『音楽と人』 vol.29 96年4月号 定価¥550 シンコーミュージック刊 「筋肉少女帯は解散していなかった?!」のタイトルと共に御三方で表紙も飾っているこの号。 市川哲史氏 vs大槻さん、内田さん、橘高さんによる 筋少アルバム”ステーシーの美術”完成後のロングインタビュー。 元々の記事の写真も効果が粗いんです...(~_~; が、その他ショットも多数有り♪全20Pの特集記事でした。
●●大槻+橘高+内田 −まさかこの3人を揃えて筋少の話を訊く日が来ようとは(笑)。 大槻「まず最初に今日のメイン喋り担当を決めた方がいいんじゃない?」 橘高「じゃぁ内田に(笑)」 内田「こんにちはー、内田でぇーす」 (一同失笑) 大槻「橘高君喋りなさい、思いのたけを」 橘高「はぁ?いいよいいよ」 ●●(失笑)他人行儀というか消極的というか。 大槻「いやいや、ちゃんと割り振りしなければ」 ●●ウチも貴重な表紙と巻頭を提供しー。 大槻「よく表紙やるねぇ筋少で!だって(笑)」 橘高「はははは。凄い事だよ。」 ●●オレもそう思う。しかし筋少としては2年振りの新作だよ。まさか出るとは(笑) 大槻「(笑)その間に僕はユーフォリア(←橘高のソロユニット)というユニットでー というボケで今日は」 橘高「じゃぁ俺は突っ込みに回んなきゃいけないわけ?(笑)」 ●●(失笑)2年振りに筋少の新作を出すことになった契機とは? 橘高「2年契約で出さなきゃいけないから(笑)」 大槻「そのぐらい大人なんだから分かってるんじゃないかなぁ、市川さん」 ●●分かってるから訊いたんだよ。 三人「うわはははは」 大槻「いいオチ(笑)。2年で2枚出す契約だから出さなきゃいけないに決まってるじゃないですか! これで出なかったら契約不履行ですよ。でも適当なB面曲集とかでごまかしが(笑)」 橘高「いや、新曲を録音しなきゃダメなの」 大槻「嘘!?じゃぁ俺がずーっと詞を朗読するよ」 橘高「お、朗読でいいじゃん」 ●●朗読をとうとう筋少名義で出すかぁ? 大槻「あ、出るんだよ?今度のシングル”トゥルー・ロマンス”というとてもいい曲なんですが、 カップリングがー(小声になって)凄いよ リミックス”リルカの葬列”。ほーら驚いた(笑)」 ●●それで。 大槻「あ(笑)。しかももう1曲が凄いよ?タイトルが”散文詩の朗読”。何かというとねー」 ●●散文詩を朗読するんだろ。 大槻「あ、そうなんです(笑)。私の朗読が約3分入っているという、これはレアアイテムだね」 ●●ジャーマン・プログレの末期かい。 橘高「がはははは!」 大槻「ここで笑っちゃダメだよ。怒らなくっちゃ!」 橘高「あ、そっか。馬鹿者っっ」 内田「何を言うんですかっっ」 大槻「親しき仲にも礼儀ありだっっ」 ●●まぁ動機はどうであれ、現在の筋少はどういう順序で機能する訳ですか。作品作る際に。 橘高「まずリリース日が決まります。」 大槻「『それに間に合うわけねぇよ』ってスケジュールが出てきます(笑)」 ●●わはははは。 大槻「これはもう恒例なんで、皆あんまり驚かないと。 で、曲出しがあってー今回はなんと僕が詞を4曲先に書いたの」 橘高「詞先は初めてなの」 大槻「だからねぇ、曲出しも早かったよ。それでプリプロがありレコーディングがあり。 皆もう役割り分担が分かってるからね、モメる事が無いアルバムだったねぇ」 橘高「だって居ないじゃん!スタジオに誰も!俺以外!」 大槻「いや、俺居たよー(笑)」 橘高「そりゃ歌唄う時は居なきゃ、歌録れないよ(笑)。 それ以外は仕事帰りにフラっと飯食いに寄ってただけじゃん」 大槻「そうそうそう。カレー卵乗せとかさ」 橘高「人が一所懸命演ってる後ろで飯だけ食ってる(笑)。 今回は、だから『用も無いのに来なくていい!』って事にしたから(笑)」 大槻「それ言い出したの橘高なんだけど、結局ね、そういう風にしたら一番大変なのは...