日曜洋画劇場・特別企画
トリック 新作スペシャル
ドラマレビュー
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シリーズを重ねるごとにその独特な世界観で新たなファンを増やしてきた人気シリーズ「トリック」。2000年7月の放送開始から5年、深夜からコツコツと積み重ねてきたこのドラマが今や、テレビ朝日が全社をかけてプッシュする超強力作にまでのし上がろうとは誰も予想しなかっただろう。そして、ゴールデンに進出した「トロワジェムパルティー」から2年、遂に「トリック」が新作スペシャルとして復活した。それも、視聴率は何と驚異の24.7%を記録。瞬間最高は29.5%にも上ったという。第1シリーズの平均視聴率は7.9%と、それほど高くなかった幕開けを切った「トリック」が今や、その3倍の視聴率を稼ごうとは。シリーズ始まってからの生粋のファンである私としては嬉しいのも半分、あのゆる〜い世界観を持ったドラマが超のつくほどの人気ドラマになっているというのも不思議な気分だ。それにしても、ここまで大化けをしたシリーズがあっただろうか? 前置きはこれくらいにして、今回のスペシャルの概要を。今回、山田と上田が対決するのは、宇宙の力で人の運命を予言する占い師・緑川祥子。祥子のインチキを暴こうとする上田ら4人の学者が出演するテレビの生番組を観覧していた男性に対し、祥子は番組放送中に心臓発作で死ぬと予言する。祥子の予言どおり、その男性は心臓発作で亡くなってしまった。このままでは引き下がれないと、上田は山田を引き連れ、祥子の屋敷のある村へと向かう…。 まず初めに言っておくべきことは、必ずこのスペシャル版は2回以上見るべきということだね。これは、「踊る大捜査線THE MOVIE2」のときにも感じたけども、こういう実に長い期間をかけて歴史を築いてきているシリーズはやっている仕事は実に細かいのよ。私たち視聴者も、特に最初のときからずっと見続けているファンなどは期待感も高鳴って、かなりのものを期待してしまう。それに、1回目の鑑賞はストーリーの概観を追うだけで、結構、精一杯のところがある。だから、1回見て、その後、ある程度、その期待をクールダウンし、ストーリーを把握した上で、もう一度、見てみると、恐らくだいぶ印象は変わってくるのではないかと思う。確かに今回のスペシャル版は1回目は「あれ?」という感覚で正直、期待したほどではなかった。しかし、2回目を鑑賞すれば、1回目での肩透かし感が嘘のように楽しめた。 今回、問題だと感じたのは、やっぱり、CMの存在よね。スペシャルドラマの場合、特に、この「トリック」の場合はどこでCMを挿入するかって、非常に難しいと思う。このシリーズは山田と上田が珍妙な会話でボケとツッコミの掛け合いをすることによって、テンポが生まれる。それをCMで切っちゃうから、どうもテンポがぶつ切りになっていたと思う。私は録画しながら鑑賞して、CMに行く度、一時停止ボタンを押しながら、CMカットをしていたけども、そのCMをカットしたものを見たほうが断然、作品に入り込める。 まあ、ストーリーとしては、かなりの弱点を持っているのも確か。ミステリーを期待して見ている人にとっては、ちょっと残念な出来かもね。トランプを使った手品のマジックは、本業のマジシャンの方々の営業妨害になるからか、これまで散々繰り返してきたようなことの焼き直しだったし、事件の本筋でのトリックもちょっと苦しいかなあ、と思えるもの。最恐の敵と言っていたわりには、緑川祥子もそれほど強敵といった感じもなかった。事件の背景に潜む祥子の過去もありきたりと言ったところ。 というか、このシリーズが実に長続きしているのは、見る人の目線を事件の本筋から山田と上田の大ボケぶりと掛け合い、そして、数々のナンセンスなギャグと小ネタの数々に実にうまく推移させているからだ。私は、山田と上田のキャラクターが事件よりも魅力的な内容にしてしまったことが、堤監督の仕掛けた最大のトリックだと思う。それと、実に細かな部分にまで小ネタを満載させ、現実の世界から離れた「トリック」でしかありえない世界観を作ってしまっていることも長続きの理由だ。リアリティーを一切排除することにより、逆に「トリック」という一つのリアリティーを生んでいる、というわけだ。これは、こういうギャグドラマでは実に難しいことで、ふざけたことを実に真面目に、そして、緻密に創り上げてきた結果なのだと思う。 今回も隅々まで小ネタ尽くし。まず、学者先生方の名前からして暴走気味。