カタカタカタ・・・。
暗い部屋。洞窟の中の様な。小さな祭壇の上で何かが蠢いていた。2人の人物が其処に居た。
背の高い蒼い瞳の青年と黒髪の紅い瞳の少女。
青年はエルナード。神官だ。少女はシエナ。巫女。
「やっと孵化が近づいてきたな」
「随分かかったね」
「そりゃあ、1万年に1回の大イベントだ。簡単に孵ったらつまらないだろう?」
「・・・はいはい」
「・・・1万年に1度だけ孵る『奇跡のたまご』・・・願いを一度だけ叶えるたま
ご」
ごとごとごとっ・・・『何か』が大きく蠢く。二人が振り向く。
「孵化か!?」
ごとごと・・・ぽろんっ。
「何〜〜〜〜〜〜っ!???」
*****************************
「ふあ〜あ」
初音まどかは寝不足だった。ボーイッシュな印象を受けるタイプ。
漸く高校生活最初の夏休みに慣れてきたと思ったらこんな暑さの中登校日・・・。冗談じゃない。
「おはよ、まどか。どうしたの?」
クラスメイトの鈴木由利菜。まどかとは中学からの付き合い。
大きな瞳が印象的な茶色のふわふわロングヘアの綺麗な少女。・・・だが、激しい毒舌を吐く。
その綺麗な容姿とは裏腹に。
「昨日、遅くまでテレビ見てたんだ・・・」
「自業自得ね」
「・・・・・・・・・・・悪かったねっ!大体、由利菜お前ねえ・・・っ」
まどかが由利菜に反論しようとする。その時・・・。
ピカァッ!!
激しい閃光が辺り一面を包み込んだ・・・。
「わっ!!!」
「何!?まぶしいし!!」
2人が叫ぶ・・・。ころんっ・・・。小さく、何か音がした。
閃光が消えて2人は恐る恐る瞳を開けた。・・・そこには・・・。
たまごが転がっていた。
「へ!?」
「何・・・これ」
「どうみてもたまごだね」
「鶏、じゃないよね?」
「鶏には見えないだろ・・・」
「何か恐竜みたい。白地に緑のペイント」
「・・・何のたまご?ってゆーか、さっきの光は何?」
ころころころ・・・阿呆な会話を繰り返している2人の前にその奇妙なたまごが転がってきた。
「うわ、何か転がってきてる」
「まどか、気に入られたんじゃない?」
「由利菜・・・アホ?中身も出てないたまごがどうしたら人おっかけられるのさ」
「じゃあ、そのたまごは何!?」
「・・・地球外生命体vvv」
馬鹿を繰り返している2人・・・。そこへ2人の声が響き渡った。
「見つけた!!!『神様のたまご』」
「は?」
「それは私達の物だ!大人しく返せ!」
シエナがまどかに指を突きつける。
「返せって云われても私のじゃないし・・・」
「え」
「ってゆーか、これ何?」
エルナードとシエナは顔を見合わせた。そしてエルナードが口を開いた。
「・・・これは神様のたまごだ」
「神様のたまご?」
由利菜が問い返す。
「私達の世界では神様の室に1万年に一回だけたまごが生まれる。私達はそれを祭
る。神様のたまごは総ての次元を治めるといわれてる。だから大切にしまっておくのだが・・・」
「孵化目前まで来て動くようになって・・・落ちて違う世界に来たんだ」
「私達は叶えたい願いがあって・・・」
「たまごが孵ると1度だけ願いをかなえることが出来るらしいんだ」
「・・・それを叶えて欲しくてずっと待ってたのに・・・」
シエナがまどかを睨み付ける。
「どうしてあんたを選ぶのよ!」
「へ?わ、私!??」
まどかが自分を指差して問い返す。
「そうよ!ずっとずっと待ってたのに・・・」
「シエナ」
「・・・?」
エルナードがシエナを手で制す。そしてまどかに問い掛ける。
「お前、名前は?」
「は、初音まどか・・・」
「そっちは?」
「鈴木由利菜・・・」
「マドカにユリナか・・・私はエルナード。こっちは従妹のシエナだ」
「エルナードにシエナ?」
「・・・そこで、だ。・・・暫くの間、我が国に逗留していただく!」
「え!?」
2人が声を合わせて叫ぶ。
