まず、最初に確認しておくべきことは、「健康な皮膚は美しい」というのはおよそいつも真実ですが、逆は必ずしも真ならず、「美しい皮膚が健康な証拠」であると限らないことです。
通常は、健康的であることと、見栄えがよいことの2つはある程度一致するとはいえ、なかには例外もあります。「見かけ倒し」という言葉があるように、見かけだけを優先して、最も大切な中身がともなわなければ、どの世界でも歓迎されないのと同様、いくら外観を整えても不健康であっては「本末転倒」というべきです。
たとえば、美容形成術で、シリコンを使用すると、長い年月を経て「強皮症(皮膚が硬くなる膠原病の一種)」になることがあります。シリコンが用いられた当初は、こうした問題が生ずることは予測できなかったようなのですが、長い年月の後に、少しずつ報告が増えて、明らかにされてきたのです。近年はさらに、新しい素材、薬品、機器、技術が導入されてきているわけですが、美しさを手に入れようとした行為によって、後に不健康を招いてしまったというこのような事例は、残念ながら、その後もあとを絶たないのです。美容形成の広告ではもちろん、うまくいったケースだけをことさらに宣伝しますので、一般の人が負の面を知る機会はきわめて限られているといってよいでしょう。
あるいは「小麦色の肌」「赤銅色の皮膚」は従来、健康的なイメージと重なり、男性は精悍なイメージ、女性もスポーティなイメージで、日光浴が奨励されていた時代があります。しかし、健康的なイメージとは裏腹に、将来、たくさん陽に焼いた肌はそうでない肌よりも早く老化し、シワが多くなったり、シミも増え、果ては皮膚ガンができてしまう事例が多数報告されています。つまり精悍なイメージと健康的であるということは、少し意味合いが違うと考えたほうがよいのです。
皮膚という人体最大の臓器が「健康である」ということは、とりもなおさず全身が「健康である」ことにかなり近いといえます。そして、健康な皮膚、健康な体、健康な精神のいずれかもそろうことが究極の目標であるべきことを、まず最初に再確認しておきたいと思います。
この世の中に二人として同じ人はいません。素質はばらばらですし、疾病に対する悩み方、人生観も個人個人でさまざまでしょう。従って、元来、健康的であるためのアドバイスも、人物や疾病ごとに違ったものであるはずです。
とはいえ、そこは同じ人間同士、ある程度普遍性や共通点もあるでしょう。そういった意味で、古くから伝承・励行されてきた「健康の秘訣」にも学ぶべきことがたくさんあります。その中でも、特にに大切ではないかという「健康の秘訣」を以下にあげます。

・適度に体も頭も使うこと
・体も頭も度を超して消耗させるべきでないこと
・熟睡できるような生活をし、しっかりと睡眠時間を確保すること
・栄養バランスを考え、適切な食生活を心掛けること
・自分の素質や疾病を理解して、疾病や弱点を補強、克服するような工夫をすべきこと
・自律神経のバランスをとり、暑さにも寒さにも適応できる体を維持すること
・疾病や傷害には早めに気づいて、早期の対応をすべきこと
さらに皮膚への健康に関して補足すると・・・
・紫外線、放射線、薬物、環境中の生物などについての正しい知識をもつよう心掛け、うまく対処していくこと
・適度な清潔と必要に応じたスキンケアを実施すること
・かゆくてもかかないこと
・皮膚の1箇所に極端な負荷を与えず皮膚の障害を生じたら適切な処置をし、回復するまで局所の安静を保つこと
入浴や水浴びにより、皮膚を清潔にすることは、皮膚を健康に保つための基本です。これは、人間のみが気づいていることとは限らず、サルが入浴することもよく知られていますし、それ以外にもさまざまな動物が温泉や河川、湖などで水浴びをして、健康を維持していることからも、その必要性がわかります。
