クラリネットの話

4    クラリネットの種類
 クラリネットには次のようなたくさんの種類があります。
 
・A♭クラリネット
・E♭クラリネット
・Dクラリネット
・Cクラリネット
・B♭クラリネット
・Aクラリネット
・E♭アルトクラリネット
・Fバセットホルン
・B♭バスクラリネット
・E♭コントラバスクラリネット(コントラアルトクラリネット)
・B♭コントラバスクラリネット
 
全部で11種類。A♭、D、Cクラリネットはほとんど使われることはありません。クラリネットだけで大編成のオーケストラができてしまうくらい、高音域から低音域まで種類が豊富です。音域が違えば楽器の長さも違ってきます。小さな楽器は25p。一番大きな楽器になると、その長さは2mを超えます。楽器屋さんに行って「クラリネットください」と言って出てくるのはB♭クラリネット。一般的なクラリネット奏者が持っているのはB♭、Aクラリネットの2本です。
 
A♭クラリネット
 楽器の大きさは25pほどで、本体は二つのパーツに分かれません(上管、下管に分かれない)。昔、A♭クラリネットはイタリアのBanda(バンダ)といわれる軍楽隊で使われていましたが、ヴェルディのオペラ『仮面舞踏会』の中に登場しています。また、現代音楽にも少しずつ使われ始め、G.アミ(Gilbert AMY)の『Espace deploye(広がった空間)』などにその例がみられます。
 
E♭クラリネット
 通称「Es エスクラ」。B♭クラリネットよりも4度高いE♭クラリネットは、カン高くて鋭い響きのする音を出し、高音域はB♭クラリネットよりも音が出にくいです。しかし、この楽器はだんだん専門化されてきていて、オーケストラの中では大変重要な役割をしています。
 例えば『幻想交響曲』の特徴あるソロをとりあげてみると、ここで作曲者のベルリオーズはイデー・フィクス(固定楽想)の旋律的なテーマをE♭クラリネットを使って品を落として登場させます。また、R.シュトラウスの『ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』のとても比喩に富んだソロなどもあります。中音域はラヴェルの『ボレロ』がその良い例で、柔らかくふくよかでメランコリックに響きます。
 
Dクラリネット
 DクラリネットはE♭クラリネットよりも柔らかく響きます。よく inDで書かれた譜面をE♭クラで読みかえ(移調)て代用していますが、基本的には誤っているのかもしれません。例えばR.シュトラウスの曲などでは、ほんとはこのDクラリネットをつかうほうがいいのではないでしょうか。でも、この楽器を持ってる人はほとんどいませんが・・・。
 
Cクラリネット
 この楽器は現在ではほとんど使われていませんが、 inCで書かれた楽譜はオーケストラなどでたくさんあります。例えば、イタリアオペラやベートーヴェン、R.シュトラウスの『バラの騎士』などにみられます。ソノリテが少々挑戦的で、クラリネット奏者の多くは耳にさわる鋭い音を嫌ってB♭管を使って楽譜を移調しながら吹いています。
 
B♭クラリネット
 現在、技術的に見るとB♭管はほとんど完成されているようですが、それぞれの楽器メーカーはこれをもっと完璧なものにしようと前向きに努力しています。
 この楽器はクラリネット族の中では最も多く使われています。みなさんがよく見かけるクラリネットはこのB♭クラリネットです。響きは華やかで明るく、吹奏楽ではヴァイオリンの役割を担っています。また、シンフォニックなオーケストラでのB♭クラリネットの位置は非常に重要です。
 音色はピアニッシモ(pp)では非常に柔らかく、フォルテッシモ(ff)では激しくドラマティックに響き、表現力に非常に富んだ楽器です。
 
Aクラリネット
 幸運にも大作曲家がこの楽器を愛し、名曲を残しています。モーツァルトやブラームスが書いたクラリネット五重奏ではビロードのように柔らかい音を巧みに使っています。B♭管と比べて半音低い分(つまり管が半音分長い)、それだけ豊かで渋い響きを出すことができます。僕はロングトーンやスケールの練習をするときには、A管を使うようにしています。A管で吹くと息の圧力がより多く必要になり、B♭管を吹いたときにそのことがとても役に立ってくるからです。
 作曲家がA管のクラリネットを指定して曲を書いている場合、とりわけB♭管のクラリネット用には移調しないほうが良いのは確かです。というのは、ほかの楽器に換えてしまうとフレーズの色が変わってしまうからです。
 ある楽器メーカーは、A管で低音のCまで出るバセットクラリネットを作りました。この楽器は稀に見るすばらしいもので、モーツァルトのコンチェルトをオリジナル版で吹くことができます。スイスのクラリネット奏者、シュタルダーの録音があります。
 