しかし次の瞬間、2人の意識は消え果てた・・・。
******************************
着いた途端、いきなり部屋に監禁された。数日後、シエナとエルナードが現われた。
「此処が我らの国だ」
「此処で神様のたまごが生まれた」
「へぇ・・・っていうか私いつになったら帰れるの?」
まどかの言葉に由利菜が同調する。
「そうよ。困るんだけど!?」
「わからないよ。孵化が終わってくれないと」
「いつまでなのさ・・・」
ころんころんころん・・・。数日間、まどかの後ろをついて離れないたまごがまた転がってきた。
「うわっ。また来たっ」
「何でなのよぉ・・・」
「知らないよっ」
ふと、由利菜が2人に問い掛ける。
「そういえば、あんたたちの願いってなに?」
「っ!!!!!!」
「何なのよ、その厭そうな顔」
「切実そうだな」
シエナが叫ぶ。
「私は巫女やめたいの!でも、エルが許してくれないから・・・」
そう云ってシエナがエルナードをにらみつける。エルナードは無視して笑う。
「神様のたまごはうちの一族が見守る掟だから。今、うちの一族には女はシエナしかいないんだ。
・・・巫女にはシエナしかなれない」
「だから、神様のたまごにお願いして解放してもらうのよ」
ころんころんころん・・・ぴき。たまごが異変を起こす。ヒビガ入ったのだ。
「え?」
「ヒビが・・・!?」
ぱきぴきぺき・・・。ヒビが全面に広がる。
「うわっ」
「まどか!?」
ころんっ・・・。たまごからは小さな緑色の怪獣が姿を現していた。
「・・・怪獣?」
「ちっちゃい・・・ぬいぐるみみたいっ」
由利菜が怪獣を抱きかかえる。
「これが神様・・・?」
『ぎゃー・・・』
「・・・え?」
まどかが突然、瞳を見開く。
「どうした?マドカ」
『・・・願いを1つだけかなえよう。1万年の安息と1つの願い。どちらを撰ぶかはお前たち次第』
まどかが虚ろな瞳で言葉を紡ぐ。由利菜が悲鳴を上げる。
「まどか!?」
『さぁ、どちらを撰ぶか?神官に巫女』
「まどか!大丈夫なの!?」
『マドカ・・・そういう名前なのか。私は・・・マドカになる。マドカは私になる。』
「どういうこと・・・」
『私の力はマドカに宿って出される』
「冗談じゃないわよっ。私はまどかと帰るんだからっ」
「マドカを自由にしてください。神様・・・」
「元はと云えば孵化前のたまごを落とした私の責任」
『・・・マドカと私は1人なのだよ。もう。・・・1万年の安息を選び、マドカを元の世界に戻すのもあり、
お前の願いを叶えて宿主と共にお前を見守るか』
「・・・安息を」
『・・・わかった。一つ教えるよ。私はつきっきりで居ろ、などとは云った覚えはないよ』
「え」
ころんっ・・・
たまごは消えて。青いたまごが祭壇に居た。
「・・・んー。おはよ。・・・何かよく寝たなぁ・・・あ!そういえばたまごは!?」
「消えた」
「マジで?」
「また遊びに行ってもいいか?」
シエナとエルナードの問い掛けに2人は満面の笑顔を浮かべた。
「いいよ」
こうして。
4人の奇妙な関係が始まった。
end.
神様のたまご。
これは元々、Lily様ののwebラジオドラマのシナリオでした。シナリオは書くの初めてだったのですが凄く楽しかったし、
個人的にも気に入った作品だったので小説にしてみました。ちなみにLilyさまへはリンクから飛べますので宜しかったらドラマ版も聴いてみてください☆
ちなみに『初音まどか』は元々男の子キャラでした。当時はこの話のまどかとは正反対のタイプ。・・・この話を書いている
最中、彼女が名無しのゴンベさんだったので慌てて名前流用(笑)・・・結果、私の中には2人の『初音まどか』が存在・・・
(笑)ちなみにまどかには明確なモデルが存在しています(笑)
・・・オリジって難しい。精進せねば・・・。ってか小説に直すの大変だ・・・
04.11.26