(笑)」 橘高「俺なんだよ(笑)。俺だけリズム録りからずーっと居るわけで、俺だけ休み無いんだよ」 ●●要するに、プロデューサー兼ディレクター的役割を今回橘高が演ったと。 橘高「そう。ディレクターの方が強いかも(笑)。金の計算までしてて(笑)」 大槻「そんな事までしてたんだぁ」 ●●何故に橘高がしなきゃいかんのだ。 橘高「誰も演んないからじゃん(笑)。今回しかも最短! レコーディング期間はきっと『仏陀L』よりも短いでしょう」 ●●くくくく。君、その頃筋少に入ってないだろ。 橘高「(笑)。普通1stアルバムって皆短いじゃん」 大槻「実は好きで聴いてたね?」 ●●まぁまぁ。で、「用の無い人は来なくていい」って方針がまず立ったわけね。 橘高「スタジオでカンヅメになる必要無いから」 大槻「でも俺わりと居たよ、用も無いのに。だから御飯食べて 『空手バカ一代』や『修羅の門』読んで帰るっていう」 橘高「俺凄くイイ奴でさ、人の曲を先に作ってーやっぱ後にしちゃうと可哀相じゃん?」 大槻・内田「ははははは」 橘高「で結局、自分の曲とか大槻の唄選びとか全部後に残しちゃうわけよ! 俺が全部一人で出来る仕事は!だから皆すごく楽になってるんだろうなぁとは思うけど 内田なんかスタジオ来る度にいっつも疲れて死にそうな顔してんね。 マージャンやってるんでしょう?」 大槻「内田はただ単にお腹壊してたんだよ(笑)太田(明/ds)もわりと見たぞ、俺はー ー雪男みたい、『わりと見たぞ』だって(笑)」 橘高「ダビング最終日に久し振りに逢ったよね、リズム録り以来(笑)」 大槻「風邪ひいてたらしいんだけどさ、長い付き合いだから特に『なんで来ないの?』とか 訊かないのよ。『来ないなぁ、なんか悩みに入ってんのかなぁ』と思うぐらいで(笑)」 ●●凄ぇバンドだなぁ。そもそも「用無きゃ来るな」路線にした理由は何だったの。 橘高「ストレスを溜めたくないから」 ●●わははは。メチャメチャ分かり易い理由。 大槻「そぉなんですか!?俺達と居るとストレスが溜まるのかよ!? そりゃぁ俺は『BURRN!』の話は出来ねぇよ。でもさぁ!だって(笑)」 橘高「はははは。あと唄選んでる後ろで空手の型とか演られたくないから」 大槻「あぁっ(笑)」 ●●でもその方針で効率良く出来たと。 橘高「そうだね」 大槻「でもねでもね、あれだよ?今回ねぇ、俺だってねぇ、協力したんだよ?(笑)」 橘高「協力するのは当たり前だよ!(笑)自分のアルバムだろう!」 大槻「そうかぁ!だって(笑)」 橘高「スタジオ・ミュージシャンみたいな気分になってない?(笑)」 内田「だはははは」 大槻「俺はピッチばっちりだからさー唄入れも3回で決めるけどね」 橘高「3回以上唄っても変わんないからだよ!」 大槻「あらららら。俺はね、下手なんですよ唄が。 で今回ヴォーカリストって機械をさ、ぽーんと買ったんだよ。 そしたらさ、メンバーが玩具代わりに散々使ったあげく、結局ー」 橘高「使ってないよ?(笑)」 大槻「使ってねぇじゃん!ある時なんか内田が一所懸命やってるから、 研究してるのか感心感心と見たら、YMOの”ライディーン”打ち込んで唄を入れてたのさ!(笑)」 ●●単なるボコーダー、新しい玩具としてしか機能させて貰えなかったのね。 大槻「それで、飽きたなって頃には粗大ゴミとして置かれてんの(笑)」 橘高「オーケン企画(←大槻個人事務所)で領収書切ったのに(笑)」 大槻「何だよあれー、使い道無いよー」 橘高「(無視)僕も今回コーラスが多い。内田も凄い高いキーでコーラス唄ってたりもする(笑) 唄えるじゃないか、君はあのキーを」 内田「頑張りましたよ!」 大槻「BOWWOWの”欲しいのはおまえだけ”みたいだったよ」 ●●それ褒め言葉なのか? 内田「ありがとう!」 ●●話訊いてると、アマチュア・バンドの初レコーディング的なノリに近いけども。 橘高「本当そうだよ。この段階でまだレコーディングを探る事になるとは思わなかったよ(笑)」 ●●今回のテーマは?コンセプト先行か完成後の帳尻合わせか。 橘高「(失笑)」 大槻「なんて事を言うんだ!(笑)テーマはね、『再生』ー再び生きる。 人生は何回でもやり直しがきくって事でしょう。 今ちょっと胸にグッと来たでしょう、市川さん!」 ●●いや、やり直し回数券使い切った感が。 大槻「あ、終わっちゃった?(笑)」 橘高「まぁ要は売れなくなったバンドがー」 大槻「だからそういう事をね」 橘高「ごめんごめん悪かった悪かった(笑)」 大槻「だからね、喋る人間がそういう自分のバンドをネタに自虐的な事を言うのがー 筋少がドームに行けなかった理由だよ(笑)」 ●●それを自虐的にしてんのが君だろうが。 大槻「あら。だから別にバンドの再生じゃないのさ。人生の再生を俺は唄いたかった... 俺はね。他のみんなはどうだか知らないよ!」 橘高「うはははは」 大槻「君はサウンド面を気にしてたんじゃない!?音とかさ。どうなのっ!」 橘高「気にするよそりゃ!」 大槻「あれ?」 ●●史上最強の自虐漫才と化してんなぁ。橘高の個人的な今回のコンセプトは何。 橘高「コンセプトが再生なのは勿論聞いてたから、王道を演り易いってのがあるよね」 ●●うん、今回って音的にも筋少の特性オンパレードっていうか、博覧会状態なんだよ。 橘高「そうだね、うん。あと全曲ライブで出来る事と、全曲シングル候補になるようなレベルを 目指す事。で曲出しの段階で凄く完成してたから、アレンジは全然楽だったよね」 内田「うん」 ●●全曲のクレジットをよぉーく眺めると、今回は大槻作曲の楽曲が皆無でさ。 大槻「そう、無いの」 橘高「だからアルバム全体がコンセプチュアルにまとまるわけですよ、本当に(笑)」 ●●わははははは。 大槻「でもねぇ、橘高がもうずーっとスタジオに入りっぱなしで可哀相でしたよ。 どんどん痩せていくんだよー」 橘高「(無視)」 大槻「あ、今流したね(笑)」 橘高「流したよ。もうそういうネタは引っ張んなくていい(笑)。失礼だよ!」 大槻「すいません(笑)」 橘高「疲れてるんだからねっ!」 ●●三者三様の「再生」観をここで訊いてみますかー凄ぇ、バンドの取材みたい(笑)。 橘高「ねぇ?(笑)」 大槻「内田君から」 内田「そうですね」 大槻「プロレスに絡めて」 内田「あぁ...LLPWの...再生」 大槻「あ、普通に喋っていいよ(笑)」 内田「僕は...そうですね、個人的にはロックンロール、ロケンロー、ロックを意識した、 曲を作って、きたつもりで、ございますが」 ●●それが再生とどのような繋がりが。 橘高「はははは」 内田「だから筋少再生」 橘高「ああ、そういう事」 大槻「筋少はロックンロール・バンドだったのね」 内田「いや、ロック・バンドだとーロック・バンドがあんまり居ない日本で」 大槻「居るよ、イエローモンキーとか。浮世離れしてる君は知らないだろうが」 内田「知ってるけどさ(笑)。 大森さん(←渋谷ラ・ママ出身で現在はイエモン事務所社長)がやってんだよ」 大槻「そういうレベルで知ってんだ(笑)」 ●●(苦笑)という事は、ここ最近の筋少はロック・バンドじゃなかったと。 内田「だって筋少演ってなかったから」 (一同大雪崩失笑) 大槻「俺のソロをずっと手伝ってたわけでーつまり俺のソロがロックじゃないというわけか!」 内田「あれ?ああ....ねぇ(笑)」 大槻「いいや、もう疲れたよ こういう予定調和の絡みは」 ●●君が進んで絡んでんだろうが(笑) 橘高「だけどよく考えたらさ、大槻のソロ 内田より俺の方が全然レコーディング演ってんだよ(笑)」 大槻「あぁ、そうだよねぇ」 橘高「だからさぁ、何でバンドのヴォーカリストの奴のソロアルバムを、そのバンドのギタリストがわざわざ アレンジすんのかなぁ。