第63話    2005.01.09


『TOY OF THE YEAR '04』―鉄人28号・その7―

 明けましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願いいたします。
                  佐藤 寒

 今年は早々に昨年のベスト1を決しよう。
 昨年の元日、私はクルマを走らせ長泉のトイザらス(第35話参照)へ行った。ゴローとガラモンを手に1階の食品スーパーでウルトラ怪獣名鑑・ウルトラセブン編のシークレット「ガラモン・モノクロ」を獲得。
「こいつぁ春から縁起がいいや」と、呵々大笑したことだった。
 そのガラモンは、その後に発売された「史上最大の侵略編」のシークレット「ゴーガ・モノクロ」と「セブン上司・クリアー」の2点とトレード。ところが、数日後に2点とも自力で獲得。ガラモン・モノクロはお気に入りだったのでいささか後悔した。が、案外こんなものなんだ。
 2個となったセブン上司・クリアーは12月にグリコマンとビスコ君・ウルトラマン編の「アキコ隊員」とこちらは1対1のトレード。
 グリコマンとビスコ君は、ウルトラマン編が第2弾となる。1弾もだが北海道先行発売となり、その折かみさんの実家を訪れていた私は土産とばかりに買い込んだ。
 これにも嫌らしいシークレットがあり、その2種を手に入れるのに2年を要した。私はこれに懲りて「もうグリコマンとビスコ君は買うまい」と誓い、スーパーの売れ残りに鬼面毒笑したことだった。
 ところが、年末になってその売れ残りが1個100円で投げ売りされたのである。全部で26個、私の誓いなど塵芥の類であった。
 ウルトラマン編は全19種類。そのうちの16種類が100円で買ったものから出てきた。残り3種のひとつが先のアキコ隊員で、「ダダB」はヤフオクで入手。強レアである「ゾフィー」はヤフオクでの落札がかなわず、ネットのトレードにかけてみたけど未だ当たりなし。
 私は2000円以下では落ちない定価315円のゾフィーが欲しいのではない。全19種類をそろえたという、ほんの束の間の達成感を味わい、征服欲を満たしたいだけなのである。手にすればたちまち熱狂はしずまり、後はさっさと仕舞われ「見せてくれ」という酔狂でも来ないかぎり日の目を見ることはない。
「そうなんだよな……」と、中年の私は分かっていながら脱け出せず、「蒐集の本質はギャンブルだぞ」と、独ごつのである。
 ネットのオークションも、多分にギャンブルである。私はこれまでに200点ほどを落札したけれど、是が非でも落としたかったものなど10点にも満たない。あそびごころと少々のリスクに酔って入札するのである。
 2004年の第一発目はユニファイブ製の缶ホルダー(全高約17センチ)「星一徹」だった。全5種のうち星飛雄馬と花形満と左門豊作の3種を前年に落札し、残りの一徹と伴宙太の出品を待ち望んでいたのである。
 これなどは10にも満たない是が非でも落としたいもののひとつだった。半年後には伴宙太を含めた3種1セットも落札し、達成感と征服欲を満たされた。ダブリとなった飛雄馬と花形は、夏にセブンのトンちゃんを訪ねた折の土産とした。萌系の彼には迷惑だったかもしれない。
 一徹がピンで、キリはM1号製のソフビ「X星人(ミニ・キングギドラ付)」だった。暮れも押し迫った30日の深夜にヤフオクで落札。それまでに何度となく入札したけれどもかなわず、ダメモトで入札し、仕事を終えてパソコンを開くと案の定「高値更新」。この時ばかりはまだ余裕があったのでもうひと押しした。商品は年明けの5日に届き、同じくM1号製のソフビ「円谷英二」の横にならべて悦に入っている。円谷英二は一昨年の8月にネットの通販で購入したものである。
 昨年を振り返ると、ダメモトの落札が多かった。殊に鉄人28号ものがそうである。ノスタルジック・ヒーローズのジャイアントソフトビニール人形1(鉄人28号・全高48センチ)と同ブラックオックス。箱なしではあったけれども他に入札者がなく、ぴったり定価の3分の1で落ちた。
 鉄人28号ミニ3点セット・ソフビ歩行人形(鉄人、正太郎、大塚署長・大阪ブリキ玩具資料室製)は他の入札者を振り切っての落札だった。といって、とんでもない金額ではなく、それまでの高値の3分の1ほどであったから、よろこびよりもむしろおどろきのほうが大きかった。
 こいつは友だちのエミちゃん宅で拝見し、以来こころに秘めていた品だった。エミちゃんは私の中学の先輩だが面識はなく、長じてトンちゃんの紹介で知己を得た。彼女は自宅新築の際にコレクションルームを設けた熱血漢であり、結婚20周年の記念に「指輪も着物も要らないから」といって、石工にゴジラを彫らせた偉丈夫でもある。
 一昨年の「トイ・オブ・ザ・イヤー」に選んだ鉄人(第37話参照)も、エミちゃん宅で拝見したものだった。今年もそれでは芸が無いので、やはりダメモトで落とした品を一番に決めた。
 写真をご覧いただきたい。左・鉄人28号(全高約20センチ)。右・金田正太郎。ノスタルジック・ヒーローズ製の陶器人形セットである。定価は2万円であり、それまでに何度か1万円ほどで入札したけれども落ちなかった。ところが、今回は5750円で落札。出品者はがっかりしたに違いない。私はあまりの廉価にキャンセルを警戒したし、品を手にするまでは気が気でなかった。
 私に関していえば、これまで商品が届かないという面倒はないけれど、リターンやクレームの対象となる出品者の対応や商品は二三あった。が、これはギャンブルであり、リスクを背負ってのたのしみなのだから、手にすれば良しと割り切っている。
 今年もまたおもちゃに明けた。ならばおもちゃに暮れることを念じてやまない。

追記
 本文中の「ゾフィー」は昨夜1800円で落札された。情勢は刻々と動いております。石川達三は「三年先の約束などしないも同然だ」といったけれど、今日では「三カ月先の」否「三日先の約束とてしないも同然」かもしれない。ならば「日々是好日」こそ平安の妙諦でありましょう。

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