『鬼隆草子』

 

鬼隆:「この家ってこんなに広かったんだなぁ……」自宅のリビングでごろ寝している

寧子:「鬼隆さん……」しばらく玄関前で立ちつくした後、インターホンを押します

鬼隆:「?…誰だろう はい」ドア開けて出てきます

寧子:「こんにちは、鬼隆さん」手には大きな荷物抱えて

鬼隆:「寧子さん どうしたんですか?」

寧子:「えっと、これ、あの、買ってきました……」食べ物とか入った買い物袋を渡します

鬼隆:「あ どうも」

寧子:「ウチ、最近料理とかするようになったから……っと……」しどろもどろに

鬼隆:「?」よくわかってない

寧子:「だ、だから、鬼隆さんに料理とか作りたいので、入れて貰えませんか……?」

鬼隆:「え?別に構わないですけど」特に気にした様子も無いですね

寧子:「あっ、じゃあお邪魔します」料理を作りに来ただけにしては、大きな荷物を玄関に入れて

鬼隆:「あ どうぞ」中に案内しますね

寧子:では、ちょっと重そうに荷物を抱えて案内されますです。

鬼隆:「どうぞ適当に使って下さい」案内した後それだけ言って自分の部屋へ

寧子:「ありがとうございます……」鬼隆さんに頭を下げ、その下で唇をかみしめて 鬼隆さんが上に行ったら、料理の支度始めます。

寧子:「(開けっ放しの扉をノックして)あのぅ……鬼隆さんって、食べられないものありますか?」部屋には入らずに

鬼隆:「え?…いや別に」淡々としてますね

寧子:「よかった。じゃあ、支度するので台所お借りしますね(ウチ、何言ってるのよ……力になりたいのに……」力ない微笑みを残して、台所に戻って料理を始めます

鬼隆:「あ……はい どうぞ」その表情を見てちょっと後悔

 

大輔:「……」意を決して、ドアの呼び鈴を鳴らす

鬼隆:「ん?…誰だ?」降りてきてガチャッとドアをあけてくれます

大輔:「……和兄ちゃん」

鬼隆:「ああ 大輔か…どうかしたのか?」明らかに普段と声のトーンが違います

大輔:「……俺と、勝負して欲しいんだ」少し息を呑みつつ

鬼隆:「あ?…なにを突然」ぎこちなく笑みを浮かべようとします

大輔:「俺のこと、鍛えてくれるって約束したじゃん」

大輔:「約束、破らないよな……和兄ちゃん」

鬼隆:「………今の俺に…お前を鍛えるなんてできないさ…悪いが蒼矢に頼んでくれ」自嘲気味に笑います

大輔:「

大輔:「なんだよ、それ……」

大輔:「大切なものはちゃんと守れって、そう言ったのは和兄ちゃんだろ!?

大輔:「だから俺は、和兄ちゃんに教えて欲しいんだよ!」

鬼隆:「………俺には……俺にはできなかったんだよ!!」物凄く悔しそうに血が滲むくらい拳を握り締めて

大輔:「……聞いたよ」

鬼隆:「………」

大輔:「お菊さんから、聞いたんだ……」

大輔:「……和兄ちゃんとは違うけど……俺も……父さんと母さんがいないから、さ」

鬼隆:「……あ」

大輔:「だから……上手くいえないけど」

鬼隆:「………悪い」すっと目を逸らします

大輔:「違うよ! 俺は謝って欲しいんじゃないっ!

大輔:「俺は……和兄ちゃんに、前を見ていてほしいんだ!

鬼隆:「……俺は……そんなに強く…ないんだ」目を合わせることが出来ずそらしたままで小さく

大輔:「泣いてもいいじゃん! 周りにぶつけたっていいよ! けど……けど、今の和兄ちゃんみたいに辛さを誤魔化さないでほしいだけだよ!」涙目に

大輔:「なんのために俺たちが……遍窟寺のみんながいるのさ!? 仲間だろ!?

