にこのドラマらしかったし、桑野のキャラクター性もよく表していたし、単純化できない人間の心の機微もうまく表していたのではないだろうか。いわゆるラブ・ストーリーっぽい演出をしているわけではないのに、そういう演出をしているドラマ以上にしっかりとラブ・ストーリーだったし、お涙頂戴演出をしているわけではないのに、最後はジンワリと感動できる結末だった。ラブ・ストーリーの雰囲気を前面に打ち出したり、「さあ、泣いてくれ」と言わんばかりの演出をしたりしなくても、このドラマのような描き方をしてくれればしっかりとホロッとくるラブ・ストーリーは仕上げられるのだ。このドラマはそういった描き方の可能性を改めて提示してくれた記念碑的作品になると思う。今後は、他のドラマもこのドラマを見習って、見せ方を工夫してほしい。
第11話 9/12放送 視聴率19.2% 演出:小松隆志
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
エピソード自体はややとってつけた感があったが、キャラクターの魅力だけでもこのドラマは十分に回転している。
今回は、桑野とみちる(国仲涼子)の接近を描いた回。みちるに何か不穏なストーカーの影が…。怯えるみちるのボディガードを桑野がやることになる。みちるはストーカーの心当たりとして、遊園地のお化け屋敷で携帯を拾ってくれたミイラの扮装をしていた男を思い出す…。
いきなり、みちるにストーカーが現れたり、なぜか、桑野がボディガードをすることになったり、ミイラ男の尋問に桑野と早坂先生(夏川結衣)が遊園地まで行くことになったり、そのストーカーが同僚女性と口裏を合わせて偽装工作をしたり、その割には、案外すんなり姿を現したり、桑野のデザイン画の漏洩事件があったりと、ちょっとエピソードとしてはツッコミどころは多かったか。要は、みちるが桑野って、いいかも、と思えるようなタイミングがほしかったということになるけど、今回のエピソード自体はややとってつけた感が否めない。
それでも、そのストーカーであるミイラ男に、桑野が男らしくも、毅然というよりはねちっこく、「彼女をつけまわすのはやめてもらえますか」と詰め寄ったシーンは桑野の新たな一面を垣間見れたし、かといっても、桑野のキャラから離れない、うまい作りになっていたと思う。みちるが奇妙な生き物を見るように好奇心を寄せていた存在だった桑野を、恋愛対象に見る目が変わったのにもなかなか説得力があったと思う。
それに加え、早坂先生の裏腹な行動もうまい描き方。桑野への思いは少なからずあるはずなのに、みちるのボディガードを桑野に頼んだり、前回は桑野と沢崎さん(高島礼子)をくっつけようとしたり、という自分の思いとは逆に桑野を別の女性とくっつけようとするあたりも一癖あって、人間らしい。
また、英治(塚本高史)が桑野を思って行動を起こしてくれたことをよほど嬉しかったのか、珍しく涙する桑野というのも新たな一面だったし、英治のキャラクターを見せる意味でも効果的だった。
とにもかくにも、次週で最終回。今クールは最終回がやっときたかと思えるようなドラマが多かったけど、このドラマは最終回が寂しい。今回は、みちるの桑野への仄かな思いをにおわせた段階で終わらせたけど、さて、早坂先生との関係は?