変だよねぇ」 ●●わはははは。 大槻「悦びを感じないと」 橘高「俺は嬉しかったよ。『愛だな』とは思ったけどね」 内田「あのアレンジいいよ」 橘高「俺も愛で応えたんだよ、だって。でも大槻はユーフォリアは手伝わなくてもいい(笑)。 要らねぇよこんな奴(笑)」 大槻「あれ?いやぁ、俺は入りたいな君が要らないと言っても。 ユーフォリアには俺は必要だよ」 橘高「ははははは」 大槻「なに内田は黙ってるんだよ!空手バカボンは!」 (内田無言で席を立つ、がコーヒー注いで戻って来る) 橘高「帰るのかと思った(笑)」 大槻「怒ったのか?長年連れ添っててもまだ読めませんよ、この男は(笑)。 あ、でも橘高はね、ユーフォリアの間奏に絶対俺の語りを入れたくなる!欲しくなる!」 橘高「欲しくなるのかなぁ(笑)」 大槻「そうだよ。MTRで作曲してるうちに、何か変な部分作っちゃって 『何で作ったんだ?...あ、大槻の語りパートだ!』となるのだ!」 ●●人面疽みたいな奴だな君は。 橘高「あのね、ユ−フォリアのアルバム作った時さ、本当に最初間奏に大槻が語る部分作っちゃってたの、癖で。 だから慌てて一所懸命メロつけたよね、そこ(笑)。すっげー哀しかったよ」 ●●ユ−フォリアは紙一重だと思うよ、大槻の語り入った瞬間に筋少になっちゃうんだから(笑)。 橘高「ヤバかったよね。大槻の語り入る場所、知らない間に作っちゃうんだもん」 ●●自分で無意識の内に予定調和地獄に陥るという(笑)。 橘高「そうそうそう。逆に言うと、大槻の語りの後ろには俺は技巧のギターを入れたくなるんだけどもね、筋少では。 一緒なのよ美味しいツボは(笑)」 ●●大槻と橘高ってさ、何だかんだ言っても表裏一体なんだよなぁ。同一人物のナゴム篇とメタル篇というか(笑)。 (一同大自虐爆笑) ●●さて橘高にとっての再生というと。 橘高「真面目に答えますよ?ロックの初期衝動に忠実にー個人的にはいつもそうなんだけど、 バンドとしてもそうなったら恰好良いなと思って。それに尽きますかねぇ。 だからプレイ面でもね、自分のスタイルとか飛び道具とか商品性を発散させちゃうとこを、 あえて作曲者の希望を俺のスタイルで解釈して演ってたりする」 内田「見事にいなたいギター・ソロを入れてくれましたしね」 橘高「ボトルネックで初めて弾きました」 ●●おぉー、話がどんどんバンドっぽくなるわ。 橘高「ん、そう?バンドだもんバンドだもん」 ●●初めて聞いたけども、その手の話(笑)。 橘高「ははは、今まではいかに作曲者の予想を超えた事を演るかとか、裏切るかとかばっかり演ってきたから、 今回は結構曲に歩み寄ったけどね。 唄もちゃんと聴こえるようにアレンジした、今回は(笑)」 ●●なんか各々が筋少に好意的に行動してるなぁ。 橘高「そうそう。だから、今までは筋少は大槻の語りと俺のギター・ソロって部分が一つあるじゃない? ところがその美味しいポイントって同じだから、ソロと語りが同時に鳴ってたわけ。今回はそれをヤメようと。 ギター・ソロの時は喋って欲しくないし(笑)、喋る時にはギターを入れるのヤメとこうと思って。 ほんでストリングス入れたりしてるの、今回」 ●●そういう意味では、初めて「筋少」というバンド全体を意識して作品を作った的な感じだね。 橘高「うん、そうだね」 ●●と同時に、何故今までそれを演んなかったのか、とても疑問に思うんだけども。 橘高「今まではそういう変な事ばっか演りたかったんだよ、ずっと。 まぁ何だかんだ言っても、今回も充分変だけどね。いつものスタイルだから」 大槻「筋肉少女帯はね、ミクスチャー・ロックの先駆けですからねぇ」 ●●ずーっと黙って何考えてるのかと思ってたら、そういう事かい(笑)。 