序論:
アッグガイのモノアイは他のものに比べてきわめて大きい。さらに、複数の区画に分割されているように見える。
これはいったいどういう仕組みなのであろうか?
実は、これは「複眼」のテストを兼ねた装備であり、きわめて挑戦的な機構だったのである。
複眼:
複眼とは昆虫などで小さな目が集まって一つの目のように見えるものを言う。
アッグガイのカメラは多くのカメラが集まって一つの大きな「目」のように見えている。
カメラはあの、あたかもブーメラン状の頭部に縦横に張り巡らされたモノアイレールを自由に移動する事ができるのだ。
だが、基本的に前を向く場合には中央に集まった状態が通常の状態である。
複眼の機能:
カメラが複数あるということは、一時的には大きな視界を得る事ができる。
また、アッグガイはジャブロー攻略のために設計されたMSで、地下基地での活動を前提に作られている。
地下基地で投光機を使用した場合、格好の的になってしまう。その為、ジオン技術陣は以下の条件をクリアするセンサーシステムの
開発を軍部から要求されたのである。
1.暗闇でも敵に気づかれずに近接戦闘に持ち込むことができること。
2.爆発の際の閃光や、敵の投光機にカメラが一時使用不能にはならない事。
3.大きな視界を得られる事
その結果考案されたのが、一つのカメラに複数の機能を持たせるのではなく、単機能のカメラを何種類も複数配置する、
複眼カメラである。これはカメラの一部だけを移動させる事により同時に複数の視点を作る事ができ、暗視カメラが閃光で
麻痺していても、同じ視点で通常カメラが動作すると言う形で、軍部の条件を満たしているように思えた。
さらに、従来のモノアイの欠点であった、単一のカメラによる故障への脆弱性もクリアできている。
複眼式カメラアイはすばらしい機構であるかのように見えた。
複眼の失敗:
結論から言えば複眼式のカメラアイはその機能は机上の空論と言っても良かった。
必要以上に大きいカメラ部はかえって敵に狙われることが多く、どうしても大きくなってしまう頭部はバランスの問題を常にはらんでいた。
また、複数のカメラを同時に運用する事によるメンテナンス性の悪さも問題視された。
しかし、アッグガイ自体が試験開発だけで終り、ジャブロー攻撃自体が棚上げされたのでこのカメラシステム自体は評価の対象にはならなかった。
その後の複眼
しかし、複眼カメラアイの開発陣が次に手をつけたのはMA−04ザクレロである。
宇宙空間で360度が見渡せるカメラアイは、視界という面での優位性を得られると考えた
そこで、再び複眼式カメラアイの登場である。今回は元々大きなMAということで、サイズの問題は
クリアされている。さらに、わざわざ移動させなくても、カメラアイの配置を張り出させることにより
大きな視界を確保する事ができた。しかし複眼式カメラアイのメンテナンス性の悪さは解消できず、
主武装のメガ粒子砲の出力不足ともあいまって、ザクレロは欠陥品として量産されることはなかった。
ここに至って、複眼式カメラアイは完全にアイデア倒れとなってしまったのであった。
以後、複眼式のカメラアイを装備したMS、MAは設計される事はなかった。