鬼隆:「!!……けどな……だけどな!! 俺は何も出来なかった…それどころかあいつの様子に気がついてすらやれなかったんだ!!

大輔:「…………」じっと見つめている

鬼隆:「俺は……自分の力で大抵のことはどうにかなると…どうにかできるって思ってたんだ…だけど…たった一人の女の子すら守ってやれなかったんだ…」拳を握り締めて俯く

大輔:「守ってたよ……ちゃんと。和兄ちゃんは、鈴鹿姉ちゃんを守ってた。そりゃ……こんなことになったけど」

大輔:「でも、だからって鈴鹿姉ちゃんが和兄ちゃんをそのことで恨むはずないよ」

鬼隆:「何を言ったって結果は変わらないんだよ!」咄嗟に怒鳴りつけてしまう

大輔:「……」びくっと身体をすくませて

鬼隆:「……あ………悪い」ふと冷静さを取り戻して身を翻す

大輔:「(少しぎこちなく笑って)いいよ、和兄ちゃんが我慢してる方が、ずっとよくない」

大輔:「でも、良かった……和兄ちゃんもちゃんと分かってるんだ」

鬼隆:「……」どうかえしていいかわからず無言で佇んでいる

大輔:「鈴鹿姉ちゃんは帰ってこないってこと……」顔を伏せて

鬼隆:「……ああ…」

大輔:「……でも……だから、和兄ちゃんには生きてほしいよ。今度こそ、大切な何かをなくさないように」

鬼隆:「………」

大輔:「(涙を拭いながら)……へへ、駄目だな、俺。みんなみたいに上手く言えないや」

鬼隆:「………俺も……頭ではわかってんだ……」

鬼隆:「悪い…心配かけたな……俺は大丈夫だ…だからもうちょっとだけ時間をくれ…必ず寺に行くからさ」ぎこちない笑みを浮かべて

大輔:「うん……」

大輔:「……俺、待ってる。そしたら、ちゃんと稽古つけてくれよな」

鬼隆:「ああ…わかった」

 

成志郎:「(ききききききき〜〜!!!!!!)」

大輔:「?」帰ろうとしたところで動きが止まる

鬼隆:「ん?」

成志郎:「・・・よう、鬼隆君」

鬼隆:「あ…成志郎さん…」

サキ:「…くらくらするです…。 ……鬼隆さん、こんにちわ、です…。」

鬼隆:「サキさんも……ども」

成志郎:「ちょっと、会わせたい人がいてね・・・・少しつきあえよ」>鬼隆

鬼隆:「え?」

成志郎:「乗りな」

大輔:「あ、じゃあ俺帰らないと……またな!」逃げるように駆けていく

サキ:「…私も…、鬼隆さんにお話がありましたが…私は、待っていたほうがよいみたいですね…。御家に…、お邪魔しますです。」w

寧子:「おや……?」エプロンしたまま玄関に出てきて

鬼隆:「……えぇ…わかりました」

成志郎:「(シボッ、カチン)・・・おじゃまだったかな。。。」寧子の方を見つつ

寧子:「あ、サキさんと一条せ……成志郎さん。どうされました?」

サキ:「あ…、寧子さん…。こんにちわです。」

鬼隆:「あ 寧子さんちょっと俺出てきます……ご飯楽しみにしてます」ぎこちない笑みを浮かべて

寧子:「あ、分かりました。お気を付けて……」こっちも何とか微笑みを返す

成志郎:「よし・・・では、出すぞ」

 

車は伏見にある あるお寺の墓地に

 

