鬼隆和哉 特別編  
〜 遍窟寺 屋根の上にて 〜



鬼隆 「よっ」屋根に着地
鬼隆 「ここに居ると考え込む暇が無くていいっすね〜」
ナナシ 「ま、能天気な連中が揃ってるからな(ごろり」
成志郎 「よいしょう・・・いい月だな」
ナナシ 「よぉ…ああ、良い月だ(すぱ〜」
鬼隆 「いい月ですね〜」見上げ
成志郎 「・・・一つ聞いていいか?」
ナナシ 「ふぅ〜)……何だ?」
成志郎 「(江戸末期の京都の都市伝説:民明書房刊)・・・・この中に、ある修験者・・・となってるが、おそらく退魔師、の話が載ってるんだが・・・これ、お前だな?」
よじよじ「ちょっとこっちで休ませてくださーい…」鼻押さえながら
鬼隆 「? お前どうしたんだ?」
「いえ、ちょっと……(眼そらし」
成志郎 「(薫が登ってくるを見て)・・・ちっ・・続きは、また今度だ・・・・よう、こっちにすわりな〜」
「あ、お邪魔な様なら降りてますよ?」
成志郎 「何、学術的興味の話だ。気にするな」
「いえ、お邪魔しましたー(ぺこり、そそくさ」
ナナシ 「すぱ〜)……詮索好きは好かれんぜ?」
成志郎 「何(鬼隆の方をちらっと見て)・・・こないだの件があったからな・・・・・それでちょいと、な・・・ここまでにしとこう」本を破り捨てつつ
ナナシ 「……ま、人様に語るような過去は持っちゃいないさ(ふぅ〜」
成志郎 「お互いにな(シボッ、カチン)」
成志郎 「鬼隆君も、こんなふうになっちゃダメだぞ。これらは悪い例」情けない顔で
ナナシ 「悪いオトナだな、確かに(苦笑」
鬼隆 「悪い例じゃないです 俺は二人とも凄いと思ってますから」真顔
成志郎 「(すぱー)・・だってさ。どうするよ?」
ナナシ 「見る目が無ぇなぁ…まだ若いって事かね…(しぼっ」
成志郎 「現実の非情さというのは、これから嫌でも思い知るさ(すぱー)」
成志郎 「・・・どうでもいいけど・・・鬼隆君、今日、ウチ、泊まりに来る?」
鬼隆 「へ?(キョトーン)」
成志郎 「うむ。レポートの直しもあるしな・・・」
鬼隆 「う…(汗)」
成志郎 「ウチには、妖怪以外の民俗学の本もあるし・・・」
鬼隆 「うぅ……宜しくお願いします」
成志郎 「・・・うちのカミさんも、君に会ってみたいと言っておるしな・・・あれもお節介だから・・・」
成志郎 「何なら、しばらく泊まり込むか?ん?そうしなさいな」ニューと、近寄りつつ
鬼隆 「了解っす 一旦着替えとか取りに行ってきますね(ん〜…寧子さんに言ってからだなぁ)」
ナナシ 「……結構面倒見が良いんだな(すぱ〜」
成志郎 「・・・・・意外か?」
ナナシ 「いや…そうでもないさ」
成志郎 「・・・正直、寧子君じゃちょっと不安でね・・・その、化け物、もう一度必ず君を狙ってくる(シボッ、カチン)」
鬼隆 「……えぇ そうでしょうね」声に黒い感情がこもっている
成志郎 「それだ。殺意は冷静さを曇らせる。戦いで冷静さを欠けば、そのとき君は死ぬだろう」
鬼隆 「え?」
成志郎 「なにをいってるんだ。やられるぞ。君」さらっと
鬼隆 「………そうでしょうか…」実感は無いらしい
成志郎 「俺には、血反吐をはいて転がる君と、へらへら笑っている相手の姿が見えるな。間違いねえ。一緒にいる寧子ちゃんもやられる」
ナナシ 「…ま、獲物を前にして冷静さを欠いたら確実だな(すぱ〜」
鬼隆 「…………どうすれば…どうすればいいんでしょう…」ギリッと拳握り締め
成志郎 「冷静に、ゆっくりと、時間をかけてやる。確実にな・・・熱くなったら、その時点で負けだ」
鬼隆 「…冷静に……わかりました 絶対に忘れないようにします」
ナナシ 「…頭で判っててもダメだぜ?(すぱ〜」
鬼隆 「えぇ……もう二度と失うのは嫌ですから」