第10話 9/5放送 視聴率17.6% 演出:植田尚
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
残り3話でかなりラブストーリーっぽくなってきた。今回は、桑野と沢崎さん(高島礼子)の奇妙な関係。沢崎さんに高待遇での引き抜きの話が。しかし、沢崎さんはなぜか、乗り気ではない。桑野のトラブルを文句を言わずに解決できるのは沢崎さんしかいない。このことはお互い分かっている。しかし、素直になれない桑野は引き抜きに応じるべき、と沢崎さんに告げる。
沢崎さんも仕事上の関係として、8年も桑野の側にいた。そこで、気付いたのは、桑野の起こしたトラブルは仕方がないなあ、で済んで、なぜか、腹が立たないということ。果たして、この感情は仕事以上のもの?沢崎さんのいう仕事以外での関係って?結局、沢崎さんは引き抜きの話を断り、2人はこれからも仕事上の関係を維持することで落ち着いた。
これまで沢崎さんが桑野のトラブルをしっかりと解決してきていて、沢崎さんと桑野の微妙な関係もそれなりにしっかりと触れてきているから、今回の話は自然と入り込めたように思う。あまりラブストーリーっぽい演出をしているわけではないのに、しっかりとラブストーリーになっているのは見事だった。これはここまでコツコツと桑野とキャラクターの関係性を積み上げてきた脚本の賜物だと思う。
ただ、桑野が普段は嫌味をタレまくっているというのに、ここぞというときにしどろもどろのモジモジ君になっちゃうのは男としてはだらしがない。まあ、分からないでもないけど、あそこまで極端に不器用だと、主人公のキャラクターとしてどうかな。まあ、あそこまでモジモジ君にするよりは、強がって素直になれない感じをもっと打ち出したほうがよかったかも。それでも、毎度のように、桑野とケンさんの絡みの編集とか、桑野の一言ボヤキツッコミとか、植田さんの間の取り方はうまかったと思う。
次回はどうやら、桑野とみちる(国仲涼子)の関係についてかな?それで、最終回が早坂先生との関係?それで、結婚できない男が遂に結婚?こんな感じの運びになるのだろうか?お決まりの流れになってほしい気もするが、一筋縄ではいかないのがこのドラマだから、果たしてどうなるか期待。
第9話 8/29放送 視聴率18.0% 演出:小松隆志
評価★★★★★★★★☆☆ 8
何だか、今回の桑野の行動はリアルだったなあ。中川(尾美としのり)の、圭子(三浦理恵子)の前での体裁として、中川が親しくしている若い女性・由紀(三津谷葉子)と彼女ということにされてしまった桑野。その場で彼女のフリをする、それきりの関係かと思っていたが、由紀からのまんざらでもない応答に、こちらもまんざらでもない表情を浮かべる桑野。
桑野にしては珍しくその由紀とデートをすることになる。そのデートの前のニタニタして妙にソワソワした感じや、由紀に電話をかけるかどうかをウジウジと悩む姿はかなりリアルだったと思う。女なんてと普段言ってそうな人ほど、いざとなったらこんな感じになりそうだな、と心から思った。結局、由紀は元カレとよりを戻し、結婚することになって、桑野の仄かな恋心は脆くも崩れ去ったわけだった…。
そんな由紀との関係を、桑野に彼女ができたと勘違いして、周りの女性陣が慌しく動き始めるという展開も面白かった。偏屈で意固地な桑野にほとほと呆れながらも、桑野に彼女ができたと知るとみんながソワソワして、恋愛しなきゃと動き始める。この桑野と周りの女性との奇妙でかつ微妙な関係はうまく描かれていたと思う。特に、みちる(国仲涼子)の描き方はなかなかうまくて、奇妙な隣人ということで好奇心が働いて、桑野の奇妙な生態を覗き見ているうちに桑野のことが気になって仕方がなく、桑野のことを徹底的に調べ上げようと言っていたり、知らず知らずの間に桑野のことを意識させている脚本は見事だった。みちるが話の本筋にどう絡んでくるのかと思っていたけど、こういう方法だったのか。先週の桑野のケンさんとのエピソードも話に絡めていて、あまり本筋とは関係のなかった前回をしっかりと脚本でカバーしていた。
もちろん、桑野と早坂先生(夏川結衣)との微妙な関係も面白い。互いに微妙に心は接近しているはずなのに、会えばイヤミの言い合いをしている2人。その会話のテンポも俄然よくなっているし、ベタに言う、ケンカするほど仲がいいということか。
