太地喜和子インタビュー 1992年10月4日(日) |
藤枝市民劇場 機関誌「あけび」 bX7より原文のまま転載 | |
『唐人お吉ものがたり』 (当日撮影) |
演劇界の大女優逝く |
市劇 初めまして。いかがですか?地方公演は。 太地 どうって言われてもほとんどが地方公演ですから。 (問)文学座の作品はいつ以来ですか? 市劇 『似顔絵の人』以来ですから、年に一回くらいです。 太地 今回の作品はご覧になったんですか? 市劇 (全員で)いいえ、まだ見ていません。 太地 それじゃあ、質問しようがないわねえ…。 市劇 太地さんは、どうしてお芝居をやろうと思ったんですか? 太地 どこでも聞かれるのよねぇ。この質問は。 市劇 山本有三さんはお母さんが芝居が好きだとか… 太地 私もそうでした。母が好きでしたから。 市劇 お芝居以外で何か趣味はありますか? 太地 ひとっつもないの! 仕事っていうか、私にはお芝居しか燃えるものがないから。 テニスとか水泳とか本当に全然やらないの。 市劇 スポーツを見るのもしないんですか。 太地 何にも。だから野球も相撲もみんなきらい。 市劇 では映画とかはご覧になりますか。 太地 参考になりますからね。 あんまり理屈っぽいのや訳のわからないのより、訳のわかるのが好きですね。 他の人の芝居とかも、わかりやすいのが好きですね。抽象的な芝居はきらいです。 市劇 役者は体力が勝負だと思うのですが、地方公演もありますし、何かやられてますか。 太地 運動はやりませんからねえ。体力っていうより、気力ですね。「病は気から」っていいますよね。 睡眠不足、暴飲暴食はしてますし、お酒や煙草は吸いますし、体に悪い事ばっかりですね。 旅に出て、飲みに行って4時5時という事もあります。 次の日? 次の日は夕方からだから、昼間休みます。 市劇 今日は藤肢のお祭りですが、加藤さん(文学座の方)は見物に行ったりしていますが、 太地さんはどうですか? 太地 彼はお祭り好きですから。私はあんまり好きではないんです。 地方公演に行っても、観光とかも本当にしないんですよ。 市劇 本当にお芝居だけなんですね。 太地 お芝居だけっていうか、他の事にあんまり興味もたないのよね。 死ぬほど好きじゃないんです。たまたま他に興味をもてないからなんです。 市劇 今までいろいろな役をやられてきたと思うのですが、印象に残った役はありますか? 太地 そういう事は思わないようにしています。今の役が最高だと思います。 特に「唐人お吉」ですから。 市劇 「特に」? 太地 ええ。前から演りたいと思っていました。 何でって、「唐人お吉」だからよ。 今までって言われたって、まだまだやる訳ですからね。 振返るのは早いんですよ。 振返らないんですよ。 先もずい分先じゃなくて、目の前の役を一生懸命演って、そうする事によって先が作られていく 訳ですから。 今演ってて、次あれ演りたいと思うと今演っている役が曖味になってしまいますから。 それこそお吉さんが嘆くだろうし、そこら辺は、はっきりしてますからね。 市劇 山本有三さんの脚本はいかがですか? 太地 素晴しい脚本ですね。 お吉さんの実際のところはよくわかりませんが、絵空事っぼくなくて、段階もとんでなくて、 人が無理矢理ここで…とかないし、ずい分事実と近い人じゃあないですか? 市劇 太地さんはどのお芝居をやってもその役を好きになるんですね。 太地 悪いと地獄ですよ。 市劇 でもその時は文句も言わずに 太地 言いますよ。作家の方と絶縁状態になります。 今は作家がいないですからね。きちっとした脚本で演りたいですね。 市劇 テレビは出ないんですか? 太地 私は女優ですから。基本的に足を運ばないと見られない形でいきたいです。 舞台のあいている時にホームドラマなんて出たくないんです。 テレビは宣伝の時は宣伝に出るとかね。 市劇 すさまじいというか… 太地 他の方は、家族のためとか言ってドラマ出たり。中には家族持ちの方は大学にいくからとか。 私にはそういうしがらみがないですから。 大変ですよね男の方は。所帯を持つとそういう事はいっていられませんですから。 |
文学座の太地喜和子さんが不慮の事故でお亡くなりになりました。 藤枝での舞台前のインタビューをご紹介すると共に、ご冥福をお祈りします。 |