クロサギ
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放送後の感想
なかなかの好作だったのではないだろうか。個人的には決して嫌いではない内容だった。まあ、いろいろと弱点があるのは確かだ。詐欺の部分の痛快さと、黒崎らキャラクターのドラマの部分のつながりがあまりうまくなかったように見えた。石井さんと平野さんの演出の質感の違いも明確で、平野さんはエンターテインメントに徹した作りだったが、石井さんはキャラクターのドラマの湿っぽさに詐欺の部分が引っ張られていたように見えた。演出プランの歩み寄りを図って、この2人の中間ぐらいの仕上がりがベストだったかもしれない。とはいえ、最後の大どんでん返しもしっかりと決まり、詐欺の部分の痛快さはまずまずで見ごたえがあった。それに加え、悪をもって悪を征すべきか、善をもって悪を征すべきかという論題や、復讐の連鎖はいかにして止められ、事件が終わっても事件の暗闇の中にいる被害者にいかに光をともすかという論題といった高尚なテーマに立ち向かった点も評価したい。こちらのほうはもう少し掘り下げてほしかったが、そうするとあまりに重くなりすぎるから、いい按配でバランスを取ったということだろう。金曜ドラマということだから、これ以上、重たい話にはできないし、ちょうどいいところで妥協点を見つけたといえるだろう。期待した堀北真希は悪くなかったが、キャラクターが真面目すぎて面白くなかった。山下についてはよくやっていたと思う。だが、何といっても山崎努さんの迫力には負ける。山崎さんはよかったが、哀川翔さんの使い方には問題があった。問題点はあったものの、TBSのこの手のサスペンスものはこれまで成功したためしがなかったので、今回は最終回までもたせることができたということは大きな進歩だと思う。視聴率の好評を受け、しっかりと続編への種まきもしてあるしたたかさも見せている。続編はありそうな気配だから、続きに期待しよう。
最終回スペシャル 6/23放送 視聴率16.9% 演出:石井康晴
(ゲスト出演)萩原聖人、松居直美、杉田かおる、みのもんた
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
すべては桂木さん(山崎努)の手の中で踊らされているだけのゲームだったということなのね…。よく桂木さんに踊らされているだけという台詞が出ていたけど、こういうことだったのか。最後の大どんでん返しはさすがに驚いた。
今回は最終回ということで、黒崎の過去の核心に触れる内容だった。あえて黒崎の過去につながる詐欺の被害者を紹介し、最終的に標的を自分に向けさそうとする桂木。その渦中で、第1話に登場した新川(杉田かおる)の告発により黒崎に逮捕状が出る。警察に追われながらも、過去の清算を果たそうとする黒崎。しかし、このことは桂木が周到に準備したゲームだったのだ…。
最後の大どんでん返しは見事だったと思う。桂木の存在ちゅうのが最後の最後まで分からなくて、わざわざ山崎努さんほどの人をキャスティングするほどのキャラクターなのかとも思っていたけど、あのラストシーンだけで、このドラマは山下や堀北真希より、山崎努さんのためにあったと言っても過言ではないくらいのインパクトがあった。ドラマ全体で、一番狡猾だった存在が桂木であり、黒崎なんかが手の届く相手ではないことが分かった。1セットの中から一歩も外に出ないで、山下を喰った山崎さんの存在感には脱帽だね。
それでも、黒崎の詐欺に対する恨みみたいな部分はうまく出ていたのではないだろうか。山下の熱演もあり、黒崎の胸のうちの思いの深さは表現できていたと思う。恨みは根深いが、決して家族を殺した父親を肯定もせず、自分はいくら恨んでいたとしても相手を殺さずに復讐をするという黒崎の信念は、一種のヒーロー的な要素と犯罪者という要素をうまく折衷させたものである。それに加え、氷柱(堀北真希)の「一人じゃないから」という言葉も悪くなくて、黒崎を悪の道から解放したいという思いの強さは伝わった。
だが、あまりにも仰々しい警察の立ち回りには唖然とした。詐欺師1人をあんな人を大動員して捜査するというのも考えにくいし、あんないっぱい捜査員を動員できるなら、たかが小僧1人を取り逃がすなよ、と思った。台詞の中でも大失態だ、と言っているが、あれは大失態どころじゃないでしょう。最後の最後まで神志名(哀川翔)は間抜けだったように思えたし、せっかく哀川翔さんを使うなら、もっとうまく使ってほしかった。それと、最後までゆかり(市川由衣)のキャラクターにはなじめなかったな。昼ドラ風に悪女に変身したかと思ったら、最終回であっけなく改心。ここは改善の余地はあった。あと、みの!どんだけ「朝ズバッ」の権威を振りかざして、ゲスト出演すりゃ、気が済むんだ?「弁護士のくず」にも出るらしいじゃない。いい加減にしてほしい。
