「しろばんば」の里・文学散歩




[しろばんば]



その頃の、と言っても大正四、五年のことで、今から四十数年前のことだが、

夕方になると、決まって村の子供たちは口々に ゛しろばんば、しろばんば゛と叫びながら、

家の前の街道をあっちに走ったり、こっちに走ったりしながら

夕闇のたちこめ始めた空間を綿屑でも舞っているように浮遊している白い小さな生きものを

追いかけて遊んだ。

素手でそれを掴み取ろうとして飛び上がったり、ひばの小枝を折ったものを手にして、

その葉にしろばんばを引っかけようとして、その小枝を空中に振り廻したりした。

しろばんばというのは、゛白い老婆゛ということなのであろう。

子供達はそれがどこからやって来るか知らなかったが、

夕方になると、その白い虫がどこからともなく現れて来ることを、

さして不審にもおもっていなかった。


(井上 靖著 「しろばんば」 冒頭より)



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井上靖著「しろばんば」は、彼の少年時代の出来事をほぼそのまま書き綴った小説です。

そのため物語的なストーリーではなく、むしろ淡々と自伝を書き綴った様に感じられます。

しかし、じっくり読み進んでいくと伊豆の自然や昔の人々の生活、そして当時の田舎の

人間模様などが赤裸々に描かれている優れた文学作品であると思います。

このページでは「しろばんば」の舞台となった天城湯ヶ島町を散策しながら、その背景な

どを紹介したいと思います。


[その一]

上の家・井上家旧邸跡



[その二]

井上靖詩碑・長野地区



[その三]

共同浴場・西平地区



[その四]

天城山隧道



[その五]

馬車駐車場・大仁駅


[終章]

おぬい婆さんのこと







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