衛生や入浴は、古今東西、世界各国、各時代の重要なテーマであったと考えられます。というのも、古代インドやローマなどの文明の遺跡にも、下水設備、入浴施設が発見され、これらが町ぐるみで支持され、文明や都市の発達に欠かせない要素であったことがわかっているからです。衛生は英語でhygeneといい、ギリシャ神話の健康の女神、ヒュギエイアHygeiaに由来します。やはり古来から、健康と衛生という概念が切っても切れない関係にあることが認識されていたのです。

医学の父といわれる古代ギリシャのヒポクラテスも、衛生やスキンケアに相当する概念を重視したことが知られていますし、日本の伝承でも、大黒様としても知られるオオクニヌシノミコトは、フカに襲われて障害を負ったうさぎを助けるために、まず「塩水ではなく、川の水で体を洗って」から、がまの穂で身を包むという、スキンケアの原点とも言うべき方法を採用したと言い伝えられています。(古事記、因幡の白兎伝説)。また、日本では各地に温泉の効能が言い伝えられ、温泉が健康の秘訣であり、病気を癒す場所として広く浸透しています。もっとも、こうしたことは今さら強調するまでもないかも知れません。
もちろん、今日、生物学、微生物学、公衆衛生学、環境学、医学などの各分野が飛躍的に進歩し、専門知識から合理的に導かれる具体的なスキンケア、入浴法が古来の概念から少しずつ修正されてきているのも確かです。
たとえば、古くから珍重されてきた硫黄泉ですが、これは「疥癬」などの皮膚病にも有効とされ、疥癬虫に対する殺虫効果があった可能性があります。現在でも、疥癬の患者さんの場合、わざわざ硫黄の入浴剤を購入して入浴することを励行されています。またニキビには硫黄のローションを外用することもあるくらいで、ニキビのできやすい人にも硫黄泉は有用といえるでしょう。ところが、アトピー性皮膚炎などすでに皮膚炎があったり、皮膚が過敏な方が硫黄泉に入ると、硫黄の刺激が過剰となり、ますますひどい皮膚炎になってしまうこともあるので注意が必要です。
また、一般に気をつけたいのは、自分がうまくいった方法が万能ではないということです。たとえば、入浴は世界各国で励行されている行為ですが、心臓病のある人、発熱時、飲酒時など、疾病や皮膚の状態によっては控えたほうがよいこともあります。ただし、現在では、入浴しない場合でもどうやって清潔にするかということは、医学的にも重要な事柄となっています。たとえば、入浴はやめて、単なる流水で洗浄することが推奨されたり、傷の具合によっては濡らさないほうがよい場合もあります。
このように、一般健康人を想定して推奨される健康法は数々ありますが、何らかの疾病を持っている人は、それが逆効果にならないか、あるいは日常生活などでも注意すべき点がないかなど、機会をみて、医師などの専門家に相談しておかれるとよいでしょう。
自動車をおもちの人ならご存じでしょうが、砂利道を走って泥をかぶったままの車を放置したり、鳥の糞が付着したままにしたりしておくと、車の塗装がはがれて腐食してしまいます。油汚れに泥汚れ、こうしたものを放置せずに、ていねいに洗ってからワックスをかけることが車の維持に重要です。よく手入れされた黒塗りの高級車はいつまでもピカピカですが、手入れされていない雨ざらしのファミリーカーは傷み方も早くなります。

ひるがえって、皮膚の手入れも基本的には同様なことが言えます。ていねいに洗って、もし皮膚が傷んでいれば保湿剤などを外用することがスキンケアの基本になるのです。
こうしたスキンケアの重要性は、ある程度の年齢以降とくに高まってきます。また、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚の疾患をもつ人では、若い頃からのケアも重要になってきます。
