第71話    2005.05.09


『ゴールデン・ウイーク』―ゲゲゲの鬼太郎―

 今年のゴールデンウイークは4月29日からで、会社によっては5月8日までの10連休だという。今どきそんな景気のいい会社が本当にあるのかと怪しんでいたら、身近にあったから驚いた。
 彼は万楽の昔からの馴染みで、裾野市にある自動車関連工場に勤めている。「出でて宰相とならずんば退いて故地を耕す」とは中国上代知識人の理想であったが、彼は栄達を諦め数年前にふるさと熱海に新居を構え、週末は地元少年野球チームの指導に当たっている。
「連休は野球漬けですよ」といって、日焼した顔をほころばせつつも「かみさんにもっと理解があればなあ……」と、溜息をもらしたことだった。
 彼のような経験と情熱のある指導者が私の子供時分にいたならば、私や私の友垣等の人生はいくらか趣を異にしていただろう。「三年かけて修業するよりも、三年かけて良い師を探しなさい」と、中国ではいうそうである。が、愛国無罪を謳歌するこんにちの中国ではどうか知らない。
 4月29日は私の旧友の誕生日だった。その祝いにジャイアントロボ(フルタ・特撮シリーズ1)を送ったところ、彼のふるさと石川県ではジャイアントロボは放映されてなかったという。
 オモチャに関していえば、ジャイアントロボは鉄人28号やウルトラ物に比べて廉価である。つまり人気がなく、売れないのだ。その理由のひとつには全国放送でなかったという事情もあるのだろう。ただし、ジャイアントロボふぁんの私としてはよろこばしことである。なぜって、欲しいものが安く手に入るんだから。
 私の子供時分にも「ゴールデン・ウイーク」という呼ばれ方がされていた。が、10連休などと聞くとたちまち輝きは褪せてしまい、せいぜい「シルバー・ウイーク」あたりが妥当だろうと肩をすぼめてしまう。
 中学になってからだと思うけれど、シルバーウイークは私たちの海開きであった。無論、ウエットスーツなどはなく、だからといって裸で海に入るには勇気が要り、ほんの申し訳程度にTシャツを着て、サザエ採りに興じていた。
 海から上がれば流木を集めて焚火をし、凍えたからだをあたためたけれど、採ったサザエをその火で焼いて喰うことはなかった。その火で喰うということは、家に持ち帰るお宝が減るということだから。
 5月4日は「ふれあい産業まつり」が開催された。場所は往時お宮と貫一がそぞろ歩いた熱海の海岸。今ではすっかり整備され、親水公園として生まれ変わった。昨年は雨で散々だったけれど、第1回目の一昨年は大盛況で、私はトンちゃんの呼びかけでフリーマーケットに参加した。
 今年はどんなお店が出ているかと、かみさんと二人で出かけてはみたものの、掘り出し物に出くわすことはなかった。
 私は第68話で紹介したウルトラ怪獣名鑑の「トドラ」を未だに入手できないでいる。間もなく(5月16日)第3弾が発売されるというのに。
 ヤフオクでの落札という手段もあるけれど、まだまだ手の出る価格ではない。カラー、モノクロともに落札価格は3000円前後といったところか。2個で3100円で落札した果報者がいたけれど、これは株を最高値で売り、最安値で買うに等しい。
 トンちゃんが熱海にいた時分は彼の協力があった。が、トンちゃんが静岡へ移ってからは彼を中心とした集いも消滅し、私は孤立無援である。またトンちゃん自身もきのうまでのトンちゃんではない。「やーめた」などと言ったわけではないけれど、言わなくとも分かるのである。
 熱し易く冷め易いのは国民性だからいくらかは譲歩するけれど、それにしたって皆の衆、あまりにあっさりしてやしませんか。
 私は靖国を叫ぶ中国および竹島の領有権を主張する韓国のひつこさに嫌悪感を抱くけれど、そのひつこさを蔑むのではなく、いくらかでも我等が民族の血として入れなければいけないと考える。
 アラブとイスラエルは旧約の時代から闘っているし、インド国内ではヒンドゥーとムスリムが数百年の恨みを今日にはらしているのである。
 何事もまずは10年。私のコレクションはようやく緒についたところである。

(写真解説)
 ゲゲゲの鬼太郎・妖怪危機一髪「見上げ入道」全高約10センチ(カバヤ)。2年前のふれあい産業まつりで購入したもの。2年など、またたく間である。

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