鈴木藤一郎 伊東市長所信表明
7月21日行われた伊東市長選挙で、3期目の当選を果たした鈴木市長は8月2日の市議会臨時会で所信表明を
しました。
平成14年6月議会で撮影した鈴木伊東市長
所信表明内容

 このたびの市長選挙におきまして、市民の皆様のご信任を得て、引き続き市政を担わせていただくに当たり、ここに所信の
一端を申し上げる機会を得ましたことは、私の大きな喜びであるとともに、その責任の重さに身が引き締まる思いをいたしております。
 顧みますと、平成6年7月に初当選して以来、私は、移動市長室の開設や情報公開条例の制定など「協調と調和」を政治
信条とした開かれた市政の推進に意を用いてまいりました。

 この間、市民の強い願いであり、本市の最重要課題であった医療の充実を現実のものとする一歩としての市立伊東市民
病院の開設
を始め、新たな観光拠点としての「伊東マリンタウン」や観光・文化施設「東海館」のオープンなどによる観光
活性化策、本格的な少子高齢社会の到来を見据えての、介護予防拠点施設の開設などによる高齢者福祉や新たな保育所
の開園を始めとした児童福祉施策の推進など、市民生活の向上に一定の前進が図られたものと認識しております。

 しかし、ようやく芽吹いたこれらの施策を更に着実に育て、大きく結実させるためには、これまで以上の弛みない努力が
必要であると考えております。

 このときに当たり、豊かで実りのある市民生活や活気ある市内経済への様々な市民要望に最大限応えられるよう、「市民と
ともに歩む市政、時代とともに歩む市政」
を基本姿勢として、7万5千市民の英知と力を結集し、その実現に向けて私の持て
る力のすべてを出し切らなければならないと決意を新たにしているところでございます。

 そのためには、本市の21世紀初頭におけるまちづくりの指針である第三次総合計画・第七次基本計画の確かな前進を図
り、快適な暮らしと幸せを享受でき、「誇りをもって住むことのできる魅力あふれる観光のまち」をつくりあげることに全力を傾注
してまいる所存であります。

 特に、健康回復都市宣言を踏まえ、本市の恵まれた自然や温泉、培われた歴史や文化を生かし、住む人、訪れる人それ
ぞれが、健康の大切さを実感し、いつまでも元気でいる喜びを共感できる健康保養地づくり事業を展開し、新たなまちの活力
再生へつなげてまいりたいと存じます。

 また、市立伊東市民病院につきましては、伊豆東海岸における地域医療の基幹的な病院となることを目指し、市民の皆様
とともに新たな構想づくりを進めてまいります。

 さらに、伊東駅を中心とした市街地につきましては、地元の皆様の声を伺いながら、観光都市伊東の表玄関にふさわしい顔
を造り、松川通り周辺の整備とともに、まちの賑わいを復活させるまちづくりを進めてまいります。

 今更申すまでもなく、長引く景気低迷や予想以上の税収の落ち込み、更には競輪事業の不振などにより、自主財源の確保
に苦慮する厳しい財政運営を余儀なくされており、本年度予算におきましては、6年連続の対前年度マイナス予算に歯止め
をかけた前年度予算を再び割り込むものとなっております。

 加えて、地方分権の進展に伴い各種事務事業の権限が移譲され、住民に最も身近な自治体として提供すべきサービスは
、ますます増加しておりますが、これらに適切に対応していくためには、市民と行政が自己責任・自己決定の認識のもと、お
互いの役割分担を理解し合い、市民参画による市民と行政が一体となった協働のまちづくりを実現していかなければならない
ことを強く感じているところでございます。

私は、ここに、新たな任期を新時代創造の時と受け止め、より現実的で、より良い社会の再構築を目指し、市長選挙を通して
訴えてまいりました、次に掲げる施策に基づく新しいまちづくりへの決意を改めて述べさせていただくものであります。