成志郎 「ま、やるなとはいわんさ。『復讐』なんかをして、失った鈴鹿ちゃんが戻るわけではないと、知った風な事を言う者もいるだろう。許すことが大切なんだという者もいる」
鬼隆 「………」
成志郎 「だが、その事を無理矢理忘れて生活するなんて人生は、まっぴらごめんだろうし…その覚悟はできてるだろう」
鬼隆 「忘れるつもりも許すつもりもありません……ただ 復讐のために何かを犠牲にすることだけは…絶対にしたくありません」
成志郎 「『復讐』は、何かを犠牲にするもんじゃない。『復讐』とは、自分の運命への決着をつけるためにある。君の気持ちの問題だ。俺はそう思うぜ」ウィンクしつつ
ナナシ 「…………ま、復讐するんならクールにな(ふぅ〜」
鬼隆 「ありがとうございます………本当にお二人って大人ですよね…」心底感心している
成志郎 「(・・・・いざとなったら、ぶんなぐってとめよう)・・・へ?何か言ったか?」 
鬼隆 「いえ なんでもないですよ」若干焦って答える
ナナシ 「大人ねぇ……(苦笑」
成志郎 「我々、すれているだけのような気がするねえ」
ナナシ 「ひねてるだけだと思うんだがなぁ」
鬼隆 「そんなことないですよ!」
成志郎 「・・・そんなに大人ではないんだなあ・・・こうやって、お節介もやくしなあ(シボッ、カチン)」
ナナシ 「違ぇねえな(しぼっ」
鬼隆 「まあ…自分のことを『俺は大人だから』って言う様な人は信用できないと思いますけど」
成志郎 「いや、僕、子供だし」
鬼隆 「(苦笑)」
ナナシ 「加えて負け犬だしな(すぱ〜」
成志郎 「・・・すべからくな(すぱ〜」
鬼隆 「そんなことないですよ!!」一生懸命否定
成志郎 「(ぽいっと、財布を投げる)・・・・見ろ、全部葵君にやられてしまった。すかんぴんだ。さっきようやくズボンをはいたところだ(すうっと、頬に一筋の涙が)」ダメな大人w
鬼隆 「………一体何があったんすか?(汗)」w
成志郎 「インディアンポーカー」体育座りw
ナナシ 「肝心なとこで勝負に弱そうだしなぁ…ヤツの言ってた通りだぜ(すぱ〜」
鬼隆 「…賭けしたんすか?」
成志郎 「賭けたんだよ・・・ン、誰だ?」
ナナシ 「ああ、昔の知り合いだ」
鬼隆 「? 二人は昔からの知り合いなんですか?」
成志郎 「そうか・・・・・肝心なとこで勝負に弱いんだよ、俺・・・いや、たぶん同じ奴を知ってるんだ」
鬼隆 「ああ なるほど」
ナナシ 「前に偶然会った時に『お前に似てるヤツと今組んでいるぞ』って言われてな……どこが似てるのか知らんが(苦笑」
成志郎 「・・・・・そうか。俺の方がいい男だぞ?」
ナナシ 「ま、そう言う事にしておいてやるか(すぱ〜」
成志郎 「まー、ともかく、・・大事になるまえに、君の気持ちを聞けてよかったよ・・・絶対、冷静さを欠くタイプだと思ったんだ」
鬼隆 「…すいません…昔ッからどうも感情を抑えるのが苦手で(苦笑)」
成志郎 「・・・・とりあえず、相手の出方待ちだな・・・・・必ずくる。それは間違いない」
鬼隆 「………えぇ」
成志郎 「あとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
成志郎 「・・・・・・(すごく沈痛な顔))」
鬼隆 「………」
成志郎 「・・・・・・・・・・・レポートだ・・・・・・・・・・・・・・・」w
鬼隆 「!!!…………はい」絶望のどん底に突き落とされた感じw
成志郎 「・・・・・・・寧子君のを・・・写すか?」w
鬼隆 「いえ……自力で頑張ります(沈痛な面持ち)」w
成志郎 「・・・・そうか・・・・・・茨の道だな〔遠い目」w
鬼隆 「それが…自分の為になりますから(瞳に決意を宿し)」w