大槻「(笑)いや、本当そうなんだよー。だって音頭まで採り入れたバンドって筋少だけよ? だからハードロックとかアングラとかトークとかさ、そういう様々なジャンルとか全てを絡めたのが 筋肉少女帯だったわけですよ。ね?それのまぁ、ある程度の完成形というかお約束が今回出て来た訳ですなぁ」 ●●おまえ何遠くを見て喋ってるんだよ。 大槻「いやいやいや、ミクスチャー・ロック」 ●●(無視)でも「筋少バンドサウンド」がストレートに堪能出来、しかもわかり易いアルバムだと思うよ。」 橘高「うん。嬉しいです。」 大槻「あと気付かれたかな?」 ●●なんだその古畑任三郎みたいな喋りは。 大槻「ちょっと!古畑任三郎(笑)。 今回ね、11曲中6曲がラブソングなんだよ。凄いでしょう」 ●●......。 橘高「ははははは」 大槻「テーマが『再生』ー人生は何度でもやり直しがきく。ね? もし命尽きる事あっても、それを含めてやり直しがきくという、ね? そういうブッディズムに目醒めた大槻がまたこういう事いうからバンドが良くなくなるわけ、 ガタガタになっていくわけです。そこを抑えて抑えて言うならば、その過程においてー もう飽きてる?飽きてる?」 橘高「いいよいいよ、どんどんやって」 内田「いいよいいよ、どんどん」 橘高「俺休んどくから(笑)」 大槻「『レティクル座妄想』の説明から始めていい?」 橘高「(笑)いいよ?ほんで今回の話になるまで30分懸かるんでしょう?」 大槻「だから人生は何度でもやり直しがきくという結論に気付くまでの間にね、『愛してる』『恋してる』 『勇気を持って』という事が、大槻ケンヂは何にも恥ずかしくなくなったんですねー。 その意味では非常に新たな面がー 何を笑ってるの、内田君は」 内田「はははは。いや、いやいやいや。」 大槻「そう?新たな面が出てるんじゃないでしょうかねぇ」 ●●君の話に付き合わせて貰うと、やっぱソロで大槻は変わったんじゃないの? 大槻「ソロで演ってるうちに、何となく何とも思わなくなってきてね、恋愛の歌とか唄うのが去年1年で。うーん」 ●●例えばさ、詞一つ書くにしてもソロと筋少では、やはり違いはあるんじゃない? 大槻「ありますよ。だから特にねー橘高高速ヘヴィメタ曲にどういう詞を乗せるかが一番困るね。 で、今まではなるべくヘヴィメタの詞にならないようにして、ある時は”スラッシュ禅問答”みたいに 異化効果に逃げたりしていろいろ演って来て。未だに難しいね、橘高のに詞つけるのはねぇ。本当に本当に」 橘高「でも今回は凄くハマってるよね」 大槻「ハマってるよ、”再殺部隊”とか」 ●●今回見事にハマった理由は何かしら。 大槻「あのね、恋愛の事を唄っても全然恥ずかしくなくなっちゃったからかな。 やっぱりヘヴィメタルー特にヨーロピアンな、橘高が作ってくるような曲は基本的に演歌なのよ。 だから”天城越え”とか”大阪しぐれ”の詞が合うのよ。あと石川さゆりの”飢餓海峡” ーあなたの爪をティッシュに包み頬をチクチクついてみるとか、ああいう詞が一番乗るんだよどうしたって。 俺今までそういうの恥ずかしいから書けなかったんだけど、恋愛の過程、ソロの過程において1年間、 恋の歌愛の歌勇気の歌唄うのが恥ずかしいと思わなくなってきた。演歌的な世界に近づいた。 だんだん俺にロニー・ジェイムス・ディオの魂が」 内田「ひひひ」 ●●その辺にしとけよ。 橘高「そろそろ突っ込んだ方が(笑)。でもまだ女性に語らせて逃げてるというパターンだよね」 大槻「俺ね、俺を語ると女性形になっちゃうんだよ。なぁんかねぇ」 ●●それは君の恋愛における姿勢がそのまま出てるんではないかと。 大槻「うがぁ〜っっ」 内田「はははは」 橘高「突っ込まない突っ込まない(笑)」 ●●まぁ今回、メタル演歌物は充実してるなぁ。 