体を洗うときには、石鹸をゴシゴシ、まるで皮膚にすりこむようなことをしてはいけません。石鹸をよく泡立てて、泡で表面をなでる感じがよいでしょう。いつもより念入りに洗うときも、タオルでゴシゴシ洗うのではなく、一度洗い流してからもう一度洗うか、石鹸がついたまま、少し時間をおいてから洗い流すようにしましょう。「二度洗い」か「時間差攻撃」です。
昨今人気を集めているアカすりは、やりすぎに注意しましょう。若くて、ニキビ症で、しかも毛穴が詰まりやすい人には、ある程度よいかも知れませんが、特に50歳を過ぎて皮脂の分泌が落ちて、皮膚の再生力も衰えた状態なのに、さらにゴシゴシ痛めつけるのはやめたほうが賢明でしょう。皮膚や角質は大切にしていかなければいけません。
ゴシゴシ洗っていなくても、長時間湯船につかっていると、皮膚の角質がふやけさせてしまうことがあります。また、洗髪で爪を立てて洗うのはやめましょう。頭皮は簡単に傷みます。指の腹で洗うこと、そしてよく泡立てることが重要です。ていねいに洗うときは時間をおいてからすすぐようにしましょう。
ひっかきたくなるほどかゆくなる疾患はさまざまありますが、たいていの場合、ひっかくことによって細菌感染を招いて痛い目にあったり、疾患そのものを悪くしたりしてろくなことはありません。どうやればかゆみがとまるかといえば、まずは適度に冷やしたり、患部を水で洗うなどの処置が推奨されます。その後に局所の状態に応じて、適切な外用剤を塗ったり、局所的な処置が必要になることもあります。ただし、よくわけもわからずに、そのあたりにある外用剤を使用するのは考えものです。疾患ごとに適切な外用剤が異なりますので、冷やす程度でうまくいかない場合は、まず医療機関、皮膚科専門医に相談しましょう。
スキンケアの基本は、まず、洗うところから始まります。しかし、どう洗うかという議論の前に、そもそも石鹸を使うべきか、使うべきでないかという基本的な問題があります。
まず、石鹸とは何かというと、界面活性という特性をもった化学物質です。界面活性剤は油と親和性のある親油基と、水と親和性のある親水基をあわせもっているのが特徴です。よく水と油という言い方をしますが、通常は水と油が混ざらないことは皆さんご存じのとおりです。ところが、この界面活性剤をうまく使うと両者が混ざり合います。これは、石鹸の分子が水と油を結びつけてくれるからに他なりません。すなわち、油汚れに石鹸を用いることで、油汚れをうまく「水に流す」ことができるという、人類史上画期的な発見が「石鹸」なのです。

欧米では、石鹸の歴史はかなり古く、古代ローマ時代のプリニウス(Gaius Plinius
Secundus 別名大プリニウス)の記載にさかのぼるそうです。日本に入ってきたのは、16世紀に入ってからといわれており、当時はポルトガル語の「シャボン」という言い方で伝えられ、南蛮渡来の画期的な輸入品としてかなり珍重されたそうです。
さて、このように通常きわめて有用とされている石鹸なのですが、なかには石鹸の悪口をいう人もいます。それは界面活性剤を皮膚につけて、そのまま放置すると、ほぼ必ず皮膚炎をおこすといわれているからです。すなわち、油にも水にも結びついてしまう化学物質である石鹸を使用するとき、うまく界面活性剤としての特性を引き出していない使い方をすると、単に化学物質を皮膚にすり込んでしまうだけ、ということになりかねないのです。そこで、正しい石鹸の使い方、及び使用上の注意を以下に列記してみます。
1)適度な濃度で使用し、泡立ちのよい状態を確認すること
2)しばらく時間をおいて、汚れが泡に馴染むのを待つこと
3)しっかりと水で流して、泡と汚れが皮膚に残らないようにすること
4)(皮膚に使用する場合は)なるべく中性や弱酸性程度のものを選び、業務用や洗濯用のアルカリ石鹸などの刺激の強いものは使用しないこと
5)香料の強いものは、稀に刺激になったり、皮膚に合わない人がいるので注意して使用すること
6)洗うときには石鹸をゴシゴシまるで皮膚にすり込むような洗い方はしないこと
