第18話  2003.07.21


『続・北帰行』―黄金バット―

 ネットの掲示板にこのような書き込みをした。
「道産子コレクターさんへ。来月旭川を訪れます。オモチャやオマケを買って帰りたいと思っています。ご存知の方ありましたら、ご当地のショップ等をお教えください」
 さっそくご親切な方からのお知らせがあった。
「遠くからのお出ましありがとうございます。お気に召すかどうか分かりませんが、旭川駅前のビル内、アニメイトの隣のおもちゃ屋は食玩やガシャポンを開封販売しており、なかなかおもしろいですよ」
 旭川空港からその店へ、私は義父の運転するクルマで直行した。私が物色している間、かみさんはキオスクで土産物えらび。なに、選ぶほどのことではない。決まって「白い恋人」と「わかさいも」なのだ。もらう方も心得ていて「いつもたのしみにしています」などと世辞をいう。
 その店では結局なにも買わなかった。私はシークレットや色違い、また意図的であろうアソートの悪さなどからほとんど食玩に背を向けてしまっている。ガシャは通販でセット買いしており、百円玉をにぎりしめてベンダーを回すことはない。ガシャは好きだけど、己がベンダーを回す姿は、想像するだけでおぞましい。
 翌日、私みずからがハンドルをにぎり、昨年訪れたいくつかの店を回った。
 「時代屋」という古道具屋(リサイクルショップ)がある。前回、私はここで電動式のブリキロボットを買った。これはいわゆる「パチモノ」で、アジアのあそこでつくられたものだろう。が、堂々と1万円を超える定価が付けられており、しかも「出血大サービス」などという時代がかった誇大広告を打ち、8800円の売値を示している店がある。私は1500円で買い、おまけに単一電池2本をつけさせた。もちろん歩き、回り、機関銃を撃ちまくるすぐれものである。
 二匹目のどじょうを、とばかりに真っ先にのぞいたのだが、今回は収穫なし。
 つづいて名称不明のやはり古道具屋。どれが売り物でどれが所蔵品か判然としない。気に入らない客には売らないのではないのか? 主人はたいそうなへそ曲がりに違いない。と思いつつ「昔のおもちゃはありませんか?」と尋ねると、親切に別の店を教えてくれた。
 「KEN坊」という。旭川市1条20丁目。六畳一間ほどの店内に、息苦しいほどのオモチャやオマケが詰め込まれていた。主人は埃だらけの我楽多にうずもれていて、おそらくはお宝もうずもれているのだろうと思われた。目につくものに私はそそられなかった。が、この店は一見の価値あり。また主人はすこぶる親切で、「熱海から来た」と告げると、類似の店を二軒紹介してくれた。
 その店へも行った。私は中野や秋葉原の店を知るばかりだから、のどかでこじんまりした二軒の店に好感をおぼえた。が、総じて高かった。食っていこうとすればやむなきことではあるだろうが……。
 終日、80歳をはさんだ義父母は私の道楽にお付き合いしてくださった。さすがに最後は「もう帰ろうや」といった。まったく、申し訳ないことをしてしまったと、深く反省している次第である。

(写真解説)
 黄金バット(1997年・リバティプラネット製)全高約26センチ。かみさんが「ここまで来たんだから買っちゃいなさいよ」と、狭い店内(KEN坊)で大声を張り上げるものだから、私は恥ずかしさのあまり2800円で購入。が、自立せず、やむなくかみさんに支えてもらった。
 

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