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詩集  浅原録郎
2003、7,13母初江写真集より
90歳
母親の句集より

富士登山叶わぬままに老いしかな

男の子ばかり育てヾ障子貼る
     
写真集に寄せる

華やぎし乙女の時あり                     残り少ない砂が問題ではない      

母である時あり                          逆さまにすれば時は逆転する 

時代を超えきた落着きの時あり                時は不可逆にして空間を貫く   

砂時計の砂が底に積もるように                されど今を支点に過去あり未来あり 

思い出の砂の一粒ヾが時に運ばれる             始点があれば終点がある                   

写真は時の瞬間の一コマ                    正があれば負がある

遠い過去がありこの瞬間がある                 不可分にして一     

この瞬間はまた遠い未来に繋がる               今を生きることは過去未来を生きること 

残された映像も記された言葉も                 生死を離れ永遠の時は流れる    

膨大な過去達の記録未来達の記録






残雪の尾根を登り詰め

猛々しい顔ををのぞかせる火口壁を見やれば

可愛き兎の足跡が柔らに林の向こうに

待ちかねたように唐松の芽が膨らみ始め

人間が居ようと居まいと大自然の静寂は谷間に張り詰める

生と死のドラマを演出するこの山の神々は

動物も木々も草花も埋もれた雪の下に隠し

じっと春を待たせる

静寂は更につのりクマゲラの鳴き声が虚空を引き裂く

春の躍動を生むこの静かさこの静止が好き

時折の梢を揺らす風のざわめき

静かに静かに春を待たせる


歴史は直線に経過する事実の流れ

歴史は砂時計の砂のように細分化され断片化された記憶の集積

PCのファイルのように

経過しながら留まる歴史の中で人は生まれ死んでゆく

その事にどんな意味があるのだろう

経過した時は永遠に帰らない

この瞬間は瞬時に過去になり

未来は直ぐ未来でなくなる

されど集積した時の中には過去があり未来がある

決して消え去ることのない事実の集積

事実の集積ながら砂の一粒ずつは断片化された非連続なもの

PCは断片化した記憶を拡張子という共通の記憶を頼りにファイル化する

人の記憶も同じ

其処かしこに存在する歴史の記憶を心の拡張子がファイル化する

その時人は永遠に生きるという