石鹸が原因で生じる問題点の多くは、上記のようにちゃんと使用されていないことが第一にあげられると思います。また、ナイロンタオルやへちまなどで皮膚を痛めつけると、皮膚炎をおこしたり、症状を悪化させたり、皮膚自体が黒ずんできてしまう(摩擦黒皮症)ので注意が必要です。
ただし、すべての事柄には例外がつきもので、次のような場合では、石鹸の使用を制限することもあります。
a)混入されている香料などの物質や不純物などの一部の成分が皮膚に合わない人の場合
b)高齢のため油の分泌や皮膚の再生力が落ち、石鹸の使いすぎから、皮脂が落ちすぎてしまう恐れがある場合
c)皮膚にびらんや潰瘍がある人で、石鹸が刺激になったりしみたりする可能性がある場合
逆に脂性やニキビのできやすい方には、石鹸で頻繁に洗うことが推奨されますし、多くの皮膚炎では、皮膚についたダニ・カビ・ホコリ・雑菌等をまずていねいに洗い落とすことがすべての基本となります。そして洗浄により少し落ちすぎた皮脂を補足したり、軽く傷んだ角質などを保護するために、必要に応じて保湿剤などを外用することが推奨されます。
こうして、一部の例外を除いて、「石鹸」をうまく使っていくことはスキンケアとしても基本的な事柄になります。繰り返しになりますが、石鹸そのものの悪い点をいう前に、正しく使えているかをもう一度チェックしてみましょう。もし傷があったり、皮膚の疾病をもっているいたりするときは、例外的に石鹸を使わないほうがよい場合もありますので、医師に相談してみるのもよいでしょう。
皮膚に限らず、全身の健康にとって、適度な運動と、自律神経のバランスは大切です。自律神経には、末梢血管を拡張させ汗をかくときに働く副交感神経と、逆に末梢血管を収縮させ毛穴を閉じるときに働く交感神経の二つがあります。これらのバランスがとれていると、全身の体調はよくなり、皮膚も健康的になります。逆にバランスの崩れている人は、毛や爪の発育が障害されたり、ニキビができやすくなったり、血管が拡張したままになり、赤ら顔になったり、しもやけになったり、多汗による皮膚の障害が出るなど、少しずつトラブルが出てきます。
機器類は、適度に使い、手入れするのがよいように、人間も頭を使い、生きがいのある暮らしをし、適度な運動をし、皮膚ならスキンケアをするのが大切です。自律神経の機能を引き出すためには、ぬるめのお湯にじっくりつかって副交感神経をを刺激し、さらに水風呂(20〜25℃)につかる温冷交代浴もよいようです。
「ぬるま湯につかる」という表現は、国語辞典にも採用されている基本的な言い回しですが、安楽な状態のみに甘んじて、厳しさがないと、人間がだめになるという意味に使われています。しかし、本当は「ぬるま湯」自体が問題ではなくて、ぬるま湯「だけに」つかっているのが問題なのです。ぬるま湯だけにつかっていると、交感神経を使わない人生になるので、体調をくずしやすく健康的とはいえないのです。ただしこうした事柄は、つねに「適度に」という言葉で修飾されていることを忘れてはなりません。「過ぎたるは及ばざるがごとし」というのは、いろんな事柄に共通の真理で、運動もやりすぎれば、体に毒になるのとおなじです。
ちなみに、スポーツ障害は皮膚のダメージのみならず、筋肉や骨格、はては椎間板ヘルニア、心臓病など、日常生活に支障をきたすほどの障害を引き起こすこともあるので、注意が必要です。スポーツは目的や人生観により、あるいはそれ自体が職業の人までさまざまですので、それぞれの思い入れでやられるのもよいことだと思いますが、格闘技や球技などはそもそもケガがつきものですし、スポーツ選手がつねに長命とは限らないということはいえるでしょう。

さて入浴の場合、ぬるめのお湯(38〜41℃程度)にゆっくりつかっていると、副交感神経が刺激されて汗が出ます。温度が高すぎると、はじめはかえって交感神経が刺激されるので注意が必要です。