成志郎:「(お墓の一つのまえで手を合わせつつ)・・・・彼女に、会わそうと思ってなあ」

鬼隆:「(手を合わせつつ)……え?」

成志郎:「昔な。俺にも恋人がいたんだよ・・・・今のカミさんじゃないぜ」

鬼隆:「……恋人…ですか」お墓を眺めつつ

成志郎:「ああ・・・・今は、ここに眠ってる。俺が下手をウったせいでな、彼女、死んだんだ」

鬼隆:「…成志郎さんも……なんですか」

成志郎:「ああ。俺も、女一人守れないオトコさ」

成志郎:「まだ、彼女が生きてた頃は、けんかばかりしていた。この野郎とは言ったが、好きだといったことは一度もなかった」

鬼隆:「……成志郎さんは……なんで前を向いていられるんですか?」

成志郎:「・・・今になってな、思うんだよ。彼女が何を望んでいたのか・・・荒っぽいが、優しい女だったからな。みんなが幸せに暮らせることを望んでいた」

鬼隆:「…あいつが…望んでいたこと……」言葉を噛み締めるように小さく呟く

成志郎:「・・死んでいったものたちの遺志を継いでいくことが、残されたモノの使命だと、思わないか?」

成志郎:「それに・・・一つ、確認をしたい」

鬼隆:「……?」

成志郎:「お前、鈴鹿ちゃんから逃げ回っていたように見えるが、彼女のことをどう思ってた?」

鬼隆:「…どう?」

成志郎:「鈍い奴だなあ・・・彼女が好きだったのかどうか聞いてるんだよ!?」

鬼隆:「好きだったかどうかは…正直よくわからないです…でも…すごく大切だったのは確かです」はっきりと

成志郎:「(シボッ、カチン)・・・彼女は、56年で戻ってくるらしい・・・何もかも忘れて、別人として・・・。そして、お前は許嫁の座から降ろされた。ドジなオトコだ」

成志郎:「だが、そりゃ、みんな他人の話だ。明日はどうなるか、誰にもわからん。つまり、お前は『やり直すチャンス』は残ってる。俺と違って、すべてを失ったわけではない」

鬼隆:「…えぇ…」

成志郎:「(にやり)。。。。ふて腐れるのはよせよ、和哉。希望を持て。信じなくては、明日は手に入らない・・・すべてを賭けるなら、放り捨てるんじゃない、取り戻す方に賭けるんだ。それが、君の義務だ」

鬼隆:「…そうですね もう『鈴鹿』に会う事は出来ないですけど…もう…明日を拒絶する事はしません」はっきりと成志郎さんを見据えて

成志郎:「バーカ」

成志郎:「その、鈴鹿に会うことができないってのが、よくないんだ。命を賭けて願うんだ。もう一度、『会える』と」車の鍵を投げつつ

鬼隆:「さっき……弟分にまで言われちゃいましたからね(苦笑)」

成志郎:「弟分に説教されるようなチック(ヒヨッコ)のことはもう知らん。一人で帰れっ

鬼隆:「(苦笑)………ありがとうございました」深くお辞儀を

成志郎:「・・・・運命は、変えられるぞ。鬼隆君」背中を向けたまま

 