成志郎 「・・・・・しょうがない・・・・・・」言いつつ、携帯を取り出す
成志郎 「(とぅぅぅるるるるるるるる)・・・・・・・」寧子ちゃんの携帯に
寧子 「あ、ふぁい……宮ヶ瀬ですけど……」寝起き声w
寧子 「あっ、一条先生!」電話の向こうでがたがたっと音がw
成志郎 「・・・・・・・今、家かい?」
寧子 「はい、今は家に帰って着替えとか準備してたら、いつの間にか寝ちゃってて……」
成志郎 「あ〜・・・今、どこにいるんだ・・・?電車の音が聞こえるな・・・その汽笛は、京阪だな?・・・・・(寧子ちゃんちのそばには京阪は通ってなかったよな・・・)」
寧子 「……えっと、あの……そ、空耳ですよ。あ、TVですTV」w
鬼隆 「?」
成志郎 「まあ、いいや・・・・実は、こないだのレポート、鬼隆君、お題が「京都の四季」だったにも関わらず、酒呑童子の伝説についてかきやがってな・・・どうしようもないんだ」
鬼隆 「…どうしようもないなんて言わなくても(ホロリ)」w
寧子 「き、鬼隆さんってば……(苦笑」w
成志郎 「。。。。京阪・・・まさかとは思うが、鬼隆君ちに泊まりに言ったりしちゃったりしないだろうな〜」冗談でw
寧子 「そそそ、そんな事はないですよ!」大あわてで否定w
鬼隆 成志郎さんから目をそらす鬼隆w
成志郎 「まー、そりゃいいんだ。それで、今日からしばらくウチに泊まって書き上げてもらおうと思ってな・・・・一緒に俺ンちにきて、教えてやってくれないか?」
寧子 「あっ、はい。分かりました。今はお寺ですよね?」
成志郎 「ああ。俺もこれから帰るから。。。『迎えに行ってやるよやるよやるよやるよ〔残響音含む』」w
寧子 「あのぅ、今、えっとその…………」しどろもどろw
成志郎 「ン?どうした』w
寧子 「あ、えっと、隣に鬼隆さんいますか?」w
寧子 「(なんとか鬼隆さんとの話を合わせないと……)」w
ナナシ 「……(じわり」消え去りw
成志郎 「・・・・じゃ、取り合えずむかえにいくから」w
鬼隆 「俺も家帰って着替えとレポートの道具取ってこないとなぁ」w
寧子 「ど、どこへ……あ、ウチの家ですね!?」また電話の向こうでどたどたと騒ぐ音がw
成志郎 「ああ。そりゃそうだ。ほかにどこいくのよ」w

そして、寧子さんの方で、玄関のベルが鳴る!w

寧子 「じゃあ、あの、支度するのでしばらくお待ちください」w
郵便屋さん 「鬼隆さ〜ん、小包ですよ〜」w
寧子 「(電話から顔を離して)あっ、はいー。ちょっとお待ちください」w
成志郎 「・・・・・・・・・・・・・・鬼隆?」
郵便屋さん 「サインをお願いします」w
寧子 「……………そ、空耳ですっ!! あ、ちょっと待ってくださいね」w
成志郎 「・・・・・・・〔ジー〕」視線が鬼隆へw
鬼隆 「……あ 俺ちと着替えとって来ます」瓦を片付け始めるw
成志郎 「いま、もしかして、寧子ちゃんが家にいる?」みんなが一番ききたい今日の山場さヤホーw
鬼隆 「……えぇ 俺がこっち戻ってきてから心配して家に来てくれてます」努めて冷静にw
成志郎 「・・・・そうか。イイトコあるよなあ。じゃあ、迎えに行くのは鬼隆君の家で」さらりとw
鬼隆 「……了解」w
寧子 「先ほど、なにか、妙な事が聞こえたのですが……ウチは、今、家にいますよー、ほんとですよー」w
鬼隆 「よし 片付け終了(手の埃を払いつつ)」
成志郎 「じゃ、迎えに行ってくるわ」w
鬼隆 「あ…俺も乗っけてってもらっていいっすか?…荷物取りに行きたいんで」w
寧子 「(……ど、どうしよう、家に帰った方が良いのかなぁ?;)」w



寧子 「……風が気持ちいいですね」なびく髪を撫でながら
鬼隆 「…ですね」風に当たりながら