一方、水でビシッと冷やすと交感神経が刺激されます。「年寄りの冷や水」という言葉があるように、心臓病や適応力のない人がいきなり冷水につかるのは無理があります。冷水にも平気な体が健康というべきですが、あくまで少しずつ慣らしていくほうが無難であり、さらにいえば、すでに病気になっている人の場合は、別の配慮が必要になることもあるでしょう。
アトピー性皮膚炎などを患っている人は、運動とスキンケアをセットに考えるとよいでしょう。水泳をした後は、必ずプールの水を皮膚からきれいに流し取ることが必要です。プールの水に含まれている塩素を皮膚から洗い流すためです。また、運動の後は汗をとるためシャワーを浴びましょう。汗とほこりで毛穴に微生物がたまるのを防ぐためです。これらを怠っているにもかかわらず「運動して体によいことをした」と満足しているようではいけません。
外用剤や化粧品はもちろん、何でも塗ればよいというものではありません。最低限、自分の肌に合わないものはやめたほうがよいですし、症状がなかなか改善しない場合、あるいは、むしろひどくなっていく場合も、ただちに使用を中止して、なるべく専門医に相談するのがよいでしょう。

市販の外用薬にメンソールが入っているのをよく目にしますが、メンソールがないと塗った感じがしないという消費者の意見が多いから、というのが製造者側の言い分のようです。しかし、とくに皮膚炎のある人には、メンソールが刺激になって症状が悪くなることもありますので、注意が必要です。
化粧品に関しては、どの製品の注意書きにも「お肌に合わない場合はやめるように」と書かれてあるはずなので、今更いうまでもないでしょう。また、たくみに女性心理につけこんで、やたらとボトルやラベルに高級感をだしたり、不要と思われる成分をいろいろ配合して価格をつりあげたり、誇大広告で薬効を売り込んだり、ということもありがちなので、自分で十分納得した上で選ばれるのがよいでしょう。
皮膚がかさついている場合、何でもよいから油を塗ればよいと錯覚している人がいますが、元来脂性の人も、油の好きな微生物のマラセチアは好脂性真菌で、頭、耳、顔などの脂漏部位に増え、皮膚のかさつきや、皮膚炎を誘発します。したがって、かさついた肌には「油がよい」と思って、オリーブオイルなどを外用するというのは、むしろそうした微生物に「エサをまく」ようなものなので、やめたほうがいいでしょう。
昔は、色白だと、健康的ではないとか、体を鍛えてないとかいわれて、夏は無理にでも陽に焼くことが奨励されたといいます。しかしながら、紫外線が人体に害を与えることは前述のとおりです。
もちろん、紫外線にまったく長所がないのかというと、そうではなく、ビタミンDの活性化作用があります。と同時に、免疫の力を落とすことが知られており、「乾癬」や「皮膚リンパ腫」といった特殊な皮膚疾患などでは、治療のため、わざと紫外線をあてることもあります。これはもちろん紫外線の短所でもあり、免疫力が落ちるとヘルペスが発症しやすくなることなどもわかっています。

黒色人種やメキシコ、インドの人々のようにもともと色黒の人種は、紫外線による障害をあまりおこさず、皮膚ガンのリスクが相対的に低いことも知られています。しかしながら日本人の場合、特に色白の人では、晩年になって、皮膚の老化が早まったり、皮膚ガンが発生しやすくなったりするので、紫外線に対する防衛策を講ずるのが無難でしょう。というのも、何十年かして、皮膚にさまざまな老化現象や皮膚ガンなどの変化をきたしてくるにおよんで、昔の因果を思い知らされることになるからです。
紫外線による障害は、幼少時から老年期まで蓄積されていき、若い頃陽に焼いていると、老後に皮膚ガンができやすくなると考えられています。また通常18歳頃までに、一生涯に浴びる紫外線量の2分の1を浴びるといわれているため、対策は幼少時から行っておくのが望ましいといわれています。紫外線の量には地域差もあり、日本国内でも、沖縄では本州の2倍以上で発ガンリスクは5倍程度になるため、色白の人ならなおのこと注意が必要です。
