B&Bに関しては、私は長い事厳しい経験をしてきました。その詳細は「B&B」にて。
でも、友人の紹介でLondonはEalingにあるUrsulaの宿に泊まってからは、これからはずっと、この宿にお世話になろうと思ったものです。
Londonといっても、Zone3。正直なところ、観光やショッピングに便利な場所とはちょっと言いにくいロケーションです。最寄の駅は地下鉄Ealing Commonで、駅を出てから15分ぐらい草原を通る小道を歩いていかなければなりません。
草原を抜けると、閑静な住宅街。余談ですが、イギリスの住宅街って本当に静かですよね。その静かな住宅街を5分ほど歩くと、角にラベンダーが驚くほど大きく花をつけている家があります。そこを左に曲がってすぐがUrsulaのB&B。一見普通のセミデタッチド・ハウスで、家のナンバーをよく見ていかないと見落としてしまいそうな場所です。
初めての彼女のB&Bへの滞在は、一週間でした。それまでも「B&B」にはいくつも泊まってはきていたのですが、それはいわゆる安ホテルをB&Bと名を変えて呼んでいるだけのもの。(Londonではそういうところが殆どですよね)Ursulaのところは、生粋のイギリスの一般家庭の二階部分を開放したものでした。
Cathayで空港に到着したのが朝の5時半。なので、私が着いたのも朝の8時という非常識な時間にもかかわらず、「まだ前のお客さんがいるので、部屋の準備が出来るまでお茶でも飲んでいて」と、居間でお茶とお菓子をいただきました。
お茶をいただいている間、彼女はベッドメイキングだの掃除だので忙しくしていたのですが、数分おきに私のところに顔を出して、「今日はどこに行くの?到着したばかりで疲れているなら寝ていてもいいわよ」「近場を見たいのなら、Ealingのショッピング・センターに連れて行くわよ」などと、こまめに気を遣って話しかけてくれました。
彼女の仕事が一段落し、私も荷物を部屋に運び込んだ後、二人でそのショッピング・センターに行くことになりました。歩いてみると、結構な距離。なのですが、私に合わせて彼女は自転車を押して一緒に歩いていってくれました。
ここまでは、ちょっと親切な人ならよくある話かもしれません。彼女のマメさ、バイタリティー、そして並ならぬ親切さを知るのはこの後から。
ショッピング・センターに着いてからは別行動だったのですが、先に買い物を済ませて帰った彼女は、夕方になって戻った私を待っていて、こう誘ってきてくれたのです。「明日の夜、ひま?地元でコンサートがあるのよ。行かない?」喜んで受けた私は大きなホールでのクラシックコンサートに彼女のツテで安く入場させてもらい、そのコンサート後にはなんと、「コンサートメンバーに友人がいて、打ち上げをやるんだけど、参加しない?」と、私自身はなんの関係も無い打ち上げに参加させてもらったのです。
さらに次の夜「明日は私の友達が、教会でミニコンサートを開くんだけど、興味ある?」とのお誘い。
そのコンサートも大喜びで一緒に行かせてもらいました。
一日あいて次の夜、私が早めに宿に戻ると、「あら、いいタイミングよ!今泊まっているアメリカ人の夫妻が地元のお芝居を見に行くって言うんだけど、よかったら一緒に行く?車で送るわよ」
また一日あけて次の日、「今夜、寿司パーティーをやろうと思うんだけど、どう?」と…
さらにさらに次の日には、「London郊外に、すごくLovelyなちいさな町があるんだけど、友だちが連れて行ってくれるっていうの。一緒に行く?」
こんな調子で、一週間の滞在が、彼女のおかげでとてもとても濃厚なものになったのです。
私はいつも一人旅なので、夜は寂しくすごす事が多かったのですが、彼女のと一緒にいる間は、イベント山盛りで、手紙を書く暇もないほどでした。
ホームステイだとしても、ここまでしてくれるところはないでしょう。
その後も何度か彼女のところには泊まらせてもらったのですが、その度、友人の誕生日パーティーに誘ってくれたり、私のために友人を集めて食事会を開いてくれたり、お芝居にはもちろん、お芝居の裏方ツアー(役者さん自身から、舞台の幕が開くまでの流れを、普段一般客が入れないようなところにまで連れて行ってもらって説明してもらうのです)にまでつれて行ってもらい、(ちなみに、このシアターは、ヒュー・グラントが無名な頃活動していたところだそうです)パブでおごってくれる時もありました。
朝食の時にも「今日はどのへんに行くの?マーケットだったらグリニッジも面白いわよ」「Kew Gardenに行くの?割引券あげる」「駅に行くなら送っていってあげるわよ」などなど…もう、書ききれません。
頻繁に彼女の友人達との集まりにも招待してくれるので、私も顔なじみになっていったほどです。
私にとって、彼女との出会いはとてもラッキーなものでした。
でも、もしこれを読んで彼女のB&Bに泊まろうという人は、私がここに書いた事は「当然受けられるサービス」だなどと思って欲しくはないのです。これらは全て彼女の好意によるものであり、オプションのサービスなどではありません。彼女はいつでも変わらず、誰にでもとても親切でパワーにあふれていると思いますが、その親切を、受けて当然とは思わないでほしいのです。
B&B経営という職業がら、このお礼はチップを奮発するのが普通なのかもしれませんが、私はお金で支払うと、彼女と「他人」になってしまうような気がするので、チップは支払いません。その代わりに滞在最後の日には、ちょっと奮発したワインを彼女にプレゼントする事にしています。そのワインも、いつもすぐ開けて、私にも勧めてくれるのであんまりお礼になっていないかもしれないのですが。
これからも、Londonでは彼女のところに泊めてもらうでしょう。場所が不便でも、私にはそれを補ってありあまる価値のあるB&Bです。