EXAMとは何か



  EXAM。今期、GNOに導入され話題沸騰のシステムである。初出はセガ・サターンのゲーム、「機動戦士ガンダム 戦慄のブルー」である。
  この中で説明されているのは、EXAMとはクルスト・モーゼス博士が開発した対ニュータイプ用のコンピュータシステムで、
  MSの反応速度を飛躍的に向上させ、ニュータイプ搭乗MSに対しての戦術的優位性を得ようとしたものである。
  その開発には、ニュータイプの少女、マリオン・ウエルチの思考パターンのコンピュータへの移植という方法をとり、その結果、マリオン・ウエルチは昏睡状態に陥ったといわれる。
  そして、完成したシステムは、機体の限界を超えた機動をとり、パイロットに高い負担を強いるものとなった。
  また、博士は、ジオン製MSの限界の低さに対して不満を感じ、研究の継続のために地球連邦軍への亡命という手段で研究の継続を図った。
  その結果、完成したEXAMシステムはガンダム系MSに搭載され、その限界の高さから高い性能を発揮した。

  と、長々書き綴ったが、ここでの疑問点は、ニュータイプの思考パターンをコンピュータに写し取る事が、なぜ、MSの反応速度の向上に繋がるのかということである。
  現代の技術では人間の思考パターンを完全にコンピュータの中に写し取る事は不可能である。宇宙世紀の技術が出来たのかと考えると、かなり疑問であるが、限定的ながら可能であったのかもしれない。
  なぜか。ここで推論だが、バイオコンピュータの技術の可能性はどうだろうか?
  「機動戦士Zガンダム」では『バイオセンサー』なる装置が登場する。
  これは擬似サイコミュとも言われ、パイロットの思考を読み取り、操作よりも一瞬早く行動を行うというシステムでMSZ−006 Zガンダムに搭載されたといわれる。
  また、そのおよそ30年後の世界を描いた「機動戦士ガンダム F91」ではその名の通りバイオコンピュータが登場。リミッター解除時には、装甲表面の金属粒子の剥離を起こすほどの
  瞬間加速を得る事が出来た。この際の加速制御にバイオコンピュータが使われていたようである。
  このように、バイオコンピュータ技術は一応ながらも宇宙世紀には存在する技術である。
  EXAMシステムで必要になるのは、回避動作や、攻撃動作において、パイロットの反応速度を超える機体の反応である。
  相手はニュータイプなのだから、反応速度ではオールドタイプのパイロットは太刀打ちできない。
  しかし、MSの方がパイロットとは別に反応し、攻撃動作を行えば、ニュータイプに対抗できるのである。
  つまり、「MSにニュータイプが乗っていないのなら、コンピュータでNTを再現すればいい」
  ここで出てくるのがバイオコンピュータ技術である。MS1つ1つにマリオン・ウエルチのクローン脳(バイオコンピュータ)をセットし、
  マリオン・ウエルチの思考パターンをダウンロードする。その脳に入力として、被攻撃時の情報を与えれば、出力としてニュータイプの反応を得る事が出来る・・・・・・・・
  人間の魂のコピーに関しては「攻殻機動隊」著:士郎正宗 に詳しい。ここでは、愛玩用アンドロイドを作るために、人間の少女の魂をコピーする。
  これは『ゴーストダビング』と呼ばれる技術で、劇中では被験者の精神が耐えられなくなるため禁止になったとの説明もある。
  これと同様の方法でクルスト博士はマリオン・ウエルチの魂つまり、『ゴースト』をダビングしたのではないだろうか?
  その結果、マリオン・ウエルチが昏睡状態になったのは理由は現状では不明であるが、これは、やはり精神に異常をきたした事によるものであろうか?

  NTをMSの中に住まわせる研究、EXAMシステムは最終的にはクルスト博士の死と、搭載MSの全機破壊をもって終結する。
  だが、クルスト博士の目指したものは何だったのであろうか? それは、私は完全自立兵器であったのではないかと考える。
  パイロット無しでニュータイプ並みの反応速度で敵機を次々撃破してゆく兵器。それがクルスト博士の目指したものだったのであろう。

  
  EXAMシステム搭載機

   イフリート改
    ジオン側で唯一完成したEXAMシステム搭載機。MS−08TX[EXAM]の形式番号が示すとおり、MS−08TX イフリートを元に開発された。
    EXAMシステムは頭部に搭載され、冷却のため頭部は大型化している。パイロットはニムバス・シュターゼン大尉。
    ヒートソードを二本装備しているが射撃兵器は脚部のミサイルポッドしかないという、極端に格闘戦に特化した装備構成であった。
    クルスト博士の奪回任務の際に連邦側のブルーディスティニー1号機と戦闘になり双方とも大破している。

   EXAM搭載型ジム
     陸戦型ジムをベースにシステムを搭載。コンピュータシステムは胴に設置されていたのかは不明だが、外見上の大きな特徴はない。
     システムテスト中にリミッターがはずれ暴走。パイロットは高加速に耐えられず死亡。友軍に襲い掛かったところを撃破される。

   ブルーディスティニー1号機
     陸戦型ジムをベースに開発。リミッターが外れたあともパイロットの意思があれば機体を制御できる事に目をつけた開発陣は、その時期に
     ヨーロッパ地域に展開していた部隊のエースパイロット、先のEXAM搭載型ジムの暴走の際にこれの撃破に成功したユウ・カジマ少尉をパイロットとして選定。
     いくつかの戦場での実戦テストも行っている。ユウ・カジマ少尉の適性からか、リミッター解除後も暴走するような事はなかった。
     クルスト博士奪回のために派遣されてきたニムバス大尉のイフリート改と交戦、双方とも大破している。

   ブルーディスティニー2号機
     ニムバス大尉のクルスト博士奪還作戦は、奪還できない際には殺害という選択肢を与えられており、結果的には博士の殺害を持って終結した。
     博士は最後に2機のシステム搭載型MSを作り上げていた、ブルーディスティニー2号機、3号機である。
     双方とも量産のジムがベースではあるが、ガンダム系のパーツを多く用いて性能的にはRX−78と大差がないものに仕上がっていたようである。
     しかし、2号機はクルスト博士の殺害後、ニムバス大尉が強奪、逃走に使用した。
     カラーリングはニムバス大尉のパーソナルカラーの青色であったのは偶然であろうか。

   ブルーディスティニー3号機
     基本的に兄弟機である2号機と同じ性能である。しかし、博士の死後、そのシステムに疑問を抱いた連邦軍技術陣により、システムの強制カットを含む
     追加システムが搭載された。パイロットは、1号機に引き続きユウ・カジマ少尉。彼は3号機を駆り2号機奪還任務に従事する。
     カラーリングは、白に塗りなおされ、外見的にはRX−78とよく似たものとなった。
     最終的には、星一号作戦のさなか、再びニムバス大尉と交戦し、これを撃破するが、本機も稼動不能になり廃棄される。
     ここに、EXAMシステムを搭載した全てのMSはその短い寿命を終えたのであった。