第56話    2004.09.15


『聖地巡礼』―ゴジラ・その2―

 熱海発8:46分の電車で東京へ。途中、平塚で快速アクティーに乗り換える。品川で下車して山の手線で恵比寿。到着時間は10:40分。
 いつも空いている駅前のケンタッキー・フライド・チキンでドラゴンサンドを頬張り、タバコをくゆらしながらコーヒーをすする。第2話で紹介したミスター・クラフト開店までの20分ほどを、私はこうして過ごす。朝から晩までかみさんと鼻突き合せている私にとって、この20分は実に貴重で、しばし来し方行く末に沈潜するのである。
 独身時分の私は、一人で喫茶店や飲食店に入ることができなかった。他人の眼が気にかかり、時間を持て余してしまうのだった。それは今でも同じで、20分というみじかい時間だから堪えられるのである。
 ミスター・クラフトへは5階のレンタル・ショーケースが目当てで足をはこぶ。これまでにいくつとなく掘り出し物に出くわしている。が、ここ一年ほどは空振りが多く、もう巡礼コースから外そうかと考えているけれど、KFCでのみじかい孤独と、次に巡るまんだらけ渋谷店の開店時間(12:00)を考えると立ち止まらざるを得ない。
 まんだらけ渋谷店でもいくつかの掘り出し物に出くわしている。最たるものは第37話で紹介した「鉄人28号ジオラマシリーズ第1話・28号誕生編」である。これにはカラーとモノクロの2種があり、私はこころを遺してカラーのみを買ったのだけれど、今になってもモノクロは売れておらず、しかも価格は倍になっている。おそらく値付けを間違えたのだろう。素晴らしいことだ。
 渋谷の次は中野。中野は秋葉原と並び称されるオタクのメッカである。が、最近では新宿も力をつけはじめていて、なかなか素通りできないでいる。
 新宿では通称「さくホビ」のさくらやホビー館。東口の紀伊国屋書店の裏にあり、学生の私はその近所にあるトップスという喫茶店に足繁く通った。無論、友だちと、あるいは待ち合わせ場所として。
 さくホビをのぞくと大ガードをくぐって西口に抜け、ヨドバシカメラ近くにあるレンタル・ショーケースに顔を出す。ここはメッカのショーケースと違いスレていない。つまりは掘り出し物に出くわす確率が高い。こうしたショーケースの主流は目下のところ食玩(オマケ)であるから、ガレキやソフビなどは狙い目なのだ。私はここで(穴場なので公表は控える。が、いずれスレッからしになるだろうから、そのときは罵詈雑言とともに公表する)マーミットの「M1号」やノスタルジックヒーローズの「ファイヤー二世」を廉価で購入している。
 中野はブロードウエイ。
 先ずは2階のまんだらけへ。そして4階に上がり3階、2階、1階とそれぞれの店を巡る。以前はずいぶんと掘り出し物の出くわし、それこそ中野は私の聖地であり、巡礼のメッカだったけれど、このところはどうも芳しくない。これは私にも原因がある。
 ヤフ・オクに参戦してからは、たいがいのモノはそこの場で手に入れている。自然、私の欲求は高まり、より希少なモノ、より廉価なモノとなる。そんなモノなら誰でも欲しいわけだから、なかなか私の手には落ちてくれず、私は不満を抱いて家路をたどる破目になる。
 これは巡礼の最後に訪れる秋葉原も同様である。アキバでは先ずはラジオ会館にある海洋堂の直営店ホビーロビー東京をのぞき、イエサブことイエローサブマリンヘ。ここで売られているガシャは唾を吐きかけたくなるほど客をナメているけれど、たまに店頭でバーゲンをやるので見過ごすことはできない。
 つづいてボークスが営むレンタル・ショーケースをうかがうが、ここでも最近は徒労に終わることが多い。時間と元気があればその後街へ出て、何軒かの店を冷やかしたりもする。が、たいがいは冷やかしただけの話で終わる。
 帰りは東京発18:31か19:50の電車に乗る。これだと接続が良いのである。
 先日、私は5カ月ぶりに聖地巡礼を行った。かつての熱狂はどこへやら。ついぞアキバには足を向けずに中野で切り上げ、ゴジラ全集の「モスゴジ」と「キンゴジ」のふたつをザックに入れ、虚しく帰宅したのであった。

(写真解説)
 ゴジラ全集(バンダイ)左「モスラ対コジラ」右「キングコング対ゴジラ」全高約8センチ。全7種+SP。SPは「対デストロイア」の色違い。1BOX(10個入り)買えば7種は揃い、私は発売と同時に1BOX買ったけれど、ボウズでは帰れず仕方なしに掴んだ次第。

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