とまあ、問題点はあったものの、エンドロール明けの意外な展開の連続で何とか盛り返した。それに、あえて解決していないシコリを残したまま、続編の保険を作ったのも悪くないだろう。演出の石井さんは「花より男子」のときも終わりがけに「See You!」で続編をにおわせた終わり方をしていて、今回も同様。これからシリーズ化してもある程度の成績を残せる作品を石井さんは2つも持つことになりました。
第10話 6/16放送 視聴率15.4% 演出:平野俊一
(ゲスト出演)いしだあゆみ、萩原聖人、松居直美、松村邦洋、杉田かおる
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
個人的にはやはり、「クロサギ」には平野俊一さんの演出が合っているような気がする。今回は、エンターテインメント志向の平野さんらしく、詐欺の部分は明るくコミカルに、キャラクターのドラマの部分は暗くダークトーンで描くというようにかなり輪郭の違いを打ち出した描き方で、こちらのほうが好感が持てる。
今回は、通信販売詐欺。内職で小遣い稼ぎをダシに主婦を騙し、高額の内職キットを買わせ、通信販売のダイレクトメールを書かせる仕事をさせ、そのダイレクトメールを送った中から購入者がいたら、売り上げから幾分かのマージンを支払う約束をしたものの、その中から購入者がいても適当に言いくるめてマージンを支払うことなく、高額のキットや顧客リストを主婦に買わせ続けるという詐欺。その詐欺の首謀者は、表向きは通信販売会社の社長をつとめる江守(いしだあゆみ)。
今回は前回や前々回とは違って、かなり詐欺の部分はコミカルさを強調したエンターテインメント性の強いものだった。やはり、いしだあゆみの化け猫のような銭ゲバ女の演技は印象的だった。あんなにたくさん金を巻き上げているのに、小銭をたんまりと貯金している姿は強烈だった。
さて、キャラクターのドラマのほうだが、最終回を前にして、今回は急速に黒崎の家族を心中に追い込んだフランチャイズ詐欺の核心に迫る内容だった。桂木(山崎努)は自身の命があまりないことを察してか、最後のゲームを開始する。今回扱った通信販売詐欺の被害者である水野(松居直美)は一見、黒崎とは無関係のようだが、実は意外なつながりがあり、それを知って、あえて桂木はこの通信販売詐欺の情報を売ったのである。水野の夫も詐欺の被害にあっており、その詐欺は黒崎の父も騙されたフランチャイズ詐欺。フランチャイズ詐欺というのは、フランチャイズチェーンを出店し、その店長になる契約をして多額の金を騙し取り、実際は出店の話もすべて嘘という詐欺。水野の夫が騙されたのは、黒崎の父親が騙された詐欺と全く同じ手口によるものだったのだ。つまりは、同一犯であるということ。その延長線上に浮かんだのは、御木本(岸部シロー)とその手下である春日(萩原聖人)。そして、桂木のゲームのゴールとして黒崎最後の復讐の相手と考えているのは、桂木本人なのだろうか…。
とにかく、次回は最終回ということで、黒崎が遂に復讐心の大元への復讐を始めるわけだ。その復讐の顛末はもちろんのこと、遂に逮捕状が出た黒崎がこれから先どのような運命を辿るのかにも注目したい。
第9話 6/9放送 視聴率15.8% 演出:大岡進
(ゲスト出演)片平なぎさ、白川由美
評価★★★★★☆☆☆☆☆ 5
う〜ん、あまり盛り上がらなかったなあ。やはり、キャラクターのドラマの部分がかなり湿っぽいということもあってか、演出の人は大岡さんという新しい人が出てきたが、この人も詐欺の部分の痛快さを演出しなくてはならない部分にまで、ドラマ部分の湿っぽさにつられて、あまりテンポがよろしくない。石井さんと同様な傾向が見られた。
今回は、税務署職員などになりすますことによって、人からお金を騙し取ろうとするなりすまし詐欺のお話。なりすまし詐欺の詐欺師である冴島洋子役を、「トリック-劇場版2-」といい、ここ最近、悪役づいている片平なぎさが演じる。
キャラクターのドラマ部分で、訴えんとしていることは分かるし、とても含蓄に富んだ掘り下げであるとも思う。だが、それが鑑賞の対象として見るとすれば、盛り上がりに欠けると言わざるを得ない。テンポがいいとは決して思えないし、私たちにかなりの悲壮感を与えられもするものであるのだが、そこまで心を突く話に昇華していないなあ、と思った。やはり、ずっと事件の中を生きてきた黒崎にとって、復讐こそがその過去の傷を忘れさせてくれることだった。しかし、桂木(山崎努)が自らの保身のために黒崎に情報を売るのをやめたとすると、復讐の手立ては消えてしまう。そのときに、黒崎の心に残るのは言い様のない詐欺への憎しみとその憎しみを誰にも打ち明けられない孤独である。その孤独から救ってくれるのが、氷柱(堀北真希)の存在ということなのだ。