E♭アルトクラリネット
 アルトクラリネットは吹奏楽やクラリネットアンサンブルなどの室内楽で使われています。中音域に独特の響きがあり、最近特にその評価は高まっています。
 
Fバセットホルン
 B♭クラリネットより4度低いバセットホルンは響きがたいへん魅力的で格調にあふれ、モーツァルトはこの楽器を宗教音楽にみごとに取り入れています。
 また、この楽器にはなにか神秘的なものが感じられます。そういう意味でモーツァルトの『レクイエム』の2本のバセットホルンのパートをクラリネットに代用してしまうのはちょっともったいないです。
 モーツァルトのオペラ『ティトの仁慈』や、2本のクラリネットと3本のバセットホルンのための『アダージオ』、有名な『13管楽器のセレナーデ』などのすばらしいソロを是非聴いてみてください。
 
B♭バスクラリネット
 バスクラリネットの響きにはとても風格があり、厳粛で豊かな感情に満ち溢れています。また、見事は音の同質性があって、まじめに専門化が要求される楽器です。
 この楽器には低音域のE♭まで出るものと、さらにその下のCまで出るものがあり、後者は現在最も多く使われています。ロシアのほとんどの作曲家たち(ショスタコヴィッチなど)は自分の作品の中でLow Cまでの音を書いています。
 また、A管のバスクラリネットもあります。B♭管のバスクラリネットより感じのいい、きれいな音ですが、この楽器もまた移調しなければなりません。
 
E♭コントラアルトクラリネット・B♭コントラバスクラリネット
 バスクラリネットよりもさらに大きく、多くの場合、軍楽隊で使われています。クラリネット族の中では重要な役割を果たし、特にクラリネット六重奏などの室内楽では欠かせない楽器です。
 最近、現代音楽にも使われ始めています。低音域は豊かで並外れた深さがあります。
 シェーンベルクのオーケストラのための5つの小品やヴァーレーズの作品、あるいはクセナキスのノモ・ジャンマ(Nomos Jamma)の中でコントラバスクラリネットが使われています。
 大学時代の2年間、吹奏楽で僕もコントラバスクラをふいていました。コントラアルトはまだバスクラに近い感覚で吹けるのですが、コントラバスクラはちょっとちがった感じでした。キィの間隔もかなり広いので、手の小さな女性だと演奏するのは少々きついかもしれません。
 
 

5    リードができるまで
 リードは「葦(あし)」でできています。レッスンのとき生徒に質問してみると「竹?」という答えが返ってくるケースが多いんですが、そうではないんですね。クラリネットはそれを振動させて音を鳴らします。そのリードが良いか悪いかは、その材質の硬さや均等性、葦の繊維の細かさ、あるいは乾燥の状態やリードのカットなどによって決まってきます。アランド・ナックス(Arundo donax)という学名を持った葦は、特に南フランス地方のバール県で多く栽培されていて、葦からリードを作り始めたのはこの地方が最初だといわれています。また、クラリネットのリード作りにはフレジュ(Frejus)で採れる葦が最も適しているようです。その葦を加工してリードは作られているのですが、その工程を説明していきたいと思います。
 
 まず最初に束にして乾かされたケイン(葦の茎)は、何ヶ月か後に大雑把に切られます。この作業は刈り入れてからすぐにはできません。というのは、原材はまだ青いので節目が割れてしまう危険があり、たいへん難しいからです。
 ある程度乾燥したら、電動のこぎりで1m20pから1m80pくらいの長さに切断していきます。そして、もう一度束にして乾燥させ、残っている葉っぱや枝をきれいに取り除きます。そのとき、表面にはどんな小さな傷もつけないように注意しなければなりません。
 次に、それを1本1本並べて太陽の下で乾かすのが、作業する人たちが毎日4分の1回転の割合で茎を回して太陽の光をまんべんなく当てていきます。
 表面全体に、太陽の直射日光と南フランス地方に昼の間吹く特別な風(ミストラルの風)を受けて乾燥したケインは、屋根のある吹き抜けの納屋に入れられて、少し寝かせた後、電動ののこぎりで節から節へと切断されていきます。リードを作る材料となる筒はこうしてできあがります。
 次に、その筒からリードが作られていく主な過程を順番に上げていきます。
 
@葦の筒
A筒を縦に割る
B機械に入れて削る
Cのこぎりにかける
D機械に入れて裏面をカンナで平らに削る
E両側面を切って幅を整える
Fフライス盤にかける
G斜めにカットする
H機械に入れて削る
I仕上がり
 