今回も阿部ちゃんで笑わせてもらった。しょっぱなのルームランナーをかなりの高速で回転させて、不敵な笑みを浮かべて高速で足を回転させている姿は面白くて仕方がなかった。それと、由紀と遊園地(東京ジョイポリス)に行って、絶叫マシンに乗ったあとのグッタリとしていた感じとか。阿部ちゃんは台詞とかではなく、その佇まいでおかしさを醸し出すからスゴいよなあ。
第8話 8/22放送 視聴率14.6% 演出:三宅喜重
評価★★★★★☆☆☆☆☆ 5
今回は番外編のような位置づけかな。桑野と犬の巻といった印象の内容。パグ犬のケンさんの評判がよろしいらしく、恐らくそれを受けて製作されることになったであろうケンさん尽くしの回。ケンさんファンはかなりキュンとくる回だったのではないだろうか。取立て問題で打ち切りとなった某企業CMのチワワよろしく、ケンさんもウルウルとした目でチョコンと座っている姿は犬好きに限らず、やられている人は多いはず。とにかく、ケンさんはうまく演技(調教?)していると思うし、賢い犬だなあと思う。たぶん撮影現場は結構、動物の扱いには苦労しているのだろうけどね。
ということで、みちる(国仲涼子)が入院するという展開にして、実は桑野は犬好きだったという設定も飛び出し、桑野とケンさんの妙な友情が芽生えた4日間を描いたホロリとさせる感動ものといった印象。まあ、動物ものであるならば、うまく作っているといえると思う。だけど、この話が「結婚できない男」、と言われると、微妙…。このドラマは人間観察の視点が面白いドラマなわけだから、ちょっと話としては方向性が変わってしまったかな。突然姿を消したケンさんを必死で探す桑野はかなりこれまでのイメージとかけ離れているような気がするしなあ。
その姿を見た早坂先生(夏川結衣)は、犬を愛せる人が人を愛せないはずがない、と、桑野を見直していくわけで、少しは桑野と早坂先生の関係が縮んだといえるのだろうけど、個人的には犬との絡みより、人との絡みで変わっていく桑野を見たかったかな、という感がある。そもそも、偏屈な独身男がさらに犬好きなんかになっちゃうと、さらに女の人を遠ざけてしまう気がするけど…。
ひとつのエピソードとしたら決して悪くはないと思う。だけど、「結婚できない男」という連続ドラマという観点で見ると、ちょっと本筋から脱線した番外エピソードという感が強かったかな。次回くらいからは少しラブ・ストーリーという面も強くなってきそうな感じだから、今回は中盤で中だるみしないように放たれた清涼剤みたいなところなのだろうか。
第7話 8/15放送 視聴率15.3% 演出:植田尚
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
今回は、早坂先生(夏川結衣)の父親(竜雷太)が登場。このお父様というのがまたお堅い頑固者ということで、このお父様と桑野がなぜか、結託するという展開により、変わり者が2人出てきて、それに早坂先生は振り回される。
でも、同じ自分のポリシーを曲げない桑野と早坂先生のお父様の2人でも、桑野は偏屈で、お父様のほうは頑固、このドラマのあとの番組「タモリのジャポニカ・ロゴス」じゃないけど、日本語というのは奥が深いなあ、と改めて思った。あの桑野さんが押されてしまうくらい押しの強いお父様。この2人の醸し出す珍妙なやり取りと空気感は見ているだけで面白かった。
第4話のときも思ったけど、演出の植田尚さんは間の取り方がお上手でいらっしゃると思う。今回もストーリー自体はこれといって、なかったように思うけど、このドラマは全体的な雰囲気が優れていて、それだけで十分に見切れてしまうという印象を持つ。もちろん、桑野と早坂先生のひとヒネリ効いた会話はニヤリとさせられる。それとともに、何でもない場面での間がとても有効に働いている。桑野が病院の待合室でどのイスに座ろうかとモジモジしている姿とか、ステーキ店で6人がけのテーブルに桑野が1人で居座り、そのせいで6人連れお客が座れなくて、店員から嫌な目線を向けられてもお構いなしの桑野とか、阿部ちゃん自身に台詞がない場面での飄々としたユーモアは格別。そのときの間の調整の仕方が、植田さんはなかなか上手いなあ、と思った。
何かバカなことをさせて笑わせるのではなく、このドラマは役者の演技、役者の出す空気感とその余韻というものをうまく活かしたドラマなのだと思う。TBSのほうではバカなドタバタで笑いを取ろうとしているドラマがあると思うけど、コメディとしたら確実にこのドラマのほうが完成度は上だろうなあ。
第6話 8/8放送 視聴率14.4% 演出:小松隆志
