第40話    2004.03.02


『トイフェス・2004冬』―素朴マン&素朴獣―

 本年2月22日東京国際展示場・東京ビッグサイト西館に於いて「トイフェス」「ワンフェス」のふたつが同時開催された(第4話、第6話参照)。
 今度こそはと、セブンのトンちゃんとふたりクルマに乗り込んだのは午前1時半。仕事を終え、ひと風呂浴びてからの出発だった。
 かみさんは「寒いからホカロンを持ってけ」とか「靴下は二枚はいてけ」とか。挙句には「濡れたタオルを持ってけ」と口やかましい。飯の際に手を拭けということなのだろうが、私は曲がりなりにもヒマラヤを駆け抜けてきた山男。都会の塵芥なんぞは屁でもなく、からっ風に吹かれてめげるほどやわじゃない。零下20度の雪原テントを想えば額にうっすら汗させにじませよう。
 午前10時の開場までの6時間半、はじめてお会いするトンちゃんのお仲間たちとなごやかに過ごす。
 彼等のお目当てはワンフェス会場で販売される「ムーミンズランチ」「リセヴィネ」「わたおに」「グリコのコレクションボックス」など。私はトイフェス優先なので、ご親切な彼等に「リセヴィネ」の購入を依頼。
 これらのブツを手に入れるため、彼等のうちのお二人は前日の午後からならばれているのである。それでも前には200人ほどがおり、先頭は前々日に来たのではないかという凄まじい話だった。
 トイフェスの列にならんだ私は20番目だった。列がのびはじめたのは充分夜が明けてからだから、こちらはずいぶんのんびりしたものだ。
 開場間際に、明治大学の替玉入試で天下にクズを晒したなべやかんを見た。なべおさみの伜といえばお分かりだろうか。なんでも彼は名うてのおもちゃコレクターだそうである。が、私は彼のあまりの背の低さに羨望ではなく憐憫を、劣等ではなく優越をおぼえたことだった。
 開場と同時に私はエフトイズ・コンフェクトのブースに駆け付けた。無論一番乗りである。目当ては『フィギュア王』の巻末に掲載されている「人間人形の逆襲」に登場するキャラクター「素朴マン」と「素朴獣」のフィギュア。その監修には実相寺昭雄、河崎実の両監督が当るという力の入れよう。また先着50人には原作者ほりのぶゆき氏のサインがもらえた。
 ほり氏はまだ来場しておらず、サインは12時からというので引換券をもらい、すぐさま会場限定の「ガラダマ」が販売される人だかりのブースへ。どさくさの中で私は三番目にガラダマを入手。ついでに列の途絶えた隣で「世界の神話・仏教神話編・木彫バージョン」を買い、ともにヒマラヤを駆け抜けた赤いザックに放り込む。
 その後はほり氏のサインがはじまる12時まで、さまざまなブースをのぞいて歩いた。
 私にはすこぶるなつかしいTVドラマ「丸出だめ夫」に登場したロボット「ボロット」のソフビ(マーミット製)を値切って購入。ここに集まるオタクたちは紳士ぞろいなのでほとんど値切ることなどしないらしい。これでは業者に成長はない。法外な値をつけて恥じたようすも見せないヤクザ者を散見した。
 ワンフェス会場にいるトンちゃんに「昼飯どうする?」と電話をしたところ「それどころじゃない!」といわれ、仕方なく、たいしてうまくもないオリエントカレーをひとり食す。
 12時となり、ほり氏のサインをいただきに行く。果たして、品物はあまり売れておらず、サインをいただきに来た人も10人ほど。
 ほり氏はやや緊張されていて、私が「毎号たのしみにしています。これからも読者をたのしませてください」と申し上げると感激され、ご自身のサインの下に私の名を記してくださった。私の名を入れないほうが値打ちがあるのでは? と思いつつも、ほり氏の厚情に甘んずる。
 その後、やはり会場限定品の列についたが、10分ほどで離脱。開場までの6時間半は待てても、あと20分ほどが待てなかった。これは「情熱である」と自覚した次第。
 前日の午後からならばれたトンちゃんのお仲間も、前々日からならばれたワンフェスの先頭も、等しく情熱の為せる技であり、その情熱は多分に狂気を含んでいる。
 ワンフェスについては次回に記す。

(写真解説)
 本文で紹介した左「素朴マン」と右「素朴獣」全高約7.5センチ。こういう怪しげなものが売れると世の中の風通しが良くなるのだが……。
 

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