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山野正恵 俳句集(これは、毎年 “文芸やいづ”に、投稿し 入選した作品です。)新しいものから
                                           去年、提出するように言われた句、今年、応募します。(2008年)
                                           おって、追加します。(縦書きにしようと思ったのですが・・・いずれ・・)


    





母44歳の時(私小3)の、学級文庫への詩が、見つかりました。(切なくて・・・泣けます)


「努力 」

                       山野まさえ

   青い青い果てしない空

   いつまでたっても雨は降らない

   割れた田んぼに水を汲む

   一つ、二つ、三つ

   三千汲んだら

   ひたひたかかる

   思わず笑いがこみあげてくる


   畝を作って

   一本一本 

   水を汲んでは

   からいもをさす


   一畝一畝

   緑にうまって行く

   百姓でなくては判らぬ苦しみ

   百姓でなくては味わえぬよろこび

 

   鍬を手に汗を流し 

   ふと天を仰ぐ時

   空の青さが目にしみる

   あの青さ

   聖なる色

   今日に生き

   明日にそなえん

  

   外地より引き揚げて早一星霜

   馴れぬ掌を赤く腫らし

   鍬をとり

   土をおこし

   種をまく

   苦しさに

   幾度か泣き

  自信を失いつつも

  今は唯収穫の喜びにひたる

      

   一歩一歩

   けわしき山を登る如く

   つみ重ねし労苦こそ

   努力こそ

   我が心の糧

   土に生き土に死するを

   喜びとせん


お嬢様として育ってきた母にとって、畑仕事がいかに過酷であったことか・・・
私は、娘として・・・・???

そういう事情は、少しも知らずに育ちました。







平成二十年度(九十五歳)

    
「もう、字が書けないんだよ。」と、嘆いていました。
     母の名前での、最後の封書が、市役所から届きました。

 
 
秋霜の すすり泣くような 夜の雨




  みどり・白・好み求めて バラの花



  老年の 古き千草や 春萌える


平成一八年度(九三歳)                  

やっと、五句入選したと。喜んでいました

 

  山すそを 飾り帯なす 石蕗の花          

 

  子供部屋 ピエロ主を待つ 春の宵         

  

  晴れた日の 夕暮れすがし 柿青葉         

  地に落ちて 影黒々と 鯉幟

  野良猫も ぬれて悲しや 霜の宿

平成一七年(九二歳)                   

  今日に生き 明日の惑いや 冬深し         

  渡り行く 九二塚や 春浅し            

  鯉のぼり 吾子と一緒に 年を取り         

 

  走り梅雨 軒端に一羽 迷い鳥

平成一六年度(九一歳)                  

  新春や 卒寿の坂を のぼりつめ          

  御無沙汰と 書くも嬉しき 春便り         

  心して 歩む道の辺 曼珠沙華           

  龍田姫 燃えて見事な 秋を知る        

平成一四年(九〇歳)



   星の降る 静かな夜や 木芽風

 蝉の声 止みて又来る 通り雨

 
柿うるヽ 教会まぶし 白十字

平成十三年(八十九歳)


 
待ちわびし 子等帰り来る 木の芽道

 暗き日の 底冷えこたえ 春こたつ

 さんさんと 朝の陽かゞやき 春深し

平成十二年(八十八歳)


 
 暁の 白き雨降る 木の芽かな

    名も知らぬ 小さき花よ 春の径

    面白き 雲の流れて 夏来る