『時をかける海・・・・4次元海岸にて』
良く晴れた午前、鏡のような、水面が拡がっていた。
やがて午後になると、雲が流れて、風が出て、山の木々も揺れはじめた・・・
風の王国から沖西がやってきたのだ。
海に続く肘曲がりの道で大きくカーブを切ると、高鳴る心は水門の向うの大海原に飛んでいった。
既に、強い風「沖西」と大きな波濤の中を、飛び魚のように、自由に飛びまわっている者達が、荒々しい三次元の海の中にある。
心臓の鼓動は更に激しさを増し、祈りを捧げて、海に出る。
セールに風がはらむと同時に、風が沖まで身体を運んでくれる。
やがて、その身体は、風の中に溶けて、風と同化していく。
風と波に同化する為には、条件がある。風と戦う気持ちにはならないこと、風と波を恐れないこと、海を愛すること・・・・・
大海原を自由に飛びまわる魂は、あの日、あの時、この海で、どんな波、どんな風の中にいたのか、写真のネガのように魂、自らに焼きつけてゆく・・・・
海の仲間が、無限の形の波濤の上、波間の中で出会うその刹那は、一期一会であり、二度とやって来ない大切な瞬間であることを、海は教えてくれる・・・・・・
海で行き交う者達には色々な顔がある。
色々な人生を航海して来た者、又これから先、色々な航海していく者。
世界中の少しでも多くの人達が、人生の航海の中で、一瞬の幸福や、輝きをその魂に刻んでくれれば、行き交った人の安泰を思いやる気持ちを大切にするならば、どんなに平和な世界になるだろうか。
夕日が沈み、静寂が黄昏を包み、再び二次元の水面となった・・・・
ちょうどその頃でした・・・
鏡のような紫色の海面のはるか向うに、遠い昔、永遠の航海に出た海の仲間や、父や、祖父母や、友人達、それこそ沢山の人々が、灯篭船に火を灯して、それはそれは、にこやかに手を振り 沖を横切る姿が確かに見えたのでした・・・・
明日も、海には風が出て、波が立ち、仲間が集う・・・・