樹木診断TOP


人間は身体の具合が悪くなると病院へ行きます。
いいえ人間だけでなく、最近では犬や猫などペットの病院もそろっていますし、もちろん
牛や馬のお医者さんは古くからいます。
そうしますと[樹木ドクター]も必要となります。
じゅもくの健康診断や治療を行う人たちです。
"患者"となるのは、主に都市周辺部で大気汚染をはじめとする公害に犯されて衰弱した
り、枯死寸前になった樹木たちです。いったいどんな治療方法があるのでしょうか?
別に木を切り刻んだりする大手術を行うわけではありません。
人間の場合ならちょとした外科的手術程度、すなわち腐りかけた部分を削ってコンクリー
トなどの補填材を埋め込んだり、植物の諸機能を活発に働かせる作用のことで最近注
目を集めている《二化鉄イオン》溶液などを、大きな注入器で樹幹にしている例が多く見
かけられる。
患者さんはそうしてまもられなければいけないのです。


皆様のお庭の樹木たち お花たちの 健康状態は大丈夫でしょうか


日本樹木医師会・樹木環境保全ドクター
樹木医師    荒田 富弘
         免許認証 第114号          
E-mail : naruko@izubonsai.com

 樹医ニュース
富山県、杉沢のサワスギ
 
 富山県東部の黒部地域には、標高3000mの立山から日本海へそそぐ黒部川が流れている。
 黒部川は、山地から平野に移る開けた場所で、扇状地という扇形の地形を作り、そこに多くの
 砂礫を堆積させている。
その砂礫のなかでは、黒部川の清涼な地下水が日本海に向けて流れている。
この地下水は扇端とよばれる扇状地の淵の辺りで湧き水となって地上へあらわれる。
この黒部では、日本海に程近い場所で地下水が自噴井として湧き出るのだ。湧き出す場所は
 杉沢と呼ばれ、かっては一帯に広く杉林が分布していた。
この杉林をサワスギと地元のしとは呼ぶ。サワスギは、冬は暖かく、夏は冷たい、一年を通じ
 て一定の温度の地下水が湧くところに生育する。地下水は一般に年間の平均気温と同じ温度
 を保つと言われている。サワスギは黒部の人々が建具などの材木として利用するために伝統
 的に管理されてきた樹樹である。
 この(杉沢のサワスギ)に入ると、湧き水から流れるせせらぎに沿って樹高15m程のスギが
伏条更新をして林立している。低地に自然林としてスギが生育するのは屋久島のヤクスギぐ
 らいで非常に珍しい。また、夏涼しく、冬暖かい林内には暖温帯の植物と冷温帯の植物が入り
 混じる特異な現象が見られる。このサワスギは現在では一箇所約2haしか残っていない。
昭和40年代前半の圃場整備事業で扇端部一帯にのこっていたサワスギは無くなってしまつっ
 たという。現在では天然記念物に指定され、保全が図られている。(杉沢のサワスギ)にはビ
 ジターセンターがあり、歴史、植物、人々との関係が詳しく解説されている。

※伏条更新・・・・親木の枝がやがて根となり、その根から新に幼木が育ってゆく形態を
いう。高山帯などの厳しい環境では、ハイマツなどの植物が種子散布のほかに伏条更新
を行う。



  書籍紹介
『生態系を蘇らせる」  鷲谷いづみ 著
日本放送協会(NHKブックス)227ページ 本体920円 2001年発行
『生態系を蘇らせる」は、様々な開発の下で『生態系」の崩壊が進む今日において、[生
帯系]の管理を平易に解説されている。
本書は、まず生態系の科学的な見方を紹介した後で、鹿と植物と人の関係などの例を
挙げて、生態系のキーワードの一つである「撹乱作用」が説明されている。
樹木管理においても、樹木周辺の環境を把握する方法として一読を薦めたい。
『生帯系』を理解するのにも役立つ書籍である。
『生帯系』の内容は本書をご参考いただきたい。




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