紫外線対策としては、具体的に帽子、日傘の使用、およびサンスクリーン(日焼け止めクリームやローション)を使用するのが効果的です。サンスクリーンは通常、薬局で購入でき、SPFという数字が大きいほどUVBに対する紫外線防止効果が高いという目安になります。また、同様にPA++というように、PAに+が多くつけられているものほど、UVAに対する紫外線防止効果が高いという目安になります。したがってSPF15以上、PA++以上の表示があれば、実用上問題はないでしょう。
連日、メディアでは、さまざまな食べ物を取り上げ、その「驚異のパワー」を映像や雑誌にのせ紹介しています。それぞれの食品には素晴らしい効能があり、それさえ食べていれば頭がよくなったり、肌もきれいになり、一生病気知らずの健康体でいられると錯覚してしまうくらいです。私達が口にしている食べ物の多くは、生命維持にとって種々の必要不可欠なものを含んでいるのだから、科学的に分析すれば「何らかのパワー」が明らかになるのは当たり前といっていいでしょう。
一方、報道でご存じかと思いますが、中国製ダイエット「健康食品」で多数の死者が出たことからもわかるように、健康食品でも「薬品」と同様な注意が必要なこともあります。とりすぎれば、副作用や毒性がでたり、まれにはアレルギーなど、その食品が合わない人がいるので注意が必要です。中国でも古来から「医食同源」という言い方がされていますし、アメリカでは薬品と食品は政府の同じ機関(食品医薬品局、FDA:Food and Drug Administration)が取り扱っているように、もともと食品と薬品は境界の難しいものなのです。従って、どんな食品を食べればよいかという点に関しては、政府や厚生労働省の検査・管理も重要ですが、自分の体に入れるものですから、最終的には「自分の身は自分で守る」というくらいの注意が必要でしょう。
一般に、食品の摂取における注意点は次のとおりです。
@「1日30品目」を目標に、好き嫌いせず、さまざまな品目をバランスよく食べる
A腐ったもの、傷んだもの、出所や鮮度が不明なもの、腐臭のするもの、薬品の味のするものは摂取しない
B下痢、嘔吐、発疹、発熱など具体的に不審な症状が出た場合は、医師や専門家に相談する
Cアレルギー症状が出る可能性のあるものは摂取せず、また他人にも強制しない
D知識と情報により、自分に不足しがちな栄養素を含んだものを補足し、逆に自分の素質に合わない物の分量を減らす
現代の日本人は一般に野菜不足なので、野菜中心の食事にするほうがよいでしょう。また、伝統的日本食にも目を向けるべきです。日本が世界に誇る長寿国であるということもあって、近年、改めて日本食が注目され、研究されているくらいなのです。
素質に合わせた食事という点では、たとえば、脂性あるいはニキビのできやすい人では、脂質全体の摂取を控えめにし、動物の脂質や乳製品よりは魚系や植物性の脂質をとるようにしたほうがよいでしょう。また、赤ら顔で顔がほてりやすい人、汗をかきやすい人は、香辛料や飲酒をひかえましょう。
このように個々に素質やもっている疾病がまちまちなので、これだけを食べていればよいと言うものではありません。よくある間違いは、「自分にとってとってもよかったから」という理由で、素質の違う人に自分の嗜好品をおしつけてしまうことです。「万能薬」なんてものが怪しいように、万人に絶対的によい食べ物など残念ながらないのです。食事療法でおおむね間違いがないのは、バランスよく食べることです。