鬼隆 「…なんか…心配ばかりかけちゃって申し訳ないです……辛いのは俺だけじゃないってのに(苦笑)」
寧子 「あっ……あの、ウチなら大丈夫ですよ。だからあんまり気に病まないでください」何とか微笑んで
鬼隆 「……ほんとごめん…なんかここのところずっと寧子さんに無理させちゃってるね…」
寧子 「いえいえ、ウチは魔王ですし、平気です」ちょっとガッツポーズとってみたり
鬼隆 「本当に優しいよね…俺 寧子さんのお陰で暗くならずに済んでる…」
寧子 「無芸な魔王のウチでも、鬼隆さんのお役に立てればなによりです。でもウチより皆さんの方が……」
鬼隆 「ん〜…やっぱり…無理してない?」真っ直ぐ見つめて
寧子 「無理も無理じゃないですよ。魔王ってのは、そう言うものです」真っ直ぐに見つめられると、視線を逸らして
鬼隆 「ん〜…それって無理してるって言ってるのと一緒だよ(苦笑)」
寧子 「あっ、そうとも取れますね……」慌てて口を押さえる
鬼隆 「……我慢しすぎるより…泣いちゃった方が楽な時もあるよ…俺もそうだったしね」泣いた時の事を思い出してちょっと照れくさそうに
寧子 「魔王は、悲しんでも、泣いちゃ駄目です。でないと、魔王として立ち行きませんから……」少し声が震えて
鬼隆 「…魔王でも悲しい時は泣いていいんじゃないかな?」
寧子 「だって……だって泣いたら……ま、魔王なのに、ウチは……」声が潤み、目の端に光るものが
鬼隆 「『泣く事も必要だ』…って教えてくれたのは寧子さんだよ?」優しく笑いかけつつ頭に手を置く
寧子 「でも……鬼隆さんやみんなの前じゃ、泣かないって……き、決めてたのに……」涙が頬を伝って落ちていく
鬼隆 「…………」優しく頭を抱きよせる
寧子 「う、ううっ………あぁぁぁぁぁぁぁぁっ…………」鬼隆さんの腕の中で、声を殺して泣きます
鬼隆 「………」背中を優しくポンポンと
寧子 「うぐっ……っ、くっ………」
寧子 「ご、ごめんなさい……ごめんなさい…………」泣きじゃくりながら
鬼隆 「謝らないで…今までずっと俺が助けてもらってたんだから」優しく抱きしめる
寧子 「だって、ウチ……そんな、助けるなんて………」そっと抱きついてしまいます
鬼隆 「………」無言で抱きしめている
寧子 「ありがとう…………」腕の中で、ささやく様に
鬼隆 「…それは…俺の言うべきことだよ」同じくささやくように
寧子 「ううん……いつも、鬼隆さんには……助けられてばかり……」
鬼隆 「俺こそ寧子さんに助けられてばっかりだよ(苦笑)」
鬼隆 腕を解いてすっと一歩ひいて「…またレポートの時には迷惑かけちゃうかもしれないっすね」笑顔で
寧子 「それはいつでも言ってください……、丸写し以外なら手伝いますから」涙を拭って、微笑んで
鬼隆 「…結構遅くなっちゃいましたね 講義もありますしそろそろ帰りましょう」
寧子 「あっ、もうこんな時間……」
寧子 「じゃあ、降りて帰りましょうか」
鬼隆 「ですね」ヒョイっと抱えて飛び降り
寧子 「あっ!?」いきなり抱えられて頬を染め

ナナシ 「ふぅ……(ごろり)……最近有象無象が増えたな…(しぼっ」
鬼隆 「……(スゥスゥ」居眠り中
ナナシ 「…………(こいつも色々大変そうだな」タバコ燻らせつつ
鬼隆 「…!!」跳ね起きる
ナナシ 「………よっ」
鬼隆 「……あ(キョロキョロと周囲見回し安堵のため息)…おはようございます」
ナナシ 「悪い夢でも観たか?(すぱ〜」
鬼隆 「…えぇ…そうみたいです(苦笑)」
ナナシ 「そうか………(ふぅ〜」
鬼隆 「………あの…変な事かもしれないんですけど…聞いてもいいですか?」
ナナシ 「ん?……どうした?」
鬼隆 「……あんまり人と深く関わらない方がいいんですかね」
