Let's レン耐 Rd.6 参戦記 〜MOTO GPへ続く(?)道〜
開催日:2010.5.5(日)
3月某日。VFR-VTEC仲間であるA.J.さんからSOSのメールが送られてきた。その内容は「5月5日、もしおヒマでしたら大将さんのチカラを貸して頂けませんか?
愛知県の幸田サーキットでレン耐があるのですが、メンバーが一人足りません。」と。ついに来た、Moto GPライダーへ繋がる・・・かもしれない、果てしなく遠く狭い道への扉が開かれる時が! しかし、ビックバイクで本格的な国際レーシングコースでの走行経験はあるものの(激遅ですが…滝汗)、イコールコンディションのミニバイクで行われるレースではテクニックが全てを物語ります。そして「速さは求めないで下さいね。楽しむのが趣旨ならば参加したいです…。」と戦力にならなかった時の為の布石は打っておいて勢いで参戦する事になりました。
【Let's レン耐】とは元GPライダーの青木拓磨氏が主催するレンタルバイクで気軽にレースを楽しもうという趣旨のもとで毎年全国各地で開催されているミニバイクレースです。車両は主催者が準備する50ccと100ccのホンダエイプを使用し、どちらの排気量のバイクになるかはくじ引きで割り当てられます。今回は全車50ccで行われる事になりました。また『純粋に速さを求める参加者は他のレースでお楽しみ下さい』と言わんばかりにレース中にさまざまなアトラクション(何も悪い事はしていないのに罰ゲームの要素が盛りだくさん!)が行われ、速さだけでは簡単に勝てない様になっています。
車両準備の必要がないのでライディングウェア一式だけを持ち込めばレースに参加できるのですが、サーキット内での自前寛ぎスペースがどうしても欲しかったので、近年、サーキット走行会参加時のお約束となっているホスピタリティブース設営機材一式と飲み物、スナック菓子も準備。エスティマに前日のうちに積み込んでナビの案内を頼りに5月5日の子供の日に大きな子供達が集い真剣に楽しく遊ぶ、愛知県幸田サーキットへ向かう事になりました。
当日は相方をピックアップして蒲郡市内のコンビニで昼食を買い込み、8:30前には幸田サーキットへ到着。TDLのビックサンダーマウンテンみたいな急勾配の下り坂を下りると駐車場とカートコース、そしてさらにその下に本日のレン耐コースとなるロードコースがありました。このサーキットへトランポにバイクを積載して来る時にはしっかり固定しとかないと荷室でバイクが横転する危険がありそうです。幸田サーキットはオープンしてまだ間もないサーキットでカートコースと全長1085mのロードコースを備えたミニサーキットです。またコントロールタワーは3階建てでレストランや放送席も備えた立派なサーキットとなっています。一時期、4輪車専用と言う噂があったので見に来た事がありませんでしたが、今では走行可能になったのかな?
駐車場に到着すると前勤務先の同僚で毎年、新春初走りでご一緒していただく地元友人の●橋さんや、見慣れたホンダRVF/RC45オーナーの面々が。●橋さんは感動創造企業の同僚と参加するそうです。RVF/RC45オーナーの面々は昨年からのエントリー常連となっており今回もエントリーしている様です。ボクが参戦する事は極秘にしていましたが、会場に現れたボクに全く驚く素振りがありませんでした。どうやらA.J.さんがバラしてしまっていた様です。そして肝心のA.J.さんの姿はまだ見えません。電話をかけると9:00頃に到着予定との事。到着するのを待っていようかと思いましたが、早めに場所取りなどをしてホスプタリティブースを設営したかったのでパドックエリアに行ってみる事にしました。ピットボックスで既に受付を済ませた参加者達がテーブルや椅子などを並べて寛いでいます。自分の参戦チーム名も分からない、本当に何も知らされずに来てしまった為にA.J.さんの本名と自分の本名を告げてチーム名と割り当てられたピットボックスを確認して車に荷物を取りに戻ります。最大の誤算はロードコース用パドックへはトランポ等で乗り入れる事ができなかったので、荷物を担いで駐車場から急な坂道を歩いて運び込まなければならなかった事です。相方にも手伝ってもらって2回に分けて運びこみました。これだけでもうクタクタになりました。
受付で割り当てられたピットボックスは7番ピットで共用するチームの中に見慣れた男性が。どうやらレザースーツの老舗メーカーであるクシタニ浜松のスタッフ有志で今回参戦するそうです。そしてその応援として駆けつけたホンダドリーム浜松東店の常連さんである、mori×moriさんや西■さんの姿も。mori×moriさんは「何?大将さん、走行するの?」と意外な反応を示していました。これがボクのMOTO
GPライダーへの第一歩となる事も知らずに…、ウシシ。「拓磨君のコネでレプソルホンダチームや王者ロッシが在籍するフィアットヤマハチームあたりから来季の契約の話が来ないかなぁ?」とすでに妄想癖が炸裂状態です。