ダイエットに関して付け加えれば、「○○がいい」と紹介され、実際にその食品ばかりを食べて8割の人に効果があったとしても、残り2割にとってはよくないわけで、どんな人にもよいダイエット方法というのは、基本的にありえないと考えておいたほうがいいでしょう。また、脂質は太る元だからといって、脂質をまったくとらなくなるのも問題です。脂質は脳になくてはならないものですし、細胞の膜の構造も脂質でできています。脂質がなかったら人間の構成成分が機能しなくなってしまいます。確かにやせると満足するでしょうが、やせすぎるとかえって病気にかかりやすくなります。皮膚に関しては、偏ったダイエットをする若い女性に見られる「色素性痒疹」という一風変わった疾患もあります。太りすぎも、やせすぎもよくないことがわかっているので、何事も「適度に」「バランスよく」を心掛けるようにしましょう。
現代生活にストレスはつきものです。勉強、仕事、雑用、人間関係、災害、事故、親しい人や動物などの別離など、その内容はさまざまで、場合によっては体に種々の変調をきたすことになります。
もっとも、同じようなストレスを受けても、人によって障害の出かたはいろいろですし、障害らしい障害が出ない人もいるでしょう。しばしば観察されるストレス性障害には、脱毛、白髪化、多汗、多動(いわゆる貧乏ゆすり)、過食、食欲不振、下痢、便秘、肩こり、頭痛、自傷行為(掻破・抜毛・爪を噛む)などがあり、きわめて多彩です。もちろんこうした障害のすべてが出るということではなく、人それぞれによって出やすい症状があるようです。

「病は気から」というように、ストレスは多分に精神的な部分あるいは人生観によっても左右されるため、非常に難しい問題です。また、アトピー性皮膚炎などで皮膚を掻破する人は、ストレス性の自傷行為をとることで憎悪することが指摘されており、こうした掻破行動をどう抑制し、スキンケアという行動に転換させていくかは治療の重要なテーマといえるでしょう。
ストレスから回避するために、タバコ、ギャンブルなど、いわゆる「健康的でない」解消法に頼る人たちもいるでしょう。飲酒は、適度に、楽しく、ということならよいのでずが、深酒をしてまわりにたしなめられる飲み方は、うまいやり方とはいえないでしょう。あるいは、まわりに八つ当たりしたり、物を壊したり、はては犯罪行為に走る人々までさまざまで、こうしたやり方はいうまでもなく推奨されるべきでやり方ではありません。
それでは、推奨されるべき「健康的な」解消法があるのでしょうか?
従来からいわれているのは、まず、ストレスのもとになっている問題点と正面から取り組み、解決できる問題は解決するなるべく先延ばしにはしないこと、しかしそれがどうしてもできない問題は「あきらめる」「容認する」という精神的なアプローチを試みること。そして、身体的には入浴、温冷交代浴、運動、スポーツ、ストレッチ、マッサージなどを行うことです。そして十分な睡眠時間と質の高い睡眠を確保するのが理想的です。こうしたことは、全身の健康をめざすということと何ら変わりはありません。皮膚ということを強調するなら、皮膚は人体最大の臓器で、かつ最も観察が容易なだけに、ストレスも皮膚に表現されやすいといえます。
繰り返しになりますが、肌はもち肌、爪はピンクで光沢があり、髪はツヤがあって黒々としている(もちろん色調には人種差あり)、というのが理想であり、そう言う状態はとりもなおさずストレスをうまく解消し、健康的な暮らしを実践することにより実現されるでしょう。化粧や衣服で一見華やかに見えても、「見かけ倒し」といいますか、本人はストレスによる症状に心底悩んでいる場合もあるのです。何よりも本人が幸福を感じられ、病気にもなりにくいことが、最も重要ではないでしょうか。
心身共に健康的であり続けること、このことがとりもなおさず、皮膚も健康的で美しく保っていくための秘訣なのです。
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