ナナシ 「関わりたくねぇのか?(すぱ〜」
鬼隆 「……もしまた守れなかったら…って考えると……」俯く
ナナシ 「守りゃ良いじゃねぇか…(ふぅ〜」
鬼隆 「………俺には…守りきれるだけの自信が…無いです」
ナナシ 「……そんなもん誰にだってねぇよ(くくっ」
鬼隆 「え?」
ナナシ 「んな自信持ってる奴はただのバカだぜ(くっくっく」
鬼隆 「…そうなんでしょうか…」
ナナシ 「そう言うもんさ…(すぱ〜」
鬼隆 「…ナナシさんは…守れなかったことって………あるんですか?」遠慮がちに
ナナシ 「……どうだろうな(きゅっ」タバコ揉み消しつつ
鬼隆 「あ…すいません…失礼な事聞いて」
ナナシ 「いいさ……人一人守るのは難しいぜ…簡単だと思ってる奴が多いだろうけどな(しぼっ」
鬼隆 「…俺も…簡単だと思ってました………今思うと思い上がってたんですね『自分の力なら』って…」
ナナシ 「若いうちはそんなもんさ……俺もガキの頃はそう思ってたからな(ふぅ〜」
鬼隆 「……もう絶対に…そんな思い上がりはしないつもりです………もう度とあんな思いはしたくないですから」
ナナシ 「……前に進めるか?(すぱ〜」
鬼隆 「進みます  俺の事を心配してくれる人が居ます…その人に心配をかけずに済むようになるためにも」
「あっ、鬼隆さんとナナシさんなのですー」屋根に登って
ナナシ 「よっ、タヌキか」
鬼隆 「あ やあ」
「下に司さんがいるのです―…けどタヌ君にはよく分からない大変なことになってるのです―」」
ナナシ 「………………鬼隆」
鬼隆 「ええ!」迷わず飛び降りる
「はいなのですー…ひゃぁぁ」手を離し落ちかける
ナナシ 「ごろり)…………男の顔になったな…あいつも…(ふぅ〜」薄く笑いつつ


寧子 「…………」じっと、屋根の上で遠くを見つめ
鬼隆 「よっと」すたっと着地
百鬼夜行 「……ぐるるぅ…………」寧子の足下から湧き出ながら
寧子 「あっ、鬼隆さん……」部下を引っ込める
鬼隆 「あれ? 寧子さん?」
寧子 「ちょっと風に当たってました」
鬼隆 「あ そうだったんすか  いい風ですね〜」座りつつ
寧子 「最近、この子達も出してなかったから、いい風だったんで当たらせてあげようと思って」まだ頭だけ見えてる部下の頭を撫でて
鬼隆 「なるほど〜 そういえばどの位居るんですか?」素朴な疑問
寧子 「(指折り数えて)…………た、沢山、です」
鬼隆 「なるほど」柔らかい笑顔
寧子 釣られて笑顔を向けて
寧子 「数は多すぎて把握出来ないですけど、部下の事を考えるのも魔王の務めです」
鬼隆 「やっぱ優しいっすね」笑いかけたまま
寧子 「ウチと部下は一心別体……正確を期すなら、この子達もウチの一部みたいなものですから」
鬼隆 「なるほど そういうものなんすか」
寧子 「自分の一部みたいなものなのに、頭の中に『自分以外』として声が聞こえるのは困りものですけどね(苦笑」
鬼隆 「あ〜…その気持ちは俺もわかります(苦笑)」
寧子 「(下を見て)あっ……疾く行け」部下を池の方へ
鬼隆 「あ!」
鬼隆 「ちと行って来る!」飛び降り

下の騒ぎを聞きつけ屋根の上から二人が降り…数体の百鬼夜行が残される

百鬼夜行 「……………ぐるる」
百鬼夜行 「……腹が減った……」
百鬼夜行 「あの外道が喰いたいぞぉ………」ぎっ、と街の方を睨みつけて
??? 「(くすくすくす)」
百鬼夜行 「! この臭いはっ!?」
百鬼夜行 「御大将を心底怒らせた、あの外道の臭い……っ!!」

声はどこかに消える

百鬼夜行 「ぐるるるぅぅぅ………!! 喰ってやる、次こそ、一片の肉も残さず、食い尽くしてくれるっ!!」
百鬼夜行 「我等は御大将の怒りを表すもの……骨の髄まで思い知らせてくれる……」