10:00からの練習走行前に9:30から拓磨君によるサーキットブリーフィングが行われました。サーキットフラッグの説明は配布された資料を参照にして…って、ボクの手元にはありませんが、A.J.さんの手元にはしっかりと握られていました。まぁ、多くのサーキット走行会に参加経験から知っているので資料が無くても構いませんけど。そしてレン耐オリジナルルールとしてピットイン時にはピットロード入口で降車して手押しでピットロードを走る事,ピットイン時には拓磨君が目を光らせるレプソルテントで出されるお題をクリアしないと次走者と交代できない事,女性参加者やレン耐初参加者を示す赤いタスキを着用したライダーを転倒させたりしたら即失格になる事などが説明されました。ボクはレン耐初参加者なので赤いタスキを着用する事にしました。いざとなったらワザと?転倒させられて上位陣をツブそうという魂胆です。しかしレン耐には恐ろしいルールが存在します。そう、転倒すると強制ピットインさせられて罰金¥5000を支払わなければならないのです。上位陣をツブす為に取る作戦にしては代償が大きすぎるので、この作戦は大一番の時まで取っておく事にします。でも自損転倒の可能性もあるので相方になけなしの¥5000を預けていよいよ20分間の練習走行が始まります。
かつて1985年にキング・ケニーロバーツが平忠彦さんのペアライダーとして鈴鹿8耐に初参戦した時に「セッティングは全て平に合わせてもらって結構。」と言って平さんのセッティングで初走行のコース、初めての4ストロークレーサーでポールポジションを獲得した事は有名です。ボクも「セッティングは2人に合わせてもらって結構」と言いたかったのですが、エイプにセッティングする個所は無く、ミニバイクに乗った事の無いボクに配慮してもらってA.J.さんとケイタさんが5分ずつ、ボクが残りの10分間でコースレイアウトとエイプに慣れるために最後まで走り続ける事になりました。この時点で最弱助っ人の片鱗を早くも見せつけ始めました。
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幸田サーキット全景 | 自前ホスピタリティブース | 拓磨君によるブリーフィング中 |
今回、ボク達のチーム名は『YYRT with 大将』となんだかコラボレーションバンドみたいなチーム名でゼッケンは#25です。ちなみにチーム・クシタニとなる『チーム1919』は#26です。このゼッケンは申し込み順でスタートグリットもこの順番なのだそうです。『YYRT
with 大将』のメンバーはチームオーナーで第1ライダーのA.J.さん,タイムアタッカーで第2ライダーのケイタさん,そして最弱助っ人で第3ライダーのボク。あとヘルパー&カメラマン&ギャラリーでボクの相方の4名体制です。レン耐ではライダーの平均体重によってピットイン回数が決められます。ウチのチームは9回のピット回数となりました。そして多くのチームもこの回数になっている模様です。
鈴鹿8耐で聞き慣れたジングルが鳴り響き、スタートライダーはコースを挟んで反対側へ。そしてバイクがピットウォール側に整列されます。そう、レン耐は耐久レースなのでルマン式スタートとなるのです。ちなみにエンジンは始動済です。ボクは両足に障害が残って自分の脚ではまともに走れないのでスタートライダーからは外してもらう様にお願いしていました。だってそうしないとコースを渡っている最中に轢かれてしまいますから。今回は最後尾近くだったので杞憂に終わりましたが…。
運命のスタート時間となる10:30の10秒前からカウントダウンが始まります。おや?このレースの実況をしてくださるのは鈴鹿8耐でお馴染みのフリーアナウンサーである柳田さんですね? 高鳴る鼓動、静寂の後に訪れるエキゾーストノート(エイプなので劇的に静かですが…)。各車が一斉に1コーナーを目指して飛び込んで行きました。しかし!ここで思わぬアクシデント発生! 我がチームのスタートライダーであるケイタさんがなんとヘルメットのアゴ紐を締め忘れるという大失態。隣のチームが教えてくれなかったらそのまま走りだしてしまうところでした。A.J.さんがアゴ紐を締めて走り出した頃には既に半周以上の遅れ。自分的にはこれで抜かれる心配は無くなったのでビリになってもボクだけの責任ではないという安心感に包まれたのはナイショ。
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ルマン式スタート | スタートライダーのケイタさん | いきなり周回遅れ(滝汗) |
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A.J.さん腕立て中 | ケイタさん腕立て中 | 腹筋50回挑戦中のボク |
12:00から13:00はお昼休みになります。コンビニで買ってきた昼食を済ませ十分に水分補給をしてすでにまったりモード。またこの時間を利用してパドック内では拓磨君指導によるチビッコポケバイ教室が行われたり、本コースでは幸田サーキット主催イベントであるマイバイク体験走行会等が開催されました。またカートコース側の駐車場では東海地区の中古バイク情報誌であるバイクガイド誌による読者ミーティング(愛車の写真撮影会)等が開催され、レン耐参加者以外にも多くのライダーが幸田サーキットに足を運んでいました。
そしていよいよ第2ヒート。ボク達のチームはセカンドグリットから第1ヒートと同じくケイタさんがスタートライダーです。第2ヒートは4回ピットインすれば良いのでタイムを稼げるケイタさんが最初の30分を走行し、残りの1時間をA.J.さんとボクとで15分スティントで2回ずつ走行する作戦にしました。