やはり、感じざるを得ないのは、氷柱のキャラクターにアクセントが足らないということだ。前にも書いたと思うけども、真っ直ぐなキャラクターである必要はあったと思うが、氷柱には真っ直ぐということ以外にこれといって惹かれるポイントがない。これはキャラクターとして黒崎と対峙させてみると、やはり、弱いのだ。そして、氷柱がどうもババくさい。漬物だ、鶏そぼろだ、どうもおばあちゃんの料理のようなチョイスで、せっかく堀北真希ちゃんという上り調子の若手女優を使っているのに、全くとして若々しさを感じない。このババくささがさらに、空気を湿っぽくしていると思う。
やはり、ここのところ、話もまとめに入っているので、詐欺の痛快さよりもドラマ部分に重点を置いているのは分かる。だが、ドラマメインにするのであれば、復讐の連鎖の空しさとか復讐せざるをえない人の悲しい性とその者の激しい悲壮感、そして、それを知り不安を隠せないその者のことを親身になって考えてくれる者の存在、その視線を受けながらも、危険に身を投じるしかないことへの葛藤、そして、その葛藤をさらに掻き立てるその者を追い詰める危険…、もっとこれらの要素を突き詰めてほしい。まだまだこの程度では、キャラの心情ドラマとしては生半可だろう。それでも、若者向けのテレビドラマとすれば、こうやって難しい論点に立ち向かおうという意欲を見せてくれたことは評価すべきかもしれない。それがそうだとしても、詐欺の部分までテンポが奪われているというのは問題だ。特に、今回は片平なぎさという大物が出演したのだから、もう少し詐欺師バトルを盛り上げてほしかった。
どうも、篠崎絵里子や渡邉睦月という脚本家の名前はここのところTBSドラマでよく目にするが、この2人は出だしはいつもいいかなと思うのだが、後半になるといつも決まって尻つぼみだな、と感じる作品が多い。このドラマもそんな臭いがしてきた。あと2回で、まだ有効活用されたといえない桂木、神志名(哀川翔)、早瀬(奥貫薫)をどこまでうまく使えるかが鍵になるが、ここまでがこんな感じではあまり期待が持てないな。
第8話 6/2放送 視聴率14.5% 演出:石井康晴
(ゲスト出演)大塚寧々、鶴見辰吾
評価★★★★★★☆☆☆☆ 6
どうも、石井さんの演出する回はドラマの部分を強調する作りにしているようだ。平野さんの回はエンターテインメントとして徹している傾向が強いようだけどね。だから、感触としては、第2話のときと似ていて、ドラマの湿っぽさに引っ張られて、詐欺の部分の痛快さやテンポのよさが奪われているような気がする。
今回は、欠陥住宅詐欺ということで、手抜き工事により欠陥住宅を提供してはいるが、その証拠をそろえるのが難しく、まだ大企業としてのうのうと欠陥住宅を提供し続けている協創住宅が黒崎のターゲット。今回は黒崎の話というよりは、白石(加藤浩次)の背景を描くドラマといった色合いが強かった。
黒崎の依頼人の星谷澄子(大塚寧々)と白石の関係を軸に話は展開。この2人は学生時代にノートを貸し合ったりする仲だったが、とある"詐欺事件"を機に互いの仲は険悪になってしまう。この詐欺事件を機に、白石はシロサギになることを決意したというわけだ。文系の白石と理系の星谷のノートを合わせると完璧なノートになったというエピソードをうまく絡めながら、黒崎があえて白石とタッグを組み、白石は白石で目的を達成するという過程を描いていたと思う。
そして、白石と星谷との関係は、今の黒崎と氷柱(堀北真希)の関係とも重なる部分であり、この2組の男女を通して、事件が解決すれば、事件が終わったわけではないという現実を描き出していく。詐欺の被害者は事件が解決したとしても、その後も事件の中を生き続けなければいけない。その暗闇の中、被害者は詐欺を恨むことでしか生きられない。詐欺を許すということは恨むということより大きなパワーが必要なのだ。やはり、当人を暗闇に光をともし、詐欺を許す気にさせるのは、その人のことを親身になって思ってくれる人の存在である。星谷のようなアプローチもあるだろうし、氷柱のようなアプローチもあるだろう。それはそれぞれの生き方ということなのだろう。復讐の連鎖という永遠に続きかねない論題にいかに向き合うか、という点を言及しようとするこのドラマの方向性は大いに買いたい。