評価★★★★★★★★☆☆ 8
このドラマは、桑野の気持ちが少しずつ、だけど、確実に変わっていくのを軽いテンポの中でも、じっくりと描いてくれているからいい。やはり、この手の微妙な心理変化は唐突になってしまうことも多いのだけど、このドラマはその唐突さがあまり見られないことはすばらしいと思う。
やはり、口下手で、一筋縄ではいかない性格の桑野だから、まだ口に出しているわけではないけど、どことなく早坂先生(夏川結衣)には惹かれているのかもしれない。それを一切、直接的な台詞で表現することなく、間接的表現や雰囲気で醸し出している。
このドラマは桑野目線と桑野以外の目線の使い分けがうまい。例えば、お好み焼き屋のシーンで、桑野が散々、お好み焼きの焼き方の薀蓄を述べ立てた後、そこのお好み焼き屋のオーナーが「適当に焼いて、ワイワイやればいい」と言ったあたりの構図。お好み焼き屋のオーナーのほうが一般的な価値観なのだと思う。桑野独自の考えと一般的考えを、その中立的存在ともいえる早坂先生を真ん中に挟んだ形で、対立させた点が面白い。
それに加え、やはり、ラストシーンは秀逸だったと思う。これまでは仕事に対する自分のポリシーを一切曲げなかった桑野だったが、早坂先生の助言を受け、一晩で態度を180度転換。果たして、桑野の胸の内で何があったのか、桑野は一晩で何を考えたのか?気になるところは多いけど、そこを桑野以外の目線から捉えさせることで、桑野の気持ちに含みを持たせたのは粋な演出だったと思う。
それにしても、阿部ちゃんと夏川さんの安定した演技は安心して鑑賞できるな。この2人の会話は決してポンポン台詞が行き交うというものではなく、間を多用したものだけど、これでも会話からテンポが消えないのはスゴいなあ。
第5話 8/1放送 視聴率15.1% 演出:三宅喜重
評価★★★★★★☆☆☆☆ 6
今回は仕事をする桑野をメインにした回。性格には問題アリの桑野でも、仕事はキッチリとこなす。今回は仕事のし過ぎで過労でダウンしながらも、一度やり始めた仕事はやり通すという桑野の我の強さが出ていた。
今回はそれ以外にも、桑野の潔癖症の面も印象的に描かれていた。私は掃除とかはかなりずぼらな性格で、あまり細かい汚れとかは気にならないのだけど、この桑野さんはちょっとの汚れも拭き取っておかないと気が済まず、掃除を後回しにするということも嫌という性格らしい。でも、何かとても大事なことをしないといけなくて、こんなことをしている時間なんてないはずなのに、なぜか、そのときにはやらないでもいいようなことをやってしまって、結局、その大事なことがギリギリになってしまうというのは私自身もよくあることで、そこはちょっと共感した。
ただ、桑野の否が応でも人を自分の部屋に入れようとしないというポリシーは少しキャラクターとしては過剰すぎたかとも思う。いくら自分の部屋は聖域で、人間関係から解放されたい、といっても、あそこまで人の入室を拒むというのは理解に苦しむ。ここまでくると、桑野さんは偏屈だから、という理由だけで片付けるのには無理が出てきたように思う。今後、何かしらの理由や背景ということへの言及がほしい。
それでも、桑野の部屋というのは、桑野の心というものを比喩したものとも捉えることができる。これまでは憎まれ口を叩いて、相手が自分の心に入り込んでくることを頑なに拒んできた桑野だったが、今回、早坂(夏川結衣)が初めて部屋に潜入することに成功した。これは桑野と早坂の心の距離が少し縮まったことを表す印象的なシーンだったように思えた。
まあ、もうこのドラマも中盤に差し掛かったわけで、どうしてもマッタリになってしまいがちになるだろうから、中盤を乗り切る一工夫に期待したい。
第4話 7/25放送 視聴率16.5% 演出:植田尚
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
前回は桑野の感情の推移が唐突にも思えたけれども、今回は偏屈で1人がいいと言っている割りには、意外と人からチヤホヤされることはまんざらでもないという桑野の捉えどころのない性格をいいバランスで描けていたと思う。
今回、感じたことは、演出の植田さんの間の取り方がとてもこのドラマと合っていたかな、というあたり。台詞がない中で、阿部ちゃんが微妙な表情を浮かべているだけのちょっとしたシーン、阿部ちゃんがモジモジして優柔不断な態度をとるシーン、独り言をいいながら花火に興ずるシーンなど、カットしようと思えばカットできるあたりを絶妙な間で挿入させていたのは効果的だったと思う。