鬼隆:「……皆に…心配かけちまったなぁ 急いで帰らないと(苦笑)」成志郎さんが去った後焦って帰宅

サキ:「あ…。鬼隆さん…。おかえり、なさい…。」

鬼隆:「もどりました」出て行った時とは違い声に張りがある

サキ:「……元気に、なられたみたいです。…よかったです。」

鬼隆:「えぇ 俺はもう大丈夫です」

寧子:「おかえりなさい、鬼隆さん……」

鬼隆:「寧子さん ごめん 心配かけちゃったね」いつもの笑みで

寧子:「いえいえ、お気になさらずに……」今度は送った時とは違う微笑みを

鬼隆:「なんか俺 皆に心配かけちゃったみたいですね(苦笑)」

サキ:「……そんな事はないですよ。苦しい時は助け合うのがお友達っていうんです(にっこり)」

寧子:「ウチらは、誰も彼も完全じゃない。魔王として生まれたウチもです。だから、助け合って生きて行かなきゃですよ」

鬼隆:「えぇ そうっすね……あれ?…なんか良い匂いしません?」

寧子:「あ、ご飯出来てますけど、もう食べます?」

鬼隆:「あ いただきます…ここのところあんまり飯食ってなかったんで(苦笑)」

寧子:「えっと、習い始めだから、そんなに美味しくないかもですけど……」うつむいて恥ずかしそうに

サキ:「…ふみ、お料理が冷めるといけませんからね。……あの、鬼隆さん、お食事が終わったら私もお話があるです。」

鬼隆:「え? えぇ わかりました」

寧子:「あっ、サキさんも食べますよね?」勿論ちゃんと作り済み

サキ:「……良いんですか?」

寧子:「ええ、もちろんです」微笑んで頷きます

サキ:「…ありがとうございます。」微笑返す

寧子:「では、お箸とお皿出しますねー」いそいそと支度最終段階

鬼隆:「あ 手伝いますよ」テキパキと手伝い

サキ:とりあえずお手伝い

サキ:「……じゃあ、頂きますです。」

寧子:「では頂きます」お箸持って一礼。でもお二人が食べるまで手を付けない

鬼隆:「(手を合わせて)いただきます」

サキ:いつもとは違い静かに食べている

鬼隆:「(もぐもぐ)美味いっす まじで」

サキ:「美味しいです♪」

寧子:「(どうかなぁ……?)あ、良かった……」ほっと胸をなで下ろして

鬼隆:「習い始めたばかりだって言ってましたけど…十分な腕だと思いますよ?」パクパクと食べつつ

寧子:「えっ……あの、褒めても芋羊羹くらいしか出ませんよ……」褒められて頬を少し染め

サキ:「………。」そんな二人を見て穏やかに微笑んでいる

新堂:「(ききき〜〜〜〜〜〜っ!、ずさ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!)」鬼隆家玄関前

鬼隆:「?」音を聞きつけ

寧子:「? おや?」

サキ:「…ふみ、自転車です…?」

寧子:「自転車となると……」立ち上がって玄関へ

新堂:「はぁ…はぁ…………(ぴ〜んぽ〜ん)」

サキ:「あ、いえ、私が応対しますよ。」

寧子:「あっ、済みません、サキさん」

鬼隆:「あ 俺出ますよ」

新堂:「鬼隆さん!居ますか!!出てきてください!!

