熱処理加工全般 |
金属熱処理について樺部熱工 |
6・ 脱炭*金属熱処理を行なうにあたり、最も起こりやすく、最も注意が必要な事の一つ に脱炭がある。 脱炭とは材料(鋼)を加熱した時、酸素が鋼の中に浸入する時に起こり(酸化)、 鋼の炭素量が減少する事をいう。脱炭層(炭素がぬけてしまった部分)は、 焼入れをしても十分な硬さが得られず、後工程にも大きな影響を及ぼすので 注意しなければならない。 この後に述べる焼きならし等の作業においても発生する。 当社では、連続炉(コンベア式)の他にバッチ型といわれるガス炉が8基あり (そのうち1つは鋳物用の大型台車炉)、台車炉を除く7基の炉で通常最も多く 行なわれるのが「焼きなまし」である。 7・ 焼きなまし*焼きなまし(焼鈍という)は、材料の軟化、結晶組織の調整、内部応力の除去 の為に、ある適当な温度(主に変態点+50度前後くらい・当社では約810度) に加熱した後ゆっくりと冷却する(炉冷)。 炉冷とは、加熱保持時間終了後も炉から出さずにゆっくりと(1時間あたり30度 下げるくらい)冷却する方法。 焼きなまし(焼鈍)には用途に応じて次のような種類がある。 ・完全焼きなまし(完全焼鈍) ・応力除去焼きなまし ・低温焼きなまし ・球状化焼きなまし *完全焼きなまし(完全焼鈍) 上記のうち、日々、最も多く行なっているのが完全焼きなましであり、これは 変態点以上+50度くらいの高温に加熱しその温度を材料の大きさ(質量)に 応じて保持した後、徐々に冷却させる方法で、特に変態点付近をゆっくり冷却し 材料の変態を行い、材料内部のひずみも調整する作業。 加熱保持時間は、1インチ(25.4mm)当たり1時間が適当といわれている。 *応力除去焼きなまし、低温焼きなまし 当社では、主に台車炉で鋳物に対して行なっているが、その他にも鍛造、溶接 などで生じた内部応力(加工した時に、材料の内部にこもってしまったひずみで、 そのままにしておくと、その内部の力が外に出て次工程での加工などでの寸法 変化や、割れを生じてしまう)を熱を加える事によって作為的にその力を外に 出し、 後工程での加工がスムーズに運ぶようにする処理で、 580度プラスマイナス20度くらいで行なっている。 やはり完全焼鈍と同じように炉冷とする。 *球状化焼きなまし 鋼の中の炭化物を球状化に(拡大して顕微鏡でのぞいた時に、炭化物が球状 「円く」になる)させる為に行なう焼鈍をいう。 球状化焼鈍を行なえば鋼は靭性が大きくなり、加工性もアップする。 *当社の焼鈍の主なタイプ* その他にも鋼(材料)の質量に応じて保持時間を長短させる 8・焼きならしN(normalizing)* 焼きならしは鋼をオーステナイト組織としてから空気中に放冷する。(保持時間 終了後、直ちに鋼が真っ赤な状態で出炉する) この焼きならしは、前工程の鋼への影響をとり去り、鋼の組織を細かく均質化して、 機械的性質を改善する目的で行なわれ、これによって鋼の強さと靭性が 向上される。 焼きならしは焼準ともいう。 9・硬さ試験機(Hardness tester)*H調質(焼入 焼き戻し)、A焼きなまし(焼鈍)、N焼きならし(焼準)等の工程後は、 各々、用途に応じた硬度であるか確認する必要があり、その硬度検査をする 試験機を硬さ試験機という。 その種類は試験片の大きさや、材質などによって使用する試験機が異なるが、 ・押し込み硬さ試験機 ・衝撃硬さ試験機 ・引掻硬さ試験機 がある。 このうち衝撃硬さ試験機と、引掻硬さ試験機は当社で使用しておらず、押し込み硬さ 試験機について説明したい。 ・押し込み試験機には、ブリネル、モノトロン、ロックウエル、ビッカーズなどがあり、 これらはいずれも試験片の表面を何らかの形で押し(圧力を加え)出来たくぼみの 大きさによって硬度を査定するものである。 *ロックウエル試験機は当社内で最も多く使用される試験機で、ロックウエルA,B,C, D,E,Fの各スケールがあるが、主にロックウエルBスケール(HRB)と ロックウエルCスケール(HRC)を使うので2つについて説明する。 :HRBとHRCの違いは、試験片に圧力を加える押込体の先端がHRBは1/16 鋼球を使い、HRCは半径0.2mmのダイヤモンドを使用し、試験片に押しこむ力も HRB100kg荷重、HRC150kg荷重ということである。そして、いずれも試験片に 出来たくぼみの大きさから硬度が測定できる。 HRBは軟質鋼材、非鉄金属類などの測定に使い、HRCは焼入試片、硬質鋼材 などの測定に使用する。 |
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