そして、今回は桑野の偏屈さと、独善的すぎた自分を反省する心をバランスよく描けていたのではないか、と思う。どうしても、自分の持っている薀蓄を披露したくなってしまったり、相手に何かいいことをしようとするとどうしても憎まれ口を一言加えてしまうという余計な性格は相変わらず。しかし、周りの言葉にも少しは影響され始めて、人と触れ合ってみるのも悪くないかなとこれまでの自分を少し反省し始めたあたりもジンワリと匂わせてくれていた。ベースとなる性格は堅持しつつも、今回くらい確実な、しかし、ゆっくりとした桑野の変化を見てみたいと思う。
また、ものすごく不器用な方法なのだけども、2つ用意された望遠鏡で、桑野が少し早坂(夏川結衣)に惹かれているのをにおわせたのもなかなかうまかったと思う。
第3話 7/18放送 視聴率15.9% 演出:小松隆志
評価★★★★★★☆☆☆☆ 6
今回の演出は、ドラマ「ドラゴン桜」、映画「奇談」と、ここのところ阿部ちゃんと組むことの多い小松隆志。阿部ちゃんとよく組んでいることから、阿部ちゃんを面白く撮る方法は分かっているらしく、阿部ちゃんの面白みはよく出ていたと思う。だが、脚本のほうには若干、改善すべき点が出てきたように思う。
阿部ちゃんの醸し出す何ともいえない面白さというのはよく出ていたと思う。酒に酔いながら、フラフラと歩いてくるだけの画でも十分におかしかったし、寂しげに猫背気味に歩く後ろ姿、明らかにダサい帽子を買おうかどうか迷う姿、そして、その帽子を買ってかぶってしまう姿とか、台詞なしでその人の佇まいを映すだけでユーモアを感じさせてしまうのだから、阿部ちゃんは優秀な役者だと思う。
それに加え、このドラマは役者の醸し出す空気感がたまらなく微笑ましい。夏川結衣と高島礼子が共演していたシーンの距離感の近そうで遠い、あの微妙な間隔はこの2人だからなせる業だろう。そして、国仲涼子と塚本高史、さくらの若手チームのアダルトチームと打って変わった軽さを帯びた空気感もよかった。
やはり、役者の力というのは絶大で、今日も役者の魅力で最後まで見れた。だが、少し脚本については問題が出てきたような気もする。このドラマは主人公である桑野が少しずつ変わっていくものなので、桑野は変わらなければならないが、前回まではこれといった変化らしい変化はなかったものの、今回は意外と大きく桑野の心は動く。その心が動いたポイントというのが分かりやすければいいのだけど、桑野はいつもニヒルな表情を浮かべたままなので、どうも感情変化が唐突にも思えてしまう。
感情変化については唐突な印象も受けたが、ドラマ自体の構成はちょっとマンネリ化してきたか、といった印象。桑野の奇妙な生態を早坂(夏川結衣)とみちる(国仲涼子)が覗き見るシーンとか、今回の構成は前回とほぼ同じといった印象で、今後、これ以上、この同じような構成を続けられると、飽きてしまうかなと思う。
役者自体はそれぞれとてもいい空気を出していると思う。だからこそ、その魅力を活かすためにも、ゆっくり変えるべきところ、思い切って変えるべきところ、変えないでおくべきところ、といったあたりのメリハリをよくしていくことが求められるのではないかな。
第2話 7/11放送 視聴率14.4% 演出:三宅喜重
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
今回もなかなか面白かったと思う。
ラブ・コメディにおいて、個人的に大事だと思っているのは、キャラクターが魅力的かということとそのキャスティングが妥当であるか、ということ。この手のラブコメといわれるジャンルの作品はストーリーはどうしても似たり寄ったりになってしまう嫌いがあるし、あくまで現実から外れない立ち位置で展開させなければならないことから、ストーリーで面白みを見せるということは基本的に難しい。やはり、人を引き付けるためには、出てくるキャラクターに何かしら共感できる部分とドラマ的な面白みを感じ取らせなければならないし、それを体現させてくれる役者が求められるだろう。
このドラマの場合、キャラクターにしても、キャスティングにしても、とてもうまくハマっていると思う。それぞれのキャラクターが「こいう人いるいる」と「こんな人いねーよ」のちょうど間辺りに位置していて、とてもいいバランスを取っているように思う。だからこそ、話の中に「分かるなあ」と共感してしまう部分も多く見出せたし、いわゆるドラマ的な面白みとしてニヤリとさせられた部分も多かった。
