手こねずし



 志摩半島といえば、海女漁の盛んな地。手こねずしは、この海女さんたちの得意料理の一つ。しかし、手こねずしは、もともとは男の料理。この地方は昔からカツオ漁が盛んで、小さな船の両側にさおを立てて、疑似餌をつけて海原を曳きながら釣った。この漁法を引っ張られた仕掛けが跳ねることからケンケン漁という。
 一度漁に出ると陸に上がるのは1週間後かも2週間後かも、1ヵ月後かもわからない。その間、食事は船の上。釣ったばかりの魚をおろし、醤油の中に漬けておき、ご飯にのせて、手でかき混ぜて大急ぎでかき込み、再びカツオを釣る。
 使う魚はカツオが主だが、時にはハマチやイサキ、アジなどの場合もある。いまは船の上と違って手でこねるということはしなくなったが、それでも魚を厚さ5mmほどに薄切りにし、タレに漬けた後、すし飯に混ぜ込んだものを、手こねずしと呼ぶ。


【材料】(約20人分)
カツオ            2本
米              2升
シソの葉           20〜30まい
紅ショウガ          適宜
手こねずしのたれ       約1000ml
じゃがいも          40g(約小1個)
すし酢            約500ml

《手こねずしのたれ》
しょうゆ          
みりん           
砂糖            



【作り方】
@カツオを3枚におろし、それをまた半分に切る。つまり、5枚おろしにして皮をひく。
A血合いの部分は別に使うので少し厚めに切り取り、更にその身を半分にする。
B炊き上がったご飯に箸で穴を開け、手こねずしのたれを回しかけて蒸らす。
Cカツオの身を厚さ5mm弱に切り刻む。
D刻んだ身を手こねずしのたれに20分前後浸しておいて味をなじませる。
Eシソの葉を細かく刻む。
Fご飯が蒸れたころ、手早く桶にとり、すし酢を回しかけ、よくかき混ぜる。
Gうちわで扇ぎながらかき混ぜ、人肌まで冷ます。
H味のなじんだカツオの切り身を全体に散らばるようにおき、よく混ぜ合わせ、最後にシソと紅ショウガを散らして完成。

《手こねずしのたれの作り方》
しょうゆとみりんを同量、それに砂糖を加え、いったん煮立て冷ます。入れる分量は家庭によって異なる。


《血合いのたたきんの作り方》
@血合いの部分を、骨ごと小さく刻み、まな板の上でトントンとたたく。
Aそこにスライスしたレッドオニオン(普通のタマネギでもよい)を加え、さらにたたく。
B仕上げに、塩少々をふりかけ、冷蔵庫に一晩おいて味をなじませ、食べる直前に一味唐辛子を好みでふりかけて、食べる。
Cそのまま食べてもいいし、酢やしょうゆをかけてもよい。



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