鬼隆:「!?」ダッシュで出て行く

サキ:「…ふみ、新堂さんです…?」出てゆく鬼隆さんの背中を見送って

鬼隆:「なんかあったのか!?」焦って出る

寧子:「あの声は、そうですねぇ……」

新堂:「………………はぁ、心配して損したみたいですね」様子を見て一気に脱力

鬼隆:「……え?」状況が理解できてない

新堂:「その様子を見ると、大丈夫そうですね……では、私はこれでっ!!」チャリに乗って去っていく

寧子:「…………自転車の音、遠ざかってますね」台所でw

サキ:「…私は聞いてないです。………耳がよいのは…、時々嫌になります(微苦笑)」

鬼隆:「…えっと…とりあえず片付けちゃいますね」戻ってきて片付け始め

寧子:「あ、支度したのはウチですから、ウチが片づけますよ」

サキ:「あ、鬼隆さんは休んでてくださいです。ここは私たちがかたずけるです。」

鬼隆:「いや そういうわけにも…」

サキ:「まあまあ、たまにはゆっくりしてくださいです♪」鬼隆さんの方に手を置いて無理やり座らせる

鬼隆:「あ…んじゃあ お言葉に甘えさせていただきます(苦笑)」大人しくすわってます

寧子:「あの、サキさん、鬼隆さんにお話があるのでは?」サキさんには聞こえるくらい小声で

サキ:「……ここ、お願いしてもいいですか?」同じく小声で

寧子:「はい。しばらく洗い物してますから」頷きつつ

サキ:「お願いします…。」

サキ:「……鬼隆さん…、私、鬼隆さんに渡さなきゃいけないものがあるです。」

鬼隆:「え?」

サキ:「…これです。」 そういってサキが取り出すのは丁寧に折りたたまれた女性もののエプロン

鬼隆:「…これは…」

サキ:「……私の所で鈴鹿さんがお手伝いしてくれた時に使っていたものです。………ずっと、私の所に残っていたです。」

サキ:「……これは…、鬼隆さんに渡さなきゃならないと思ったです…。」

鬼隆:「サキさん……ありがとうございます」ペコリと頭を下げます

サキ:「…いえ…。」ゆっくりと首を横に振って

サキ:「……私は、今までずっと鈴鹿さんに助けてきてもらったです。……それなのに…、何もお返しできないまま…。」

鬼隆:「いや…あいつはサキさんを尊敬してたみたいですよ サキさんの所で手伝いを始めて自分も獣医になると決めたみたいですから」

サキ:「…ねぇ、鬼隆さん? 迷惑じゃなかったら…、でいいです。…もし、何かあれば私にもお手伝いさせてください…。私には…、それぐらいしか鈴鹿さんにして上げられる事がない…。」

サキ:「……そう…、ですか。」深く静かに息を吐く

鬼隆:「きっとサキさんが今までどおり動物達を助けるのが鈴鹿が一番喜ぶ事だと思います…少なくとも俺はそう思います」

サキ:「……そう、かもしれませんね…。でも……、私の心が軋むんです…。」

サキ:「……こんな気持ちは…、初めてなんです…。」

サキ:「………すいません、勝手にぺらぺらしゃべってしまって…。」

鬼隆:「いや…こっちこそすいません」

サキ:「……いえ…。」

サキ:「……今日は…、ここで失礼しますね。…突然押しかけてお邪魔しましたです…。」(にっこり)

鬼隆:「いえ…サキさんの方こそ大丈夫ですか?」

サキ:「……どういう…、ことですか? 私は大丈夫ですよ?」笑顔のまま

鬼隆:「いや…なんか…さっきまでの俺と同じように見えたんで」

サキ:「………そんなことは…、ないです、よ…?」 そういって笑顔を見せるが…、そこには笑顔が残っていなくて。目尻いっぱいに涙が溢れていて

サキ:「…あれ…、あれれ…、私…、泣いてる…?」

鬼隆:「…サキさん…我慢しない方がいいっすよ……俺もさっき…大輔に言われるまでは出来なかった事ですけど(苦笑)」

サキ:「……だ、駄目ですよぅ…。鬼隆さんは泣いていないのに…、私が泣くなんて駄目ですよぅ…。。」ぺたんと座り込んで。それでも涙は止まらなくて。

サキ:「………な、泣かないつもりだったのに…、どうして…、どうして…。」

鬼隆:「無理をするのは良くないですよ…」ハンカチを渡しつつ

サキ:「…ごめんなさいです…。 私、どうしたらいいか…、わかんないです…。」

サキ:「…………………。」貸してもらったハンカチを顔に当て言葉も無く涙を流し続ける

鬼隆:「……」どうしていいかわからず途方にくれている

 

ぴんぽーん

 