大槻「でしょ?」 橘高「メタル....俺が言っちゃ駄目だ(笑)....ヘヴィメタルとはそういうピュアなもんだよ。とっても」 大槻「ピュアと書いて演歌と読む」 橘高「うぁ、ヤメてっ。でもね、今回は本当に筋少というバンドを改めて確認したというか、いいバンドだよ本当に。 全員のプレイの特徴や個性、作曲の特徴や個性が全部改めて納得出来たから、やっぱ最後の課題がいかにエンジョイして レコーディング出来るかで(笑)。そういう意味では、1年に2枚とか作るようなペースじゃ演りたくない。良い意味でね」 大槻「いや、今年はもう1枚作りますよ」 橘高「作る?」 大槻「うん。あと4月にまたソロをレコーディングしようと思ってるし」 橘高「君は出来るよ、そら(笑)。筋少でだって、どうやってレコーディングが仕上がっていくか、全然知らないじゃん君は(笑)」 ●●君が知らない間に皆がちゃんと作ってくれてる、的な。 大槻「うん、俺は大体スタジオでぼーっとしてるからね、そうするとだんだん音が出来るからびっくりしたよ」 橘高「何枚出してんだ、君は(笑)」 ●●社会科見学の小学生か君は。鉛筆の出来るまで的な(笑)。 大槻「ある日行ったら、曲にストリングスが入ったりしてびっくりしてるんだよ!」 橘高・内田「あはははは」 ●●内田君は、レコーディング愉しかったかい。 内田「愉しかったですね」 橘高「いや、本当に愉しかったよ」 ●●しかし、実は解散が決まってるのに無い事のように仲良さげにアルバム作ってるバンドが多い昨今ー。 大槻「解散前のバンドって仲良さを凄く」 ●●しかもツアーは決定済なもんだから、最終日に解散発表してまたその後解散ツアー! 大槻「ウチもそれそれ!だって(笑)」 ●●わははは。筋少は大丈夫か。 大槻「え?筋少はねぇ、大丈夫よ。うん。あれね、ある程度バンドと自分のスタンスがはっきりしてればね、 バンドは長く続くんですよ。本当本当」 橘高「それは本当だよ、うん。俺も思う」 ●●例えば橘高の筋少とのスタンスはどんな。 橘高「俺はあんまり....実はあんまり変わんないけどね。 だからその時期に演る事が違う事なだけであって、それも一緒にするように努力してるところはちょっとあるけど。 大槻の曲をアレンジする時も、大槻が俺らしいものを望んで発注するわけだから当然だけど ーだから俺は変わんない事がテーマかな」 ●●変わりたいとか変化つけたいとか、思った時とかないの? 橘高「無いなぁ。お好み焼き屋さんもお好み焼きだけ食べれるとこの方が好きだったから、子供の頃から。」 ●●よく分からん理由だけども(笑)。 大槻「まぁでも簡単に言っちゃうと、太田は本当ドラム担当で、おいちゃん(本城聡章/g)はポップ担当ね」 橘高「作曲家的だよね」 大槻「で橘高がサウンド担当で、内田君はまぁメンバーの....人間関係の緩和と(笑)あと驚かし物の曲」 内田「飛び道具」 ●●ちなみに君は? 大槻「俺は....俺だよ」 ●●何だそりゃぁ。 大槻「俺は、なんか居るんだよ(笑)。窓際ヴォーカルよ(笑)」 橘高「司会進行なんだわ(笑)」 大槻「いやでもね、俺もだんだんね、自分で言うのは何だけどヴォーカル力は向上してきたね....」 (一同葬列的沈黙) 大槻「いや、マジマジ本当」 (一同黙祷的沈黙) 橘高「市川さん、今 人をぶっ殺しそうな顔してる」 大槻「いや、そう思うよ!ね?徐々に徐々にこう....だって『仏陀L』の頃に較べればー」 ●●誰だってデビューの頃に較べりゃ上手くなる。 大槻「どう思う?だって」 橘高「うーん、まぁねぇ」 大槻「君は内部に居るからわからないけど、外部の人が聴いたら 『あれ?大槻ケンヂって普通に唄う人なんだな』ってー」 橘高「それは俺がちゃんと上手く聴こえるようにしてるからじゃなくて?(笑)」 大槻「いやでもね、やっぱりね。