第75話    2005.07.03


『高脂血症171』―バードティルズ2―

 市の健康診断で「高脂血症」といわれた。
 高脂血症とは、血液中に溶けている脂質の値(mg/dl)が必要量よりも異常に多い状態をいい、この状態が続くと狭心症や心筋梗塞などの心臓病にかかる危険性 が高くなるという。
 先日、旧友が「出張の帰りだ」といって万楽の縄のれんをくぐってくれた。隣町に居ながら、顔を合わすのは4年ぶりだった。が、友だちとは有難いもので、たちまち隔てのない語調で話がはずんだ。
「小さい字が見づらくなった」と、彼はいった。
「腹が出てきたのでダイエットしてる」ともいった。
 夕飯は小鉢に一膳の飯とおかずを少々。それにオモチャサイズのダイエットビールを一本だそうだ。食いしん坊の彼にしては焼鳥を頬張らないと怪しんでいたらこんなことだった。それでも、その晩はサッポロの中ジョッキーを2杯にホッピーを4杯飲んだ。
「タクシーを呼んでくれ」というので熱海駅まで行くかと思っていたら、「自宅」までだとうそぶいた。
「バカヤロー! ダイエットの基本は歩くことだ」と、言おうと思ったけれどいえなかった。
 これでこそ我が友なのだ。
 私の脂質の値は171で、生活や食餌等の注意や経過観察が必要です、という範疇に入る。治療を要する値が300以上というから私はその約半分で、深刻な状態ではない。
 3年前の検査では「開業以来二人目の健康優良中年」とホームドクターに言われ、大いに気を良くした。が、かみさんにつられて甘いものを喰っていたツケが回ってきたのだ。と同時に、歩かなくなった。歩かなくなったということは、私の場合だと頭を使わなくなったと同義である。つまり、私はバカになったのだ。バカ指数171というのが実相である。
 かみさんも高脂血症で、こちらは遺伝的要因が強く、薬を服用している。私の171にやばいと思ったのか、甘いものをほとんど口にしなくなった。常飲していた缶コーヒーには振り向きもしない。代わりにミネラルウォーターを飲むようになった。といって、わざわざ買い求めたのではない。私が買ったサントリーの天然水24本入り一箱を嬉々として飲んでいるのだ。
 先日、スーパーへ行った折に陳列されたばかりの同商品に目がとまった。オマケの袋を手に取ると、全12種類。商品に関してはフィギュア王誌上で知っていた。
 一本買えば全部欲しくなるのが私の性分で、ならば全部買ってしまえと一箱担いで帰って来たのだった。一本の価格は87円だからどうということはない。なにより、全12種類で24本、はたして2セットそろうだろうか? という興味が勝った。
 2セットどころか、1セットもそろわなかった。さすがに悪の殿堂・海洋堂のやることに遺漏はない。同社は今後もこの手で販促に一役も二役も買っていくのだろう。海洋堂は企業の走狗に成り下がったのである。
 さて、どうしたものかと考えた。
 これがコーラならば、また価格がコンビニ並ならば迷わずネット・トレードへ向かっただろう。が、水だし、しかもかみさんがよろこんでもいることだし、私は更に買い足すことにした。できれば、残りひとつの「アマゴ」を自力で入手したかったのである。
 出ない、出さない、出させない。まるきり観光地のパチンコ屋だけれど、アマゴを見ることはなかった。ヤフオクでの落札価格は人気種ということもあり、500円ほどである。ただし、塗装だけが異なる「ヤマメ」も同様の価格であるから、両者で数を分けているのかもしれない。残念ながら熱海にはヤマメの箱が回ってきたのだろう。
 結局、水は40本ほど買った。アマゴは北海道の方とヤマメとのトレードで手に入れた。蝦夷の地はアマゴの箱が出回ったのだろう。
 コンプリートを果たした私のバカ指数が上昇したのはいうまでもない。ただし、ほとんど一人で水を飲み干したかみさんは「体重が1.4キロ減った」とご満悦である。

(写真解説)
 天然水・森と清流(BIRDTALES-2)「左・ヤマメ、右・アマゴ」全高約4.5センチ(サントリー)。私は一目見てこの両者の違いに気付かなかった。海洋堂の至芸に脱帽である。

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