だが、これが必ずしもこの回の面白み自体につながったとは思えないのが残念だ。石井さんの回はどうも登場人物のドラマの部分の湿っぽさに、詐欺の部分が引っ張られてしまう嫌いがあり、テンポのよさや痛快さが何割か減ってしまっているように思う。できれば、このドラマは詐欺のシーンの痛快さも欠かせない要素だろうから、登場人物のドラマのシーンと両立させてほしい。また、ゆかり(市川由衣)の氷柱に対する昼ドラのような仕打ちはどうなのだろう?あそこだけ何だか色が違うんだよなあ。やろうとしていることは間違っていないと思うのだが、その描き方にはもう少し工夫できるように思えた。
第7話 5/26放送 視聴率12.3% 演出:平野俊一
(ゲスト出演)内海桂子、和泉元彌、原田夏希
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
ここ2話、キャラクターの過去を中心とした回が続いていたが、今回は久々に詐欺の痛快さに回帰していた。多少、やりすぎの感もあったが、痛快さはこれまでの回の中でもかなり高いほうだったと思う。
今回の黒崎の標的は、インチキ霊能力で金を巻き上げている神代(和泉元彌)。今回は「トリック」の第1シリーズの『千里眼』の回に似た内容だった。状況判断や誘導尋問によってさも霊視したかのように見せるコールドリーディング、あらかじめ下調べしたことをさも霊視したかのように見せるホットリーディングという基本的な手品のトリックを駆使しながら、相手を騙す神代を黒崎が罠にハメる。
かなり和泉元彌の演技はオーバーアクトだったし、英語の台詞をしゃべらせるなど、コメディ要素が強い描写があり、さすがにそこはやりすぎかと思った。だが、その和泉元彌のいかにもな胡散臭さがインチキ霊能力者の役柄にイメージとして後半になると符合してきて、その前半のやや冗長な展開も終盤の神代との最終対決の盛り上がりを踏まえれば、それほど気にならなくなった。そして、神代の詐欺の被害者である長く付き添った夫を亡くしたおばあさん(内海桂子)のドラマや彼女への黒崎の粋な口説き文句といい、このドラマには珍しくホロッとさせるシーンまで盛り込んであり、エンターテインメント性は高かったように思う。
そして、堀北真希の熱演も相まって、キャラクターのドラマもなかなか見応えがあった。未だに目的が分からず、実に不気味な存在である桂木(山崎努)。その桂木が黒崎と詐欺でつながりがあることを知ってしまった氷柱(堀北真希)が桂木に涙ながらに、黒崎にシロサギの情報を流さないで、と訴えるシーンはかなり真に迫っていたと思う。その光景を少し目を潤ませながら見る黒崎。しかし、黒崎は詐欺師を喰うことをやめようとはしない。だが、少なからず、氷柱の真っ直ぐな思いは黒崎の心を惑わせはずだ。この氷柱の真っ直ぐな思いや愛が黒崎をこれからどのように変えていくかが注目点だ。
第6話 5/19放送 視聴率16.4% 演出:武藤淳
(ゲスト出演)黒沢年雄、半海一晃、飯尾和樹
評価★★★★★☆☆☆☆☆ 5
今回は全体的に単調であまり展開に引き込まれなかったなあ。今回は神志名(哀川翔)の過去に触れた回だったわけだけど、このドラマはなぜか、神志名のことを触れる場面になると、いきなりトーンダウンしてしまう傾向があると思う。
一応、神志名の過去を説明しておくと、この人は父親がいわゆるシロサギで、母親がこの詐欺師の父親の影響があってはいけない、と息子である将の死亡届を出し、自分たちの籍から抹消し、別の神志名家の子どもとして新たに出生届を出した、という実に複雑な過去があるらしく、2歳のとき死亡届が出され、神志名姓に変わったので、戸籍上の年齢は実際の年齢より2歳低く記載されているということのようだ。つまり、この神志名という男もシロサギに人生を狂わされた人の1人であるということだ。ただ、コミックが原作だし、詐欺師のドラマだから仕方がないとは思うが、いくら何でも黒崎の周りには詐欺で人生が狂わされたというかなりの過去をもつ人ばかりが集まってきて、もう正直、クドいかな、と思えてきた。
それに、今回は期待していたほど盛り上がらなかった。やはり、全体的に展開やテンポが短調だったように思えた。ドラマが始まった頃から思っていたが、どうもこのドラマでは神志名が出てくると、テンポが停滞しているような気がする。やはり、哀川翔さんほどの人を起用したのだから、黒崎との追いつ追われつのような駆け引きを繰り広げてほしいものだ。それに、神志名のシロサギを憎む気持ちを表現するための黒崎をボコボコに殴るシーンがあったが、あのシーンの出来はヒドかった。だって、どう見てもフリをしていることが丸分かりじゃん。後の展開で傷を痛がる黒崎の画が長いことあるが、そこに全くとして説得力が出ない。ここがジャニーズの限界なのかなあ。やるなら、顔を腫れ上がったメイクをさせるくらい激しく真に迫った暴力シーンにしないと、全く心情が表現できないと思う。哀川翔さんほどの人を起用したなら、もっと有効活用の方法もあるだろうに。脚本の篠崎さんは神志名の活用の仕方にかなり迷いがあるのではないかなあ。