 まず第1に、くらしを守り心の通った福祉のまちづくりであります。

 私の最重要政策課題の一つであり、市民の長年の願いでありました医療施設の充実につきましては、昨年3月に国立
伊東温泉病院を市立伊東市民病院として引き継ぎ、診療科目の充実や施設、医療機器の整備など、伊豆東海岸地域の
中核的医療施設として医療体制の充実に努めてまいったところであります。

 開院以来多くの市民に利用していただき、本市の医療体制は整いつつありますが、現在地での病院施設の改修や医療
機器の整備では限界があるため、伊東スタジアム跡地を新たな病院建設計画の最有力候補地として取得し、その計画を
更に一歩前進させたものであります。

 また、取得いたしました用地につきましては、有効活用を図るため、暫定的にスポーツ施設として利用してまいります。

 今後は、懇話会を設置し、一般病床過剰地域などの課題を踏まえ、市民のご意見を伺いながら、急がれる長期療養型の
病床群、介護老人保健施設等の中間施設の整備を始め、一次救急と二次救急のあり方など、保健・福祉・医療を一体とした
市民福祉の充実に向けて、新病院建設への道筋を具体化してまいりたいと考えております。

 また、高齢化がますます進むなかで、介護保険制度の円滑な実施を図るため事業計画を見直し、同時に計画の整合性を
図るため、高齢者保健福祉計画も見直すとともに、高齢者の生きがいづくりや健康増進など高齢者福祉の増進に努めてまい
ります。

 さらに、ボランティアの育成を強化し、共に生きる地域づくりを進め、地域福祉の充実を図ってまいります。

 児童福祉につきましては、保育所の待機児童の解消を図り、多様な子育てへの支援を進めるとともに、障害者福祉では、
障害者が社会の一員として共に生活を送れるように、心の通った支援事業を充実してまいります。

 第2は、魅力にあふれた活力ある観光のまちづくりであります。
 21世紀を迎え、来遊客や宿泊客の減少傾向が続き、観光立市である本市の経済は、景気回復の糸口が見出せない重苦
しい状況が続いております。

 このような逼塞した状況を拭い去り、多様化する観光客の価値観を的確に捉え、国内観光地間の競争に後塵を拝さぬよう、
これまでの観光を見直し、多くの市民が主体的に参画する今後の観光のまちづくりのあり方と行動指針を示す観光基本計画
を策定
し、地域経済の活性化を図ってまいります。

 今、社会変化の激しい時代にあって、ゆとりや癒しなど心の健康が求められております。
 幸い本市には豊富な温泉と豊かな自然、多くの文化・歴史の遺産があります。これらの資源を生かし健康回復と増進を図
るため、住む人も訪れる人も共に健康の大切さを実感し、健康を共有できる健康保養地づくりを市民と協働で進め、静岡県が
県立静岡がんセンターの開院を契機に富士山麓に展開する先端健康産業集積構想とも連携をとりながら、新たな観光産業
の創出、地場産業の育成、雇用の促進、交流人口の増大、更には市民の健康意識の高揚につなげてまいります。

 昨年7月にオープンした観光拠点施設「伊東マリンタウン」と観光・文化施設「東海館」は、中心市街地における魅力ある新
たな観光施設としての役割を果たしているところであります。

 伊東マリンタウンにつきましては、公共マリーナや関連施設の整備をさらに進めるとともに、道の駅として利便の拡大を図れ
るよう、登録に向け協議しているところでございます。

 また、東海館は、伊東の観光スポットの一つとして定着しており、その前の松川通りを古きまちの情緒を醸しだす空間とし
て整備を進めるとともに、松川遊歩道や藤の広場など周辺施設とのネットワーク化を図り、更なる誘客に努めてまいります。

 小室山総合グラウンドにつきましては、より有効的な利用を図るため、サッカーグラウンドの整備を目指すとともに、イベント
開催時の駐車場対策を進めてまいります。

 商工関係では、大型店の郊外への進出や市街地の空洞化などに対応するため、中心市街地活性化基本計画を策定すると
ともに、商工業団体等への助成や中小企業への各種の金融支援を引き続き行ってまいります。