サキ:「…あ、お客さんです…。」ようやく泣き止んだ

寧子:「おや……?」手を拭いて玄関の方へ

蒼矢:「………嘲笑いに来てやったら愁嘆場か。貴様は時たま僕の予想の斜め上を行ってくれるな」普段の無表情で

樹:「ごめんくださいなのですー」

サキ:「………蒼矢さんに…、タヌ君?」

鬼隆:「蒼矢に…タヌ君」

寧子:「蒼矢さんとタヌ君……どうしたのですか?」

蒼矢:「言った通り。鬼隆を嘲笑うつもりでわざわざ来たのだが……」鬼隆君の方見て

サキ:「……鬼隆さんに何を言うんですか…? 言葉によっては蒼矢さんといえども、怒るですよ…?」ゆらり、と立ち上がる

鬼隆:「嘲笑いに…か…まあ残念ながら俺たちの弟分のお陰で…な」笑顔を浮かべつつ

蒼矢:「……そのようだ。生き腐れから半死半生位にはなっていたか。後は時間の問題だな」微笑浮かべ

サキ:「……鬼隆…、さん?」

サキ:「…すいません、寧子さん。後の事はお願いできますか…? このまま私が居てもお邪魔になるだけのようですし…。」

蒼矢:「………狸の用が済んだら出たほうがいいな…僕たちは邪魔だ」

寧子:「あ、お邪魔では無いですけど……はい、分かりました」

樹:「綾おねーさんから…伝言を預かってきたのです―」

樹:「でも…タヌ君、メモを忘れたのですー(半泣」

サキ:「……あらあら。」撫で撫でするw>タヌ君

寧子:「あらら……泣いちゃ駄目よ」タヌ君の頭撫でて

鬼隆:「ん? 大丈夫だよ…綾先生に電話してみよう?」タヌ君に笑いかけながら

樹:「そうなのですか?(喜」

鬼隆:「うん 大丈夫」綾先生の携帯にかける

綾:「…はい、もしもし…法田です…って、鬼隆君!?(汗)」

鬼隆:「えぇ鬼隆です 今タヌ君が家に来たんですけどメモを忘れちゃったみたいで…伝言ってなんですか?」

綾:「…えーっと…なんていえばいいんだろう……後で、夜の公園に来てくれないかな…」

鬼隆:「え?え〜っとどうしたんですか?」

綾:「公園でなければ…すぐそばの喫茶店でも良いわよ?」

鬼隆:「えぇ 片付け終わってからでよければ…タヌ君送っていくのはその時でいいですか?」

綾:「ええ、それでお願いするわ」

鬼隆:「(片付け終わらせて)タヌ君 一緒に綾先生の所行こう」タヌ君と寧子さん連れて静かに外へ

樹:「行くのです―」

寧子:「ですね」エプロン取って、鬼隆さんと一緒に送っていきます

サキ:「…ふみ、結局、鬼隆さんのお世話をするどころか私がお世話をされちゃったです…。」

蒼矢:「………泣き足りたか?」目尻拭ってみよう

サキ:「あ……。ありがとうございます。 もう、大丈夫です。」

蒼矢:「………黒兎、先に言っておくが…充分でないのに耐えようというのなら」

サキ:「…蒼矢さんはずるいです。……私にだって少しは強がらせてください…。」僅かに声を震わせて

蒼矢:「………却下だ。溜め込まれて後で問題になっては困る」その様子見て嘆息して抱き寄せ

サキ:「……ぁぁぁぁぁぁぁぁ………。」再び泣き崩れます

蒼矢:「………」背中叩いて

蒼矢:「………貴様が帰るまでには戻る…泣くところを見られたくは有るまい?」鬼隆君にのみ聞える声で

鬼隆:「……悪い」同じく蒼矢にのみ聞こえるように

サキ:「…鈴鹿さん……………。」泣き続けている

蒼矢:「………耐え続けようとするからだ…阿呆」小声で慈しむように呟いてぽんぽん

サキ:「…ふみぃ……。」 と、言うあたりでフェードアウト

蒼矢:ではこちらも

 