神志名の描き方が単調なのに釣られて、今回は詐欺に関しても単調さが否めなかった。神志名のエピソードに今回の詐欺事件がうまく絡んでいるとも思えなかったし、内容も基本的にパロディだった。今回の舞台は西木更津市という架空の市で、ネズミ講まがいのことをする大物詐欺師・佐多(黒沢年雄)が今回のターゲット。だが、これはどう考えても、「池袋ウエストゲートパーク」と「木更津キャッツアイ」のパロディ。ウエストゲートパークの「ウエスト(=西)」とキャッツアイの「木更津」を組み合わせた市の名前がそれを物語っているし、ネズミ講まがいの詐欺は「池袋ウエストゲートパーク」でも同じような事件を扱っていた。神志名の過去に触れなければならない、ということから、今回は詐欺の部分がパロディに加え、やや雑だったか、と思えた。
また、今回から氷柱とゆかり(市川由衣)の黒崎を巡る三角関係が話に絡んでくるが、正直、これはいらなかった。まあ、氷柱とゆかりで、愛と悪の対立における向かい合い方の二極対立を生み出したいのだろう。黒崎のことは好きなのだが、黒崎の過去を分かった上でも、復讐の連鎖を止めるために黒崎の詐欺に反対する氷柱。そして、黒崎のことを好きなのは同じだが、黒崎の過去、復讐心そういった悪の部分に関しても理解を示してあげたいと思うゆかり。確かに言いたいことは分かるのだが、堀北真希の場合は役柄に、市川由衣の場合は演技力に問題があるから、ドラマとしてはあまり盛り上がらなかった。
魅力的な役柄やキャストが多い中、やはり、中盤に差し掛かって、それらを有効に活用し切れていないように思えてきた。これ以後、桂木(山崎努)の過去や狙いにも触れられるのだろうが、せっかく山崎努さんほどの人をブッキングできたのだから、しっかりと使い切ってほしい。
第5話 5/12放送 視聴率12.7% 演出:石井康晴
(ゲスト出演)泉谷しげる、永島暎子、田中要次
評価★★★★★★★☆☆☆ 7
今回は詐欺メインではなく、詐欺をサイドストーリーにすることで、氷柱(堀北真希)のドラマを引き立て、個性がなかなか出てこなかった氷柱のキャラクターをかなり際立たせる効果があったように思う。
今回は、氷柱の父親(泉谷しげる)がいきなり上京してくることから話がスタート。その父親は何をやってもダメ親父で、母親から金をせびってばかり。氷柱の父親は、東京で心機一転、ネットビジネスの雇われ店長を始めようとする。しかし、そのネットビジネスではほとんど価値もない商品をブランドものと偽って売る詐欺が行われていた。今回の黒崎の標的はそのネットビジネスの黒幕をつかむことで、そのきっかけとして氷柱の父親に詐欺を仕掛けることになる…。
氷柱というキャラはかなり真っ直ぐな役柄であるので、曲者が多いこのドラマの中では個性がなかなか出にくかった。そういう難点もあったのだが、この回を設けることで、氷柱の真っ直ぐさがかなりキャラクターとして強力なものに補強されたのではないかと思う。ダメ親父に反発しながらも、親子という絆は忘れられず、ダメ親父でも信じたい、と思う気持ち。氷柱が検事を目指したいと思うきっかけとなった父親との関係を印象付けたというのは正解だった。このダメ親父を演じた泉谷しげるさんがいい味を出していた。
今回はあくまで黒崎は氷柱の引き立て役に回っていて、詐欺自体も氷柱のドラマを引き立てるためのサイドストーリーとなっていた。サイドストーリーはサイドストーリーなりに、控えめな演出になりながらも、それなりにヒネリの効いた仕上がりとなっており、バランスが取れていたと思う。
そして、これからの見所となるのが、黒崎と氷柱の関係だ。氷柱はかなり奥手ということらしいけど、なぜだか、今回急に黒崎に大胆にも思いを告白し、次回からゆかり(市川由衣)との三角関係になるのだとか。ちょっとここは話の展開が急すぎる気もするが、互いに住む世界が違う2人の関係がどう転ぶかには注目だろう。そして、氷柱との恋愛感情というのは、黒崎に詐欺を止めさせる、復讐の連鎖を断ち切るという点で重要な鍵になってくるはずなので、注目すべきところだろう。
また、こちらも黒崎に詐欺を止めさせるという点では同じ抗力を持つ神志名(哀川翔)の過去は次週、明らかになるという。黒崎が詐欺を止めさせられるのは、氷柱の思いか、神志名の逮捕か。これから数回は早瀬(奥貫薫)を含め、キャラクターを掘り下げていく展開へとなっていきそうだ。
