あずさ 山の家
/ 下田市須原/ 1992

主な用途
宿泊施設(自炊)、体験学習施設、資料館
敷地面積
4941.83m2
建築面積
984.59m2
延床面積
1268.40m2
規  模
地上2階3棟+平屋
構  造
木造一部RC造

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下田市の北側、天城連峰に繋がっていく山あいの村・須原は山の沢水を生活用水とする昔ながらののどかな山村である.過疎化していく農村に農業体験をする 若者達を集める施設を建設しそれを中心に村全体を体験農村の場とする計画である.

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建設前の敷地には古い平屋の木造の校舎が雛壇上に三段山懐に抱かれピタリと収まっていた.大きな銀杏の木は、見事な金色の姿を敷地を取り巻くように流れる谷川の対岸からこの学校の長い歴史と居心地の良さを誇っているように感じた.建築の行為は破壊 から始まる.これはどんなに修辞の言葉でごまかそうとも厳然たる事実である. 二本の銀杏の木ときれいに積まれた石段にはまるように重なる瓦屋根の校舎.二本あるビャク杉の間から最初の校舎の下を長屋門のようにくぐり石段を登って玄関に行きつくたくさんの子供達の声が響いたであろう長くのびる廊下とそれに沿うように走るたたき全てが懐かしく、そしてそれがだんだん重い気分になってきた.改造する提案は要求 される用途と、皮肉なことにこの建物の古い歴史に、はじめから検討を用意されていなかった.
建物はそのアプローチのストーリーを大切にすることを第一に考えた.石段も基壇はそのまま残すことにした.全体を一つの村となるようにスキップしながら中央の水車塔を巡るように配置した.ここを訪れる学舎の卒業生がその姿にデジャヴューを感じられるように….

上段の泉から湧き出た水は敷地に作った水路(小川)を通り、ガラス張りの水車小屋に至る.スケルトンの水車小屋では水車の動きのメカニズムがよく分かる.

ラウンジには井上公三のシルクスクリーンが、その壁面を飾る.

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  撮影:中村保
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