街にイルミネーションがともり始めた。クリスマスシーズンがやってきたのだ。誰もが皆、思いやりにあふれた隣人や平和な世界や明るい未来を信じたいと願うシーズン。だが現実は……。
『支店の引き上げが本社で決定されたよ』
友人からのeメールを開くと、こんな文面だった。
そうか閉鎖か。
私は、モニターから顔を上げて、事務所内を見回した。
昨年、配送し切れなかった品物が、山積みになっている。
『明日にでも、正式な辞令が行くと思うが、その前に知らせてやろうと思ってね。
ほら、恒例で、最後のひと仕事は担当者の好きにやっていいことになっているだろう。ところが、今年は、他にも閉鎖決定の支店がいくつかあるんだよ。そうなると、必要物資が重なる事もある。早い者勝ちだからね。
それに、いきなり閉鎖辞令を受け取るより気が楽かなとも思ってね。
気を落とすなよ。 Yより』
私はため息をついた。
予想はしていた。このエリアは悪化するばかりだったからだ。だから、閉鎖には驚かないし、そうなった時の要請物資も、もう決めてある。
私は、キーボードに向かって返信を書き始めた。
『ご親切に感謝する。
閉鎖は残念だが仕方がないと思っているよ。長年の努力が無駄になるのは寂しい気もするがね。
だが、ここはちっとも良くならなかった。いや、むしろ悪化している。戦争は次々に起きているし、テロリズムは広がっている。地中の地雷は数え切れないし、凶悪な事件の増加は、もはや、指数関数的だ。本社から送られてくる良い子へのプレゼントも、年々該当者が減って、余っている始末だよ。
だから、本社の決定は予想していたよ。
私の、この星への最後のプレゼントは、もう決まっている。本社への最後の要請物資は、惑星破壊爆弾を一基だ。12月24日には間に合うだろう。それと、その前に、できるだけ、良い子リストの該当者をピックアップするつもりだ。
ご心配ありがとう。私は大丈夫だ。 友情をこめて S』
「ニュースの時間です。今月に入って、各地で子供達の行方不明が続いていますが、それが世界規模のものである可能性が出てきました。事件は、子供が突然消えてしまうというもので、手がかりは全くありません。一部ではUFOを見たという目撃情報もありますが、信憑性は薄いようです。各国の警察当局は連携して捜査にあたることを合意しました。続いて、クリスマスのニュースです。今日は、待ちに待ったクリスマス・イブ。街では……」