第4話 5/5放送 視聴率16.7% 演出:平野俊一
(ゲスト出演)小野武彦
評価★★★★★★★★☆☆ 8
今回は面白かった。黒崎と白石(加藤浩次)の頭脳戦はもちろんのこと、キャラクターのドラマに関しても進展した部分が多く、見応えがあった。
今回の黒崎の標的は、大企業に潜入し、相手を気さくな立ち振る舞いで信用させ、詐欺行為を行う白石(加藤浩次)。建設会社の重役・江口(小野武彦)は白石にまんまとハメられ、白石が持ち去った10億円の横領の濡れ衣をかけられることとなった。そこで、黒崎は江口と組み、白石をハメようとする…。
今回は、最強の敵・黒崎ピンチといった見出しがテレビ欄には並んでいた。大体、最強という触れ込みはハッタリで、実際は大したことないというのがほとんど。だけども、今回の標的である白石は最強とまではいかないまでも、かなりの強敵であることは間違いないだろう。黒崎と白石の腹の探りあいにはかなりの見応えがあったと思う。黒崎が白石を出し抜こうとしたら、白石は黒崎を利用し、自分の利益は確保しようと裏で画策する。最後のどんでん返しといい、詐欺師VS詐欺師のバトルという点でいえば、申し分ない出来だった。白石は自分の利益さえ確保できればよく、黒崎の煽りに決して乗ろうとはしない。白石は黒崎が詐欺師であることに気付いていたのだろうが、それをあえて気付かないフリをして黒崎を利用したわけだ。黒崎の煽りに乗らず、黒崎を潰そうとはしない。そういう点では、黒崎にとっては対象としにくいタイプであった。そういう意味では、最強の敵といえるのかもしれない。
そして、今回の特徴は時事を話にうまく取り入れている点だ。橋げた工事に使われる材料の質量を白石が書き換えて、その減った材料費である10億円を掠め取り、手抜き工事として世に暴露されることで、江口に濡れ衣を着せるという巧妙な詐欺なのであるが、恐らくこの詐欺の着想は昨今世間を騒がせている一連の耐震偽装事件に得たのではないかと思われる。さらに、白石が黒崎に持ちかけたいわゆる「未公開株」の取引も今現在話題となっている。未公開株というのは、上場前の企業の株式のこと。上場前の株を相対的に格安で手に入れ、その株が上場され、株価が跳ね上がった時点で売れば大きな利益が出る。そこを狙った詐欺がこのところ急増している。株の知識の少ないご老人などに、専門用語を並び立てて、その会社の株式を大量に買わせる、しかし、その企業に問い合わせてみると、上場の予定はない、というような詐欺だ。そのような今現在の時事をさりげなく盛り込んできたあたりは大変うまい脚本だと思う。
それに加え、ここのところ停滞気味だった黒崎と氷柱(堀北真希)のドラマも大きく進展した。氷柱にはぐうたらのダメ親父がいるわけだ。そのダメ親父が呑気に暮らしているのに対し、真面目な母親が必死に働いているという実に不公平な現実。これは黒崎の境遇とも大きく重なるところで、詐欺に騙された黒崎の一家は心中したのにもかかわらず、その騙した詐欺師は今ものうのうと生きている。この不公平な現実に憤りを覚えているのは2人とも一緒。しかし、その不公平さを解消しようと黒崎は詐欺師という悪の道を選び、氷柱は検事になりたいと正義の道を選んだ。2人の二極対立は今回でかなり鮮明になった。
また、神志名(哀川翔)や桂木(山崎努)といったこれまで未消化だったキャラクターにも光が当たるようになってきた。特に、桂木が何の目的かは知らないが、氷柱に接近を始めている。ニターとした笑みを浮かべる山崎さんは実に不気味だ。
次回は、今回、台詞の中に登場した氷柱のダメ親父が登場。演じるのは、泉谷しげるさん。
第3話 4/28放送 視聴率16.0% 演出:武藤淳
(ゲスト出演)堺正章、桐谷健太、高橋真唯
評価★★★★★★☆☆☆☆ 6
う〜ん、惜しいな。このドラマは基本的に詐欺師と詐欺師の騙し合いの場面はなかなか見応えがある。だが、黒崎と氷柱(堀北真希)のシーンになると、テンポが悪くなってしまっているように思える。
今回の黒崎の標的は、盗んだ宝石を加工し、別の商品として売りさばく宝石詐欺師・清水(堺正章)。ゆかりの友人である仲村(高橋真唯)が清水の被害を受けたことから、ゆかり経由で黒崎に話が回ってきたのだった。黒崎はブライダルチェーンの営業マンである相馬(桐谷健太)になりすまし、清水を罠にハメようとする…。