「福澤慶」というのは、もちろん、「慶」應大学の創始者・「福澤」諭吉からとっているわけでありますし、「新島同志」は「同志」社の「新島」襄、「大隈早大」なんかはそのまんまで「早」稲田「大」学創始者の「大隈」重信から来ているわけね。そして、他にも人名イジリは今回も大炸裂していて、「功爪橋」「幸夫橋」「三拓谷川」「茶屋・鈴木庵」「富市山村」「土井たか子山」とこれでもかというくらい登場。あと、「火星」という名のバンガローの中に「加勢大周」の大きな写真ね。さらに、これまでのシリーズからのリンクも充実。とにかく、シリーズにゆかりのある小物がさりげなくあるから、気付いていない人も多いんじゃないかな。とにかく、一番ウケたのは、古池屋の蛙の置物の下に置かれている「トリック2」episode5に登場の「つぼ八」ね。あと、第1シリーズのepisode1のときのネタ「迷子の子猫ちゃん」〜「エドモンド大学鉱物研究会」へのくだりも懐かしくてよかったわあ。 それで、仲間さん、阿部ちゃんも相変わらずの妙演を見せてくれている。仲間さんは「トロワジェムパルティー」の頃に比べても格段に売れたのに、しっかりと貧乳ネタもこなしてくれたし、最初の恒例マジックのときの異様にボディラインを強調したチャイナドレスにしろ、水攻めに遭うシーンとか、結構、きわどいシーンにも果敢に挑戦。阿部ちゃんも巨根ネタがなかったのは残念だったが、とにかくお約束のギャグはとにかく全部やってくれたんじゃないかな。「どんと来い」「なぜベストを尽くさないのか」「頭を強打」「困難な境遇を切り抜けてきた逸話」「通信教育でマスターした空手」…。特に通信教育でマスターした空手を駆使した西村雅彦さん扮する大柴との男と男の死闘のシーンはあまりのくだらなさにめちゃめちゃ笑った。阿部寛と西村雅彦という一流の役者があんなくだらないシーンを真面目にやっているというシチュエーションが面白い。阿部ちゃんはワイヤーアクションにも挑戦していましたな。また、矢部のヅラネタ、里見お母さんの金の亡者ぶりも健在。 あと、ゲストの人もベテランなのに、よく付き合ってくれたな、と思う。緊迫しているシーンの途中で名取裕子さんが「はらたいらに5000点ですよ、福澤教授」と言ったら、大和田伸也さんが「それは、篠沢教授だから」とイチイチツッコんで否定してくれていて、実に微笑ましい(ちなみに、このネタは「クイズダービー」から来ています)。恐らく製作費の大半を事件そのものではなく、こういうどうでもいいようなところに使っていると思う。「トリック」はこういうムダさ加減が実に大好きだ。といっても、これだけギャグが多いのに、41分もカットしているわけでしょ。どんだけ小ネタ満載だったんだろ。DVDが楽しみだ…。 ただ、今回から登場した新キャラクターには微妙な部分が多かったかな。秋葉原人(あきば・はらんど)が生瀬さん扮する矢部の3代目の部下として登場するが、文字の通り「萌え〜」と「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!」を連発するキャラクター。風貌が正直、気持ち悪いので、最初は引いた。でも、東大くんも回を重ねるごとにキャラが育っていったから、秋葉もこれから回を重ねていけば、キャラが醸成されてくるんじゃないかな。だが、池田荘の新たな住人役で登場のなすびはダメ。色が違いすぎると思う。あれは近いうちに消えてくれたほうがいい。個人的に「トリック」には、(なすびがお笑いかどうかは微妙なところだけど、)お笑いの人には出てほしくない。意欲的に新たなギャグを取り入れようとしているのは分かるけど、他の小ネタも分かりづらかったり、シュールなものが増えたりと、トリック自体もそうだけど、小ネタ自体も少々ネタ切れ感は若干感じられたかな…。 と、問題点は目立ってきたと思うけど、やっぱり、私はこのシリーズが好きなのね。最後に超常現象のトリックを暴くことだけが問題の解決にはならない、という教訓めいた部分も第1シリーズの「母之泉」の終わりと共通するし、今回のエピソードはかなり「母之泉」を意識したものになっていると思う。放送開始から5年の歳月が流れて、「トリック」というドラマはかなり変わってきたけども、今回のように初心を忘れてはいない、という精神が見て取れるから好感が持てる。2006年6月10日には「劇場版2」が公開される。これでしばらくお別れではなく、また山田と上田に会えると思えば、これからの生活もしっかりとやっていけそうな気がする。ああ、そうそう、劇場版2では今回、封印されていた巨根ネタの復活を強く望みます。 |