 また、雇用をめぐる環境が大変厳しい中で、再就職のための雇用の促進を図るとともに、シルバー人材センターとも連携し
、高齢者の生きがいの場を提供してまいります。

 農業については、効率的な農業生産の推進や地域の特性を生かした高収益、高品質農産物の産地化や安定生産を図り、
農道基盤整備を進めてまいります。
 水産関係では、つくり育てる漁業に取り組み、漁業後継者の育成を図り、漁港建設事業では宇佐美漁港海岸環境整備
事業を更に進めてまいります。

第3に、安全で楽しさが踊る快適なまちづくりであります。

 道路網の整備は、山と海に囲まれた本市にとってはまさに生命線であり、伊豆半島の広域的な行政にも影響を与える伊豆
縦貫自動車道とを結ぶアクセス道路の整備がますます重要なものとなっております。

 その南部ルートとなる伊豆横断自動車道につきましては、本市と関係4町で立ち上げた伊豆横断道路建設促進期成同盟
会による推進活動など、早期完成に向けて力を尽くしてまいりますとともに、北部ルートにつきましても、早期の改良を強く
国・県に働きかけてまいります。

 さらに、国道135号の4車線化、交差点改良などの交通安全対策や一般県道の整備についても国・県に強く働きかけると
ともに、市民生活に密着した市道につきましては、安全で快適な生活環境の確保や防災対策など、地域の実状に即した整備
を実施してまいります。

 JR伊東駅周辺など中心市街地においては、人口の減少が進むとともに旅館、ホテルの廃業などもあり、かつての賑わいを
失いつつあります。

 このため、観光のまち伊東の表玄関として、かつ、中心市街地としてふさわしい環境整備を図るため伊東中心市街地まちづ
くり基本構想をもとに地元の皆様の協力をいただきながら、計画づくりを進め、活力あるまちづくりを進めてまいります。

 なお、市街地への人口誘導策としての側面も期待できる民間集合住宅の借上げ制度などについても、住宅マスタープラン
に基づき早急に煮詰めてまいります。

 また、安全で快適な街並み空間の創出のため、シンボルロードとしての伊東駅前通りの電線類地中化につきましても、引
き続き実施してまいります。

 海の玄関口である伊東港につきましては、海岸を観光振興の貴重な資源ととらえ、静海地区整備への検証も致しながら、
観光桟橋周辺やオレンジビーチの再整備を進め、防災対策として防災船など大型船舶が接岸可能な岸壁の建設を国・県に要望してまいります。

 環境の保全では、21世紀は環境の時代ともいわれ、環境への関心が高まっており、先に制定した環境基本条例の理念の
実現に向け、環境を守り育てる基本計画を策定してまいります。

 また、可燃ごみ指定袋制度導入など、ごみ減量再資源化対策に取り組み、ごみ処理広域化につきましては、駿豆広域圏
の南ブロック処理区の市町村で協議会を組織し、その促進を図ってまいります。

 上水道事業につきましては、安全でおいしい水の安定供給とともに経営の合理化に努め、下水道整備は、宇佐美地区の
供用区域の面的拡大を図り、荻・十足地区についても早期供用開始に向けて処理施設の建設、管きょ布設工事を進めてまいり
ます。

 地震防災対策につきましては、東海地震、神奈川県西部の地震等の大地震の発生が危惧されていることから、専門的な
人材育成を進め、災害対策活動の基本である情報収集・伝達のための防災無線体系の充実と効果的な運用を図るとともに
、消防関係につきましては、消防施設や装備の充実に努め、安心して暮らせるまちづくりをさらに進めてまいります。

 第4には、豊かに学び未来に伸びるまちづくりであります。
 教育の分野では、社会や環境の変化からさまざまな問題が生じており、改めて教育の目標を明確にすることが求められて
います。

 このような教育の現状において、学区の見直しや中学校給食などを始めとする重要課題について、専門家や教育関係者に
よる検討をいただくため、教育懇話会を設置いたします。