今回は、黒崎と清水の一騎打ちであったが、そのどちらもが互いを警戒し合いながら、駆け引きを繰り広げる過程はなかなか面白かった。特に、クライマックスの黒崎が清水と相馬を絶妙に設定分担させながら、信じ込ませていくシーンは複雑な場面であったが、とても分かりやすくまとめてあったと思う。黒崎は相馬になりすましているので、相馬本人のことを清水には自分の部下と信じ込ませ、その相馬本人に黒崎は自分は結婚を控えた柴崎という人物だと騙り、清水のことを結婚相手の父親だと信じ込ませる。人の思い込みをうまく活用した騙し方で、役柄を巧みに演じ分けながら、同時進行でこなしてしまった犯行には実にスマートさを感じる。
ただ、スマートさを感じると言ってはみたものの、他人を騙していて、それが犯罪であるということには変わりがない。その部分を明確にさせるためのキャラクターが氷柱なのだろう。だが、その氷柱が出てくるシーンになると、テンポが悪くなって、そこまでいい感じで流れてきた展開が足踏みしてしまっているようにも思える。まあ、それは黒崎にしろ、相手の詐欺師にしろ、周りの人物には実に曲者が多い。その中で、氷柱というのはどこまでも真っ直ぐな普通のキャラクターである。クセのある人たちばかりではなく、普通の人を1人いれることで視聴者に入り込ませる隙を与えているという点で、氷柱のキャラクターは必要だと思う。だけども、キャラクターがあまりに普通すぎて、クセの強いキャラばかりに囲まれると、個性がないからインパクトが埋没してしまっているような気がする。真っ直ぐなキャラであるべきだとは思うが、キャラや堀北真希の演技にもう少し個性やアクセントを与えるべきではないだろうか。キャラとしての面白みに欠けるため、どうも黒崎と氷柱2人のシーンが際立っていないと思う。
次回は、レギュラー出演のはずなのに、ここまでほとんど出番のなかった極楽・加藤さんが登場。狂犬ぶりを見せてほしいね。
第2話 4/21放送 視聴率16.9% 演出:石井康晴
(ゲスト出演)小山慶一郎、小沢真珠
評価★★★★★★☆☆☆☆ 6
第1話は個人的になかなか面白かったと思ったのだけど、第2話はちょいとトーンダウンといった印象。
今回の黒崎の標的は、結婚詐欺を働いて、男を騙し、店を開くことを持ちかけ、金を持ち逃げする詐欺師・田辺美咲(小沢真珠)。美咲は姉弟で共謀して詐欺を働いており、その弟というのが田辺智(小山慶一郎)。智は黒崎の高校のときの同級生だった。久しぶりに再会したかつての親友2人だが、黒崎は智が詐欺を働いているということを知り、愕然とする。ちょうどそのとき、智はカモとしてゆかり(市川由衣)を狙っていた…。
今回の仕上がりは、ちょいと暗めでテンポもあまりよくなかった。プロの詐欺師同士の騙し合いの痛快さを期待したがいろいろと深刻な内容が含まれていたため、その内容に引っ張られたのか、暗ぼったい印象で見ていてスカッとするような内容ではなかった。先週の杉田かおる氏に続き、小沢真珠という色のはっきりとした女優さんを使っていたり、山下と小山というNEWS共演など、ゲストも見所だっただけに、もう少しうまく使ってほしかった。
まあ、親友までも騙すというのがクロサギとしての使命である、ということをフェンスのエピソードを使って、浮かび上がらせたのは悪くはない。だが、それで黒崎の持つ暗い部分ばかりが引き出されてしまった。その暗い部分に雰囲気を引っ張られすぎて、騙し合いの場面のテンポや痛快さが奪われてしまっていた。氷柱(堀北真希)との価値観の対立も、前回からほぼ平行線のまま。氷柱のキャラも正義感を振りかざすばかりで、これといった面白さがない。せっかく堀北真希を起用しているのだから、そろそろキャラ的な面白さを出してみてもいいのではないか。何かと黒崎をつきまとう神志名(哀川翔)との関係においても、これといった緊張感はなく、現時点では不完全燃焼といったところ。
次回はフットワークの軽い大御所・堺正章さんが登場。堺さんの軽妙な演技を引き出して、騙し合いの部分はサクッと痛快に、黒崎の人となりに迫る場面では多少ダークに、とメリハリをつけた演出に期待したい。
第1話 4/14放送 視聴率18.8% 演出:石井康晴
(ゲスト出演)杉田かおる、尾美としのり
評価★★★★★★★★☆☆ 8
私は原作を読んでいないので、どこまでその世界観を映像化できているのかは分からないのであるが、原作を知らない私個人は十分楽しめた。予想以上にキレがあって、ソツのない作りになっている。
黒崎は、過去に詐欺師に騙され、家族を一家心中で失い、唯一生き残った過去を持っている。その憎しみを胸に、詐欺師を騙す詐欺師として暗躍するようになる。黒崎の存在は都市伝説化し、一般人を騙す詐欺師「アカサギ」や「シロサギ」を食う「クロサギ」として知られるようになる。黒崎の詐欺のやり口は詐欺師を騙し、詐欺師から金を巻き上げ、その金を被害者へ返す。果たして黒崎はヒーローなのか、それとも犯罪者なのか…?