そして、このドラマはキャスティングが絶妙。阿部ちゃんは最高にうまいと思う。阿部ちゃんが1人で焼肉を食いながら、薄ら笑みを浮かべているだけで台詞なしの場面なのに、見ていて笑えて仕方がない。肉を食っているだけで笑いを誘うなんてのはなかなかできることじゃないし、阿部ちゃんの飄々とした存在感の賜物だと思う。また、夏川結衣、国仲涼子、高島礼子という阿部ちゃんを取り囲む3人の女優さんも役にピッタリであると思う。塚本高史のテキトー男ぶりもいいアクセントだ。あと、ブルドックのケンさんもいいところで笑いを取る。こういうコメディこそ、役者の演技力が出るね。こういういい役者が揃ったコメディというのは安心して見れる。
視聴率のほうは先週のロケットスタートから一気に下落したが、内容の仕上がりは安定しているし、個人的に視聴率はこのまま安定するのではないか、と思う。というか、個人的にここまでの雰囲気はお気に入りなので、これ以上上がることまでは期待しないので、このままこの視聴率を最後まで維持してもらいたい。
第1話 7/4放送 視聴率20.2% 演出:三宅喜重
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
なかなか面白かった。演出・脚本は「アットホーム・ダッド」のコンビであるので、阿部ちゃんの使い方を心得ているし、阿部ちゃんも最終的にはお尻を丸出しというシーンまで演じてみせ、特徴的な桑野という人物を快演している。
このドラマのよかった点は、おのおののキャラクターがテレビドラマらしいデフォルメされた部分はあるけれども、「こういう人いるいる」という人間的な部分を決して外していないということだ。阿部ちゃん扮する桑野という人物は敏腕の建築家で仕事はできる男。しかし、極度のヒネクレ者・皮肉屋で協調性や社交性はほとんどない。だから、桑野は結婚などということは考えもしない。だけども、一人を好むと言いながらも、孤独を全く感じていないわけでもない。周りには孤独を謳歌しているように見せ、偏屈な性格で防備しているけども、その内側は意外と孤独であることに一抹の不安を抱いていたりもする。その他の早坂(夏川結衣)、みちる(国仲涼子)、村上(塚本高史)あたりのキャラクターも同じくテレビドラマらしくデフォルメした部分と、共感できる部分とがバランスよく組み立てられているし、キャスティングもイメージ通り。
いや〜、それにしても、やはり、最大の見所は阿部ちゃんの珍妙な演技に尽きる。グチグチ皮肉を言いまくる付き合いにくそうな偏屈なオーラをしっかりと漂わせているあたりはさすが。それ以外にも、痔になってしまって、まさに死にそうな顔になっているシーン、40歳の誕生日の日にこの前会ったばかりの女医である早坂に下半身を露出しながら、肛門検査をされ、そのついでに「誕生日おめでとう」などと言われ、情けなさに涙するシーン、いろいろ事情があって縄跳びを命綱にお隣のみちるの部屋に乗り移ろうとするシーンなど、シーン自体のインパクトはもちろんのこと、阿部ちゃんの適切な演技と存在感で、笑っちゃいけないのだろうな、と思いながらも、ついつい笑えてしまった。
キャスティングもよく、主要キャストは演技が達者な人が多いから、安心して見れるコメディであると思う。ドラマ的な演出過剰なシーンも多いけども、決して浮世離れしてしまうわけではなく、どこかしらに自分を見ながら、ドキッとしてしまうのだが、ついつい笑えてしまう、そんな印象の初回だった。このドラマの中のキャラクターは決して一辺倒なものではなく、しっかりと矛盾を感じさせてくれる点が多く、好感が持てる。これからの展開が十分に期待できるなかなかオシャレなコメディに仕上がったと思う。
それにしても、このドラマ、初回20.2%ですか。阿部ちゃんはもはや、すっかり視聴率男ですな。
放送前の感想
映画・ドラマと絶好調の阿部ちゃん主演のラブ・コメディ。脚本の尾崎将也、演出の三宅喜重、音楽の仲西匡と、2004年4-6月放送の阿部ちゃん主演の「アットホーム・ダッド」のスタッフが多く参加。ストーリーは阿部ちゃん扮する結婚には興味がない男が、夏川結衣、国仲涼子、高島礼子という3人の美女に出会うことで、心が変わっていくというものらしい。尾崎将也は「7人の女弁護士」で醜態をさらしたばかりなので、多少不安が残るが、阿部ちゃん主演なので、とりあえず期待して見てみることにする。