上位陣が転倒やガス欠で予定外のピットインをしている間になんと我ら『YYRT with 大将』が第2ヒートトップを快走するシーンもありました。このまま行けば高ポイント獲得が期待できますが、なかなかそうは行かないのがレン耐です。
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ピットを共有したチームクシタニ
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お昼にはすでに疲労困憊
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いつの間にやら盗撮されてた
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ボクは今回、初めてミニバイクレースに参加しましたが、一応どういう風に走行すればよいか事前に色々と調べたりしました。自分としてはミニバイクでもそこそこ良いタイムで走行できると思っていましたが現実はそんなに甘くなく、1回目の走行では1分13秒台でトップチームの中には1分4秒台で走行するライダーもいたりします。バイクはイコールコンディションなので明らかにライディングスキルの差がタイムに表れています。エイプみたいなミニバイクでは膝擦りはタイムロスになるのでやらない、ストレートでは前傾姿勢で空気抵抗をなるべく減らし、ブレーキング区間をできるだけ短くしてアクセルを開けている時間を長くするのが速く走るコツだと、かつてDE耐に参加した時に元GPライダーのタディ岡田が言っていたので今回参考にしてみました。またレース前のブリーフィングで拓磨君がビックバイクの様に速いテンポでシフトチェンジするのではなく、きっちりとエンジンを回しきったところでシフトアップしないと速度が伸びないとアドバイスしてくれました。そしてレン耐は燃費レースの一面もあり、1分5秒台を連発すると必ずガス欠に見舞われるのでどこかで燃費走行区間を見つける事が重要です。
ボクはメインストレートから1コーナーへの進入では5速→3速へ、コーナーというコーナーでは2速で周回していましたが、チームで最速タイムをマークしているケイタさんに何速ギアで周回しているか聞いたところ全コーナーでボクよりも1段高いギアで走行している事が判明。1コーナーへの進入も4速で十分入れるとの事でした。午後の走行から今までと1段高いギアで走行するとあっさりと2秒もタイムが縮まりました。また午後のA.J.さんの2回目の走行でガス欠の心配が無い事が分かると安心して全開で走行できるので更にペースアップを図りました。最後の走行でついに9秒台に突入し自分でも乗れてきている事が分かります。またエイプはブロックタイヤを装着していますが、これが意外とグリップして最初は探りながらコーナーを走行してましたが少しずつコーナーリングスピードも上げていく事が出来ました。またイコールコンディションなのでスリップストリームが効きます。しかし速いライダーの後ろについて走行してみるとタイムアップするには更なるコーナーリングスピードの向上とブレーキング区間の短縮が必要だと分かりました。速いライダーは膝擦りには至らないものの、しっかりと身体を移動してハングオフでコーナーに進入しています。またボクは結構、ハードブレーキングしてコーナーに進入していましたが、速いライダーはほとんど減速せずに、もしくはアクセルをあけたままブレーキングしてエンジン回転数が落ちるのを防いでいる様でした。体重が軽い方が有利なのは事実ですが、ミニバイクにはビックバイクとは違うライディングテクニックが必要な様です。たかだか1秒、されど1秒。、この1秒を短縮する為に色々と工夫して乗る必要がある事が分かりました。
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第1ライダーのステディ A.J.さん | 最弱助っ人のボク 激遅! | YYRTは総合11位でした |
ボクの最後の走行で順位を競っていたチームと一進一退の攻防を繰り広げていましたが、どうしても抜きどころがなくストレートエンドで無理に突っ込むと立ち上がりで抜き返されるの繰り返しで結局、抜けずじまいでチェッカー。総合順位は11位でした。ボクが最後の走行で競っていたチームを抜いていれば10位になれたみたいなのでちょっと悔しいです。チームクシタニである『チーム1919』は総合14位、RVF/RC45オーナーの『チーム45』は4位入賞でした。優勝は圧倒的なスピードを誇ったDUCATIワールドスーパーバイクチームライダーである芳賀紀行選手の実兄で元全日本ライダー、芳賀健輔さんのお店の常連さんチームでした。
表彰式の後は集合写真撮影や拓磨君とのジャンケン大会が行われました。ジャンケン大会では珍しく何もゲットできませんでした。
そして連日、MOTO GPチームから来季の契約の話が舞い込むのを待ち続ける日々…。果たしてボクはMOTO GPライダーになれるのか? それとも頓挫するのか? 乞うご期待!
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貸し出されるホンダエイプ | 上位6チームの表彰 | 次に狙うは… |