下の騒ぎも一段落して二人が戻ってくる

寧子 「ふぅ…………」
鬼隆 「寧子さん どうかしたの?」
寧子 「ちょっと、頭冷やしたくなって……。あ、今日は昼間暑かったですし」
鬼隆 「あぁ たしかに今日は暑かったっすね〜」
寧子 「(良かった、気がついてないや……)」
鬼隆 「?」
寧子 「? どうかしました?」
鬼隆 「いや なんか考え込んでるな〜って」
寧子 「あ、いえ……部下達とのコミュニケーションとか色々と考えてたり」
梧道 「・・・・・・仲良さそうで良い感じだな、お二人さん(ニヤニヤ)」人の悪そうな笑顔でいつの間にか背後に浮いている
鬼隆 「うお!?」盛大に焦り
寧子 「うあっ!?」
鬼隆 「ご ご 梧道さん どうしたんすか(汗)」何故か焦っている
寧子 「ゴドーさんってば……驚かさないでくださいよぅ……(汗」
梧道 「ふむ、邪魔だったか? 済まんかったな(にへら〜)」
鬼隆 「いや そ そんなことは(汗)」
寧子 「じゃ、邪魔とかそう言うのはないですよー。あ、あの、ゴドーさんも夜風に当たりに?」しどろもどろに
梧道 「・・・・・・どうやら、お前さん達は大丈夫そうだな。司君も見通しは暗いが、立ち直ろうとしてるし、新堂さんも過去を振り切った、か」ふと穏やかな顔で
鬼隆 「……その節は…お世話になりました」スッと真顔に戻って深くお辞儀を
寧子 「色々とお気遣い頂いてしまって……」姿勢を正して、頭を下げます
梧道 「あぁ、夜風に吹かれるのも偶には良いかと思ってね・・・・・・気にすんな。私は私の目的の為にやったに過ぎん。第一、旅行に出ててロクに何もしてないだろうに(しゅぼっ)」くつくつと笑いながら
鬼隆 「……ありがとうございます」
梧道 「気にすんな・・・・・・君の『選択』は聞かせてもらったしな。中々に興味深かった。手を貸した甲斐があったというものさ」
鬼隆 「なんか…皆に迷惑かけちゃったみたいで(苦笑)」
寧子 「ウチは迷惑とは思ってませんよ」
梧道 「それよりも、だ・・・一つ聞いても良いか?」声を潜めて
鬼隆 「え?いいですけど」
寧子 「? なんでしょうか」
梧道 「お前さん達・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キスぐらいはもうやったのか?(にやにや)」悪い笑顔で
鬼隆 「(ボッと赤面)な…な…な…何を!?」
寧子 「……………」真っ赤になって、わたわた両手を振って
梧道 「ふむ、その調子じゃ、まだみたいだな・・・・・・ま、続きを楽しむためにも、全員で生き残るとするかね(ニヤリ)」
鬼隆 「えぇ…俺は死にませんし 死なせません」キッパリと
鬼隆 「……今度こそは(小声)」
寧子 「はい、勿論ですよ」しっかりとした声で
梧道 「ふっ・・・いい返事だ・・・・・・さて、それじゃお邪魔虫は消えるとしますかね(ウシシシシシ)」冗談めかして
鬼隆 「ど どういう意味ですかッ!!」再びボッと赤面
寧子 「あ、う……」真っ赤なままうつむく
梧道 「いやぁ〜、若いってすんばらしいねぇ〜・・・それじゃ、また明日。おやすみ〜(ぶつぶつぶつ・・・ふっ)」転移、闇夜に消える
寧子 「お休みなさい、お気を付けて」
鬼隆 「おやすみなさいっす」
鬼隆 「あ〜…えっと…俺はもうちょっと風に当たってようかと思いますけど寧子さんはどうします?」
寧子 「……ご迷惑でなければ、ウチもご一緒して良いですか? ウチももう少し風に当たってたい気分なので」
鬼隆 「はい 全然迷惑じゃないっすよ」
寧子 「よかった…」鬼隆さんに微笑む
鬼隆 「………」ぼ〜っと風に当たりながら景色眺め
寧子 「…………」遠くに目をやりつつ、手櫛でなびく髪を直して