思った以上によくできていた。詐欺のテクニックやプロの詐欺師同士の駆け引きもなかなか見応えがあり、適度に緊張感を伴わせながら描けていた。今回ゲスト出演である杉田かおる氏の演技が実に印象的で、どうやら実生活で詐欺に遭った経験を演技に活かしているということらしく、暴走気味の芝居だったが役柄はピッタリ杉田氏にハマっている。
原作のイメージと合っているのかどうかは判断しかねるけども、個人的に山下の演技は予想以上によかった。ちょっと前までは山下の演技はうわっついていて好きではなかったが、「野ブタ。をプロデュース」でだいぶ印象が変わった。「野ブタ。」を経て、このドラマでは、山下は持ち味のフワフワした感じは残していながらも、演技が地に足をつけて落ち着いてきたように思う。詐欺師役には「いっちょ狙ってやるか」という雰囲気の鋭さが必要だと思うけど、そんな空気をなかなかうまく醸し出してくれていた。
詐欺のテクニックだけでなく、価値観の二極対立に踏み込んでいるあたりもこのドラマの強みだ。果たして、詐欺師を騙す詐欺は正義なのか、犯罪なのか。確かに詐欺に苦しんでいる人を救えば、被害者の人たちは助かる。しかし、詐欺は紛れもない犯罪であることもまた真だ。復讐を行ったとしても、新たな憎しみを生むだけであって、復讐の連鎖は止まらない。誰かが法を犯すという呪縛を断ち切れなければいけない。だが、人は生活をしなければならず、そうも言っていられないのもまたまた真なわけだ。こういう正義と悪という概念はその線引きが非常に難しい。この価値観の対立を、黒崎と氷柱(堀北真希)の対立で見せてくれたのは興味深かった。両者、詐欺という犯罪を憎んでいるのは同じ。しかし、私利私欲を満たすための詐欺を根絶やしにするために法を犯す黒崎といくら詐欺に騙されたとしても法は犯すべきではないと主張する氷柱。それぞれの主張は一長一短。これからの展開で、黒崎と氷柱の関係とともに、この2つの価値観の関係がどう転がっていくかにも注目だ。
脇役の重鎮2人もいい存在感を示してくれている。黒崎を追う刑事・神志名に哀川翔、黒崎の一家を心中に追い込んだ詐欺のプランを作った張本人でありながら、黒崎に詐欺師の情報を流す桂木に山崎努。脇にオォッと食いつける役者がいると画面だけではなく、ドラマ自体も締まる。こういう犯罪者が主人公のドラマは、主人公を追い詰める役に迫力がないと面白くない。そういう点では、哀川翔さんなら申し分ないし、山崎努さんも存在自体が実に不気味だ。
騙し合いの痛快さもありながらも、多元の価値観の相克についてもさりげなく盛り込んでいる。これからの展開が十分に期待できるバランスの取れたなかなかよくできた初回だったと思う。
放送前の感想
ベストセラーコミックを原作にした痛快詐欺師ドラマ。タイトルの「クロサギ」とは、詐欺師を騙す詐欺師のことを指す警察用語。一般人を騙す詐欺師のことは「シロサギ」や「アカサギ」と呼ばれるらしい。詐欺師に騙され、一家を心中で失った青年が詐欺師となり、世に蔓延る悪の詐欺師を逆に騙し、復讐を果たしていく。「野ブタ。をプロデュース」で新境地を開拓した山下智久が初の連ドラ単独主演を果たす。共演に、「野ブタ。」に続く共演となる堀北真希、「世紀末の詩」以来、約8年ぶりの連ドラ出演となる名優・山崎努。特に、存在感たっぷりの山崎さんに山下がどう対抗するかに注目。演出には、「花より男子」の石井康晴、「輪舞曲」の平野俊一。チーフDとなる石井さんは2004年から数えると6本目のドラマ演出。大忙しのディレクターさんです。