ハリウッド映画が肉汁・油たっぷりの極厚ビーフステーキだとすると、イギリス映画はスルメって感じがします。それも乾燥しすぎちゃってパサパサになった奴。もちろん、イギリス映画に愛を込めての表現ですよ。

映画といっても星の数ほどありますから一概には言えませんので、あくまで私の私見での話ですが、思うにアメリカの映画は、リアリティーよりもいかに最後のシーンを盛り上げるか、という事に重きを置いている気がします。映画館で最後に観客が皆立ち上がって、拍手しちゃうような、(笑)そんな映画が主流。
だから、主人公が突拍子も無い事件に巻き込まれたり、ありえない偶然が重なって美女とくっついちゃったり。不思議とラッキーなことばかり重なって、最後には、ジャジャーン!!オレ様ヒーロー!!って感じで終わるのです。最後がオレ様ヒーローなら途中に多少の矛盾があっても気にしない気にしない。
それが、イギリス映画だとヘンにリアルなんですよね。赤貧にあえぐ労働階級の中年男性とか、同じく貧乏で苦労する子供とかの話がとっても多い。これがアメリカ映画だったら、逆境を乗り越えて、最後には財を成すとか、とにかくサクセスストーリーに仕立て上げられそうですが、そうならないのがイギリス映画。せいいっぱいがんばってもやっぱりなんかサエない…。そうそううまい話なんかあるわけないじゃん、と冷静です。

私の一番好きなイギリス映画は「The Full Monty」です。もう、ホント大好き!でもこれ、知らない人に説明するのに難しい映画ですよね。「えーっと、職にあぶれたサエないオヤジが、養育費を払うために、更にサエないオヤジたちをさそって男性ストリップをやる話なんだけどねえ〜」……間違ってはないですよね?でも、全然映画のよさが伝わらない。(笑)
Full Monty、見れば見るほどじんわりと好きになっていきます。お先真っ暗な状態の中年が、そろいもそろってなにやってんの…と思うのですが、それがなんだかとってもいとおしい。笑いのツボもすごく高度だと思うんですよね。イギリス流のユーモアがストーリー全体にしみ込んでいます。
見る人に道徳的なものを説くわけでもなく、感動を強要するわけでもなく、単純な笑いだけの映画でもなくて、いったいどんなジャンルになるんだろうなあと考えたのですが、やっぱりそこは、「イギリス映画」っていう枠なんでしょうね。

次に好きなのは、「Green Fingers」。これもいいです。実話を基にした話ですが、抑えたトーンが、見る人それぞれにいろんな事を考えさせてくれる余白を作ってくれている。これはイギリス映画全般に通じると思うのですが、最後まで見せちゃうと皆同じ感想しか持たなくなるところを、一歩手前で余韻を残してエンディングに持っていくので、見る人それぞれ、心に残るものが違ってくるんじゃないでしょうか。

ちょっと違ったトーンでは、ユワン・マクレガーの「Train Spotting」や「Shallow Grave」などもスタイリッシュでかっこいい!と思ったのですが、(ちょっと精神的に追い詰められる感がありますが)ユワンの人気が爆発的になり、アメリカの映画、それもスターウォーズに出てしまったときには「やっちゃった…」とがっかりしました。
あれだけの大ヒット映画に主人公格で出演する事は、それは名誉なことでありましょうが、でもイギリス映画で、もう少しがんばって欲しかった…
ちなみに、俳優で好きなのは、ジョン・ハナです。「Four Weddings And A Funeral」で「ヘンな顔」というインパクトだけだったのですが、「Sliding Door」でホレちゃいました。
イギリスの代表的な俳優では、ヒュー・グラントは抜かせません…が、最近は彼もすっかりアメリカ映画の俳優だよな…と、複雑な気持ち。まあ、ジョン・ハナだって「ハムナプトラ」とか出ちゃってますけど。

なんだか、書き始めたらここではスペースが全然足りない事に気がつきました。「Little Voice」も「Billy Elliot」についても、「Brassed Off!」についても書きたくなってきました。もちろん「Pride And Prejudice」、みたいな正統派についても。また、そのうち新たなスペースを作って頑張りたいと思っています。

そうそう冒頭のスルメのたとえですが、お察しのとおり、「噛めば噛むほど味が出る」。
じっくり味わって見たいですね。

Something About England

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