手のかかるやつ

寒さも緩んだのだろうか。

ガスライターの発火石が届いた。
発火石は、ふた月足らずで、なくなった。ここ一週間は、親指に筋トレを
させながら、100円ガスライターを使っていた。

ライターの底のネジをはずすと、バネが飛び出してくる。その穴へ、発火石を
入れるらしい。
発火石は、5個一組で、ケースに収まっている。ひとつが仁丹ほどの大きさだ。
仁丹など、近頃、見たことない。
親父が若い頃、よく飲んでいた。UFO型のケースに収まったものを、ポケットに
入れていた。

発火石をひとつ、ケースから、はずす。裏側から、爪で押して、表側から、引っ張り出す。
やっと、出てきた石を慎重に摘み、穴の中へ落とす。
バネを入れ、ネジを締める。

やった!白い火花が散った。きれい、花火みたい。     しかし、炎が現れない。
ガス切れだ。ガス補充だ。ライター底部のネジを抜き、ボンベのノズルを挿し込み、
注入する。

できたあ!あー、やっと、できたよう。これで、快適な喫煙ライフを楽しめる。
でも、くたびれた。手のかかるやつだ。一服するべえ。

胸一杯に吸った煙を吐いた時、100円ガスライターで、煙草に火をつけていた自分に気づいた。



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