綾:「…(どうなのかな)」キィキィとブランコが音を立ててる

鬼隆:「あ 居た 綾先生 すいません遅くなりました」

寧子:「あ、ウチは向こうにいますね」ふらっと話が聞こえないくらいまで離れます

綾:「タヌ君おかえりー…鬼隆君、ごめんねー」と言いながら…じっと目を見てる

鬼隆:「いや別に大したことじゃないですよ」目には強い意志の光を宿している

綾:「…大丈夫そうね…」

鬼隆:「?」

綾:「もし…(辛かったら…何とかしようと思ったんだけど…)」

綾:「なんでもない、気にしないで」

鬼隆:「あ……すいません 心配かけちゃったみたいっすね……もう大丈夫です」はっきりと目を見て

綾:「最近「鬼隆さんがさびしそうなのです―」ってばっかり言ってるから…ねータヌ君」タヌ君の頭を抑えて

鬼隆:「あ…ごめんな タヌ君心配かけちゃって」やさしく頭なで

樹:「さびしかったのです―…(ぐしゅぐしゅ)」

鬼隆:「それじゃあ明日お寺で遊ぼうな?」頭撫でながら

樹:「タヌ君何をすれば良いのかわかんなかったのです―」

樹:「本いっぱい読んでも、こうすれば良いって書いてなかったのです―(泣」

鬼隆:「うん…ありがとう」しゃがみこんで目線をあわせて優しく笑いかける

樹:「(ひっくひっく)…行っちゃ駄目なのですー」服をぎゅっと掴む

鬼隆:「大丈夫 俺はいつも通りだから…ね?」優しく頭撫で

樹:「…タヌ君、なんでもするのです―…いい子にするのです―…お手伝いもするのです―…」ちっちゃい声で呟く

鬼隆:「ありがとう…」小さな声で呟く

綾:「…ごめんね…今日…タヌ君泊めてくれない…コレ、多分帰りそうにないから…」

鬼隆:「いいっすよ」笑顔でタヌ君抱き上げ

綾:「じゃぁ、お願いねー」

寧子:「あ……タヌ君、帰らなくて大丈夫なの?」戻ってきたら、二人に近寄って

鬼隆:「随分と心配してくれてたみたいで(苦笑)」

寧子:「よしよし……」抱きかかえられたタヌ君の頭を撫でます

樹:「♪〜」嬉しそう

寧子:「じゃあ戻りましょうか……あ、芋羊羹あるんだけど、タヌ君も食べる?」

樹:「はいなのです―」

寧子:「じゃあ、帰りましょうか……」

鬼隆:「ですね」

樹:「♪〜♪〜〜」

鬼隆:「ただいま…っと 誰も居ないのか」

寧子:「お二人とも、帰られたようですねぇ……」

鬼隆:「みたいですね……なんか俺いろんな人に心配かけちゃいましたね(苦笑)」

寧子:「ウチはともかく、皆さんには後でお礼を言った方が良いでしょうね」

鬼隆:「寧子さん………本当にありがとうございました」

寧子:「あ、お気になさらずに。ウチは勝手にやったことですから……」

鬼隆:「……飯 すごく美味かったです」

寧子:「よかった……。やっぱり、誰かに食べて貰わないと、味がどうか分からなくて」

鬼隆:「なんか…すごく久し振りだった気がします 美味いと思った食事って」

寧子:「えっ……そ、そこまで大層なものじゃ……」恥ずかしいのでうつむいて

鬼隆:「一人でふて腐って…皆に心配かけて……本当に駄目な奴ですよね俺(苦笑)」

寧子:「(首を横に振って)鬼隆さんは、駄目なんかじゃないですよ」

鬼隆:「ありがとう…」

寧子:「いえいえ、ウチはお礼を言われる事までは出来てないです……」

鬼隆:「………」スッと俯き…その頬には一筋の涙が

寧子:「鬼隆さん…………」心配そうな表情で

鬼隆:「心配しないで下さい…鈴鹿のことで泣くのは……これが最初で最後ですから」

寧子:「はい……分かりました」

寧子:「こういう時には、泣く事も必要ですよ……ウチに遠慮とかする事はないです」

鬼隆:「明日からは……俺らしい俺に戻れると思いますから………」

寧子:「その為にも、涙は流せる時に流してくださいね……」優しい目で見つめます

鬼隆:「……っ!」寧子さんを抱きしめて声を殺して泣きます

寧子:「……………」言葉はなく、優しく鬼隆さんの背中を撫でます…

 

 

 

翌日の遍窟寺 境内

 一人で空手の型の稽古をしている大輔

そこにゆっくりと近づいてくる人影が…

その気配に気がつき振り返った大輔は笑顔に

鬼隆:「──そんなへっぴり腰じゃ、小夜ちゃんは守れないぞ」

大輔:「……そのために教えてもらいたいんだ」

鬼隆:「ああ……教えるよ。俺がみんなから教わったものを。──いくぞ!

大輔:「よろしくお願いしますっ!