鬼隆 「……今 何考えてます?」
寧子 「心地よいなぁ……って、考えてましたです」
鬼隆 「こういう時間っていいですよね〜…」
寧子 「ええ……昔はよく景色が良い高台に行ったのですけど、この体になってからは、あまり行ってなくて」
鬼隆 「そういえば寧子さんは昔の妖怪の時の記憶があるんでしたっけ」
寧子 「はい。今で言う江戸中期から先の大戦中まで、生きてましたから」
寧子 「大戦末期に消し飛んで、今はこの体になりましたけどね」
鬼隆 「そうなんだ……その記憶はずっと?」
寧子 「数え年じゃなくて、満で六つになるまでは、自分が魔王だって事は忘れてましたです。ショックを受けた上で、ウチの本当の名前を呼ばれて、やっと思い出しましたけど」
鬼隆 「6歳かぁ……戸惑わなかった?」
寧子 「(苦笑して)戸惑うどころか……下手に魔王としての頭を得たものですから、お恥ずかしい話――」一旦言葉を切る
鬼隆 「……」静かに聞いている
寧子 「自分が憎くて憎くて、世を儚みかけました…………」視線を景色に戻して
寧子 「悲しさや空しさ、無力感で止められなかったんですよ。頭が冴えすぎて」
鬼隆 「そっか…寧子さんも力に目覚めて辛い思いしたんだ…」スッと遠い目をして
寧子 「…………」顔を鬼隆さんの方へ
鬼隆 「俺も……中学の時この力に目覚めて…その姿を友達に見られた事があるんだ」
寧子 「え………」言葉を失って
鬼隆 「あの時…自分が人間じゃなかったってことより……友達の恐れの籠もった目がショックでさ…」
鬼隆 「自分の血が…自分の生まれが憎くてしょうがなかったんだ(苦笑)」
寧子 「そんな事が……」じっと鬼隆さんを見つめます
鬼隆 「ただ…そう生まれちゃったものはしょうがないしって開き直ったんだ それもひっくるめて俺なんだからって…まあやっぱ時間はかかったけど(苦笑)」
寧子 「時間が一番の解決になる事、ありますよね……」
鬼隆 「っとごめん 嫌な事思い出させちゃって(苦笑)」
寧子 「ウチは魔王としても人としても半端な自分が嫌でした。でも、ここに来る様になってから、少しは変わったと自分で思います」
寧子 「いえいえ、お気になさらずに」静かな微笑みを向け
鬼隆 「まあ…人間とか妖怪とか関係なく寧子さんは寧子さんなんだから半端とかって思うことは無いんじゃないかな?」
鬼隆 「それを言ったら学校の友達からしたら俺なんて『化け物』でしかないんだしさ」笑顔を浮かべながら
寧子 「ウチはウチ――。! 鬼隆さんは化け物なんかじゃありません!」
鬼隆 「いや 俺は生粋の妖怪だから…普通の人間からしたらね」
寧子 「…………」
鬼隆 「だけど『化け物』であっても俺は俺だし その力で出来る事ってのもあるし 今は自分の力と姿を否定するつもりはないよ…やっぱ姿は好きになれないけど(苦笑)」
寧子 「これからどんなことがあっても、否定しちゃ、駄目ですよ。ご自分で言われた事ですけど――鬼隆さんは鬼隆さんなのですから」
鬼隆 「うん だから寧子さんも自分が半端だからとか思う必要は無いと思うよ」優しく笑いかける
寧子 「はい……鬼隆さんにそう言って貰えると、すごく嬉しいです」
寧子 「ありがとうございます」
鬼隆 「っと…なんか偉そうな事言っちゃって(苦笑)」
寧子 「いえいえ、偉そうとかそういうのはないですよ」穏やかに笑って
鬼隆 「さ〜て」
鬼隆 「あ!…明日一限ありませんでしたっけ?(汗)」
寧子 「? ……あ!!」
寧子 「この魔王の記憶が間違ってなければ、鬼隆さんもウチも、しっかり一限から講義あったはず(汗」
鬼隆 「…急いで帰ろう(汗)」
寧子 「はい、そうしましょう(汗」
鬼隆 ひょいっと寧子さん抱えて飛び降り