第77話    2005.07.30


『さらばチョコエッグ』―チョコQ・第10弾―

 一世を風靡した、というといいさか度が過ぎるけれど、私をしてオモチャ集めへと誘い込んだフルタ製菓の「チョコエッグ」から、タカラの「チョコQ」に衣替えして早三年。
 そのオマケの製作者である海洋堂のホームページには「さらばチョコエッグ」と題して、未だにその経緯が公開されている。よほど腹に据えかねたのだろう。が、このしつこさが海洋堂の身上でもある。
 ではもう一方の当事者であるフルタ製菓はどうか? と思ったけれど、私にはどうでもいいことなので取り上げることはしない。
 記憶が不確かで申し訳ないけれど、チョコエッグは「日本の動物・第5弾」「ペット動物・第3弾」をして、「チョコQ」に切り替わったのではないかしら?
 私もそれを潮時に「さらばチョコエッグ」と手を振り、それきり動物もののオマケにも背を向けた。
 集めたものは記録として保管しているけれど、多くのダブリは神奈川県下で動物病院(テトラ犬猫病院)を営む従兄弟にあげた。おそらく院内のインテリアとして活用してくれていると思う。
 わが家では猫を飼っているので、たまに私も動物病院を訪れる。その折、オマケでもなんでも、動物のフィギュアを目にすると気持ちがなごむ。蒐集にはうんざりしたけれど、ただ眺めている分にはたのしめる。
 チョコQとなってまったく手にしないかというと、実はそうではない。やはり一個二個は買ってしまう。買ってたいがいは子供連れの客にあげてしまう。
 オマケは客へ。チョコレートは店で出しているカレーのかくし味に使う。チョコレートだけならもっと安価で上質なものがおなじ売場に陳列されているけれど、チョコQを買う口実がなくなるので手を出さない。
 写真はチョコQ第10弾である。いつ発売になったのか?出て早々にコンビニで見つけて一個買った。出たのはマンシュウハリネズミで、その出来に感心したけれどもそれきり電話の横で埃をかぶっていた。
 先日、なじみのスーパーで、見切り品となってワゴンに放り込まれていたチョコQを発見。2ケース仕入れたようだったから、半分ほどが売れ残った勘定だ。さっそく1個買い、翌日に2個買い、翌々日には売り切れていた。
「もうすこし買っておけばよかったか……」などと、おかしな後悔をした。
 海洋堂のオマケは世界一だろう。ものづくりニッポンの意気やよしである。が、私はどうも好きになれない。「どうだ」といわんばかりの出来映えが鼻につくし、バードティルズ2でもそうだったが、客をなめきったそのアソートが鼻持ちならないのである。
 イワクラはクリアーバジョンなどを出して自爆した。海洋堂も似たようなもので、愛好家に与えた心的外傷は浅からぬものがある。
 とはいえ、その人気は根強く、万楽でも「海洋堂のものしか集めない」という客に出くわした。というより、彼は海洋堂のものしか知らず、また知りたくもない中年であった。話し相手になりたかったけれど、なにせ一方的にまくしたてられたので閉口した。
 私にもおぼえがある。ゴルフや野球と異なり、オモチャ好きは少ない。出逢えばそれは、アジアの僻地で邦人に出くわしたほどの感激なのである。
 私は93年に北インドをほっつき歩き、入国40日目にして日本人に出逢った。場所はガンジス河畔の聖地リシケーシュ。曇り空の昼下がりであった。
 その身体的特徴(胴長短足)で互いに邦人と認め、互いに声をかけたのだった。私たちは屋台でチャーイをすすりつつ、際限なくおしゃべりに興じた。夕飯もともにした。彼は「高島」と名乗り、入国後まもなく半年になると語った。失業し、自分探しの旅に出たとのことだった。
 彼とはそれきりである。写真もないから会っても分からないだろう。ただ、出逢いの感動だけが、私の得難い財産として畳み込まれているのである。

(写真解説)
 チョコQ・第10弾。左手前ツシマヤマネコ・仔、右手前ウシガエル、左奥マンシュウハリネズミ、右奥オイカワ・婚姻色。10弾とはチョコエッグからの通算である。

※写真をクリックすると拡大します。
 

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