帝国ホテルの技 カレーライス


2.26事件で広まった本格派


【材料】(4人分)
牛肉(ヒレ)     320〜400g
タマネギ       中2個
ニンジン       小1本
ショウガ       25g
ニンニク       1片
トマトピューレ    1/2カップ
カレー粉       大さじ3
小麦粉        20g
ブイヨン(固形ブイヨンを湯に溶いたもの) 4カップ
リンゴ(すりおろし) 大さじ1
バター         60g
マンゴーチャツネ
ガラムマサラ
タマリンド
キャラウェイシード
トマトケチャップ
ブランデー

コショウ



【作り方】
@タマネギ、ニンジン、ショウガ、ニンニクをみじん切りにする。
A鍋にバター30gを溶かしてニンニクを入れ、香りが立つまで弱火で炒める。ショウガを加え焦がさないように炒める。
Bタマネギ、ニンジンを加えてさらに炒め、全体がしんなりしたらトマトピューレを加えて酸味が消えるまで煮詰める。
Cカレー粉と小麦粉を少量ずつかき混ぜながら加える。粉っぽさがなくなったら少しずつブイヨンを加え、30分ほど煮る。
Dリンゴ、マンゴーチャツネ、タマリンドを入れ、1時間煮込む。いったキャラウェイシード、ガラムマサラ、トマトケチャップを加えてさらに30分煮る。
E薄切りにした牛肉を皿に並べ、塩コショウしてムラなく下味をつける。
Fフライパンにバター30gを溶かし、肉が重ならないように裏表まんべんなく色よく焼く。ブランデーを回しかけて火を付けてフランベし、カレー粉(分量外)を少量振って肉にからめる。
GFをDに加え、軽く煮る。




 明治以降、日本人に親しまれる「庶民の味」の代表・カレーライス。帝国ホテルのカレーライスは、ある歴史上の事件と深く結びついています。
 1936(昭和11)年、30年ぶりの大雪といわれたある日、帝国ホテルの厨房のラジオに「決起将校による反乱」を伝えるニュースが流れました。「2・26事件」です。たまたま、警備に当たった連隊の拠点がホテルの裏にあり、当時のスタッフは炊き出しをすることになりました。500人の兵隊さんのために、手早く大量に提供できるもの、しかも冷え切った体を温め、栄養があり、1皿でご飯とおかずを出せる −−− こうした理由からカレーライスが選ばれたのです。これが、当時まだ「都会の高級西洋料理」だったカレーが、日本中に広がるきっかけの1つになったと聞いています。
 当時、日本で「カレー」と呼ばれていたものは、肉も野菜も水から煮て、軟らかくなったところにカレー粉とでんぷんを入れてとろみを付けたものでした。帝国ホテルのカレーはこれとは少し違い、第8代料理長の石渡文治郎が欧州で習得してきたものです。みじん切りの野菜をバターで炒め、小麦粉やカレー粉を加えてさらに炒める。それからブイヨンなどでのばして仕上げます。野菜のつぶつぶ感が残っているのが特徴です。「2・26事件」の際に供されたカレーも、これと同じもので、レシピは現在に受け継がれています。
 帝国ホテルでは、20種類以上のスパイスを使って、芳醇で奥深い味を生み出しますが、家庭ではマンゴーチャツネ(甘み)、タマリンド(酸味)など今回紹介する4種類だけでも、かなり本格的なカレーが作れます。辛い味が好きで、これでは物足りないと感じる方は、カイエンヌペッパーを加えるとよいでしょう。肉はチキンなどに替えても大丈夫。ライスの上に野菜(ナス、カボチャ、ブロッコリーなど)やエビフライなどをトッピングしてもおいしいです。
 帝国ホテルでは3日間かけて一度に1,000人分作ります。レストランや宴会、ルームサービスなどで出されます。大量に作る方がおいしいので、家庭でもぜひ多めに作ってみてください。もし余っても、冷凍保存が可能です。
 このレシピでも3〜4時間かかりますが、休日に挑戦してはいかがでしょうか。

(「毎日新聞 2006年9月28日」)

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