やっぱり石の上にも3年だよー(笑)。 あとね、俺の声はね、フェロモンが出てる。それはもう認めざるを得ないね、うん」 (一同大失笑) 大槻「だからヴォーカルが上手いのが良いのであらば、尾崎紀世彦が一番売れてるはずなのよ。 そうでないのは何故かというと、上手い下手関係無く人が聴きたくなる声 そうでない声っていうのがあるの」 ●●だけど人が聴きたくなる声ってのはやっぱり売れるはずなわけでさぁ。 大槻「.....だからそこそこは売れてんじゃん」 内田「へへへへへ」 橘高「恰好いい!(笑)」 ●●君のフェロモンは「そこそこなのかい」。 大槻「いいじゃん!」そこそこでも(笑)」 橘高「俺、今感動したよちょっと(笑)」 大槻「そこそこでいいの。嫌ですよぉ、そんな百万人に愛される声なんて、だって(笑)。 何で嫌なのか分かんないけど(笑)」 ●●ヴォーカル力の向上の話はどこ行った。 大槻「うわー(笑)。でも2年も出してないのかぁ.....驚いちゃったな俺」 ●●今まで半年に1枚ペースだったからなぁ。 橘高「あのね、毎年毎年出しててアルバムの内容がそんなに変わるはずないのよ。 だから今回は、さすがに新鮮だよね」 ●●トイズ・ファクトリー時代とかな。 大槻「だからあの頃ミスチルが売れてたらね、もっと長いタームで出せてただろうに」 橘高「あぁ、そうかもね。本当だよ(笑)」 大槻「あるいは出せなかったかも知れない(笑)」 ●●やめなさい。 大槻「俺は個人的には”おもちゃやめぐり”がね、一つのポイントでねー若い頃人気があった30代後半の人が 『そろそろ大人のポップスを唄いたい』『大人のロックを』とか言うじゃない?」 ●●例えば? 大槻「え?いやぁ、またそういう事を誘導尋問したって引っかかんないよ(笑)、だって。 唄うじゃない、『グラス傾け今宵君と』とかさ」 ●●誰が唄ってんだよそんな歌。 大槻「そうじゃないんだと!(テーブルを叩く)大人のロックとはそういうもんじゃないんだと。 ね、同じ世代の共通な想い入れを掘り返すのがいいんですよ。 そこで僕は、昔のヒーローですよ。バロム1とかキカイダーとか。 そういうのを出してくれるところにね、俺の非凡さはあるね。自分で感動しちゃったもん」 橘高「でも確かにね、筋少の強い部分はおいちゃんだけ一つ上だけど皆同級生なわけじゃん。 だから当時流行ってた、懐かしいと感じる音やこの曲の歌詞の世界が同じ世代として、 一緒の気持ちを持てるとこなんだよね」 ●●もうほとんど同期のバンドが消滅する中、同い歳の集団が一緒に歳食ってきたというのはデカいよ。 ツボが同じというかさ。 橘高「目指す理想のバンドって無いの、筋少は。意思確認しようとしたんですが、やっぱり無い。 無いんだけど、子供の頃の感覚や世代が一緒だから、そこが共通言語になればいいんですよ。 それが筋少だと再確認したから」 ●●そういう意味では、今までで一番バンドっぽくなくてバンドっぽいアルバムで。 大槻「たぶんね、聴いた人が『あぁ、筋少』って思うアルバムですなぁ(笑)」 ●●内田君黙ってるけど、今日もお腹痛いの? 内田「失礼な(笑)」 大槻「お腹はねぇ、いつも壊してるよ?」 橘高「でも遅刻してきた時が一番、お腹壊してそうな顔してるよね(笑)。腹かかえて入ってきて。 でも30分経つと、実は痛くなかったっぽい(笑)。痛いのは痛いの?」 内田「出ちゃえば治るよ」 大槻「でも共通の趣味が欲しいね、メンバーで」 橘高「それは本当にそうだね」 大槻「それだよ!バンド存続には共通の趣味か宗教だね! もしくはメンバーの誰かに子供が居ればいいんだよ(笑)」 橘高「アットホームな空気にはなるじゃん。子供同士が仲良いと、 『こいつらが結束強ければ、俺らの結束にもなる』みたいな(笑)」 ●●まさに子はかすがい! 大槻「情けねぇバンド(笑)」 END