 学校施設整備では、各小・中学校の施設、設備の改修工事を進め、安全確保や衛生面の向上を図ってまいります。
 学校教育におきましては、平成14年度から完全学校週五日制が実施され、確かな学力と生きる力の育成が求められてい
ることから、基礎学力の一層の定着と体験的、問題解決的な学習を進めてまいります。

 また、新たに市民の協力を得て、スポーツエキスパート活用事業を取り入れ、中学生の健全育成を図ってまいります。
 幼稚園教育では、幼稚園園舎の改修を進め、3歳児保育を推進してまいります。

 生涯学習につきましては、ライフスタイルの変化による学習機会に対する市民ニーズの多様化・高度化に対応し、生涯にわ
たり、いつでも、どこでも、誰もが学習機会を享受できるような施策を推進してまいります。

 青少年教育におきましては、中学生の翼や小学生の船などの体験学習を通して次代を担う青少年を育む一方、市内各地
域の育成会議や学校関係者との連携を強化することによって、青少年の健全育成に努めてまいります。

 また、男女共同のまちづくりを進める環境を整え、あらゆる分野への男女共同参画を促進するため、男女共同参画プラン
積極的に実践してまいります。

 スポーツ振興につきましては、市民一人一スポーツを目標とし、県が進める総合型地域スポーツクラブと地域づくり施策との
整合も図りながら、市民がスポーツに関心や親しみを持つ機会が増加するように努めてまいります。

 また、平成15年に開催される静岡国体は、ゴルフ競技とフェンシング競技が本市で開催されますので、大会の成功に向け
諸準備を怠りなく進めてまいります。

第5に、市民参画で進める文化のまちづくりであります。

 地方分権の進展とともに、本市の自主性と自立性がより問われる時代となり、市民の価値観が多様化するなかで、多くの
市民が主体的に地域づくり・まちづくりに参画し、積極的に活動していくことが求められ、市民活動に積極的に関わっていきた
いという市民の意識も高まっております。

 このため、市政情報の公開をより進めることはもとより、市民と行政の協働、役割分担、市民や団体が活動しやすいシステ
ムなど、市民参画の基本的な仕組みづくりとなる市民参画のまちづくり推進計画を市民と共に策定し、市政やまちづくりへの
参画を一層進めてまいります。

 また、市民が里親になって子どもに見たてた道路、河川、海岸等の公共施設の美化・緑化活動を行うアダプトシステムを発
足させ、市民参画によるまちづくり活動を積極的に支援してまいります。

 以上、今後果たしていくべき施策の方向と、これにあたる所信の一端を披瀝させていただきました。
 21世紀を迎えたものの、政治、経済や社会の各方面において未だ新しい秩序が見えない中、誰もが大きな不安や危機感
を抱いており、地方自治体にとっても、これまでの枠組みが大きく変わろうとする転換期を迎えております。

 冒頭申し上げましたとおり、本市の置かれている財政状況も深刻の度合いを深めております。
 この難局を乗り越え、市民福祉の向上やまちの活性化策を推進し、また、多様化・高度化する市民要望に適切に対応してい
くためにも、事業の必要度、緊急度をより見極めながら、今年3月に策定いたしました新たな行財政改革大綱に沿って、民間
委託を含めた事務事業の一層の見直しや定員管理の更なる適正化、行政評価制度の的確な運用、高度情報化の推進、市
町村合併への検証も致しながら広域行政の推進など、具体的な施策を着実に実施し、一層効果的、効率的な市政運営に努
めてまいる所存であります。

 私は、選挙を通じて市民の皆様から頂戴したご意見を謙虚に受け止めながら、第三次総合計画に定める将来像である「住
みたい 訪れたい 自然豊かな やすらぎのまち 伊東」の実現のために、まちづくりの主役である市民の皆様と力を合わせ
、夢でなく、出来得る施策を最大限着実に積み重ね、このまちに住むことの誇りや喜びを分かち合えるまちづくりに懸命の努
力をいたしてまいります。

 議員各位並びに市民の皆様の、今までにも変わらぬご指導とご協力をお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

  平成14年8月2日

               伊東市長  鈴木藤一郎

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