 質の良いリードは、シューとかヅーというような雑音のないすっきりした音が出て、ピアニッシモからフォルテッシモまであらゆるニュアンスが吹けるものでなければなりません。
 しかし、新しいリードはちょっと吹いただけでは分かりにくく、しばらく吹いているうちにだんだん質が変わってきてマウスピースや楽器に少しずつなじんできます。

6    リードの選び方、保存方法、削り方
リードの選び方
 
 リードを選ぶには、まずG(ソ)の音を吹いて試してみましょう。音が出やすければ、レジスターキイを使って広い音域で数回速く吹いてみてください。こうして試してみると、リードミスが出やすい「できの悪い」リードを見分けることができます。
 リードを試し吹きするときは、初めに吹いた感じが少し抵抗があって吹きにくいと思っても、十分腰のあるリードを選ぶようにしましょう。簡単に音が出てしまうリードは初めのうちは気分がいいけれど、それほど長くは続かず、リードが湿ってくると演奏ができなくなり、高音はひどい音で音程がぶらさがってしまいます。「簡単に音が出しやすいリードが良いリードではない」ということに注意してください。このことは、正しい呼吸で十分圧力のある息を使えているかどうかということ、そして正しいアンブシュアにもつながってきます。
 また、良いリードを選ぶには「音色を聴き分けられる耳」をもっていることも重要です。常に自分の音色に気を使って演奏できていれば自然と身に付くことだと思います。
 
良いリードをみつけるには
 
 1枚のリードがマウスピースに合うことは、マウスピースの反りと、柔軟性のあるリードの正確なポイント(抵抗点)によって決まります。同時に、口腔や口の筋肉、唇、歯などの構造や息の圧力などにも関係があります。
 しかし、なによりもまずアンブシュアがしっかりしていれば良いリードを見つけ出すチャンスは大いにあり、それによって良い音色にも恵まれるというわけです。
 
リードの保存
 
 クラリネット吹きはいつも自分に合ったリードを数枚持っていなければなりません。いつまでも同じ1枚のリードで吹かないようにしましょう。
 というのは、1枚のリードだけに慣れすぎてしまうと、後になって別のリードに替えるのが難しくなってくるからです。1日に数枚のリードをかわるがわる吹く習慣をつけるようにするといいでしょう。
 リードを長い間良い状態に保つためには、リードをプラスチックや金属、ガラスでできたリードケースの平面にのせ、いつも平らにして乾かしておくことを薦めます。
 
リードの削り方
 
 ここで、いくつかのリードの削り方について話しましょう。まず注意しなければならない点が2つあります。
 
・ リードの先端のほとんど平らな薄い部分はいじらないこと。工業用のダイヤモンドを使ったフライス盤で、表面が充分に薄くなめらかにしてあるからです。
・ 斜面の厚い部分を修正するときは、リードの先端に向かっていつも同じ方向に削っていくこと。
 
@厚いリード
 リードが厚いときは、平らな板(テーブルの上でもOK)の上に紙ヤスリを置き、その上にリードの裏面をあてて少しずつ慎重に削ります。このときに、リードの先端の上に指をのせないこと。指をのせている部分がより薄く削られます。削りながら必ず吹いて試してみること。リードの裏面が滑らかになっているのを確認してみてください。
 
Aリードがつまったり、リードミスが出やすいとき
 こういうリードは先端の右側と左側の厚さが違うので、明るいところで透かしてみて厚いほうの部分をリードの先端の方向に削って調整しましょう。(図@)
 
B薄すぎて弱いリード
 この場合、リードを削る方法を見つけるのは難しいです。はっきり言って。当然のことながらリードが薄ければそれ以上削るのは無意味だからです。リードカッターというものがあるので、それを使って先端をカットする方法はあります。
 すこしずつ切りながら吹いて、それでも薄いようならそのリードはあきらめて他のリードを選ぶしかありません。
 
C音が暗すぎるリード
 音を少し明るい感じにしたいときはリードの先端から3o〜4oの部分(抵抗点)を削ってみましょう。図Aに示した部分を削ってみるといいと思います。
 
D鳴りが悪いリード
 音がつまったり響きの悪いリードは、図Bの部分を円を描くようにこちょこちょっと削ってみてください。効果を得られるかもしれません。
 
 慣れてくると、吹いた感じで、リードのどのあたりをどれくらい削れば吹きやすくなるかがわかるようになってきます。以上の説明を組み合わせて色々な部分を削ってみてもいいと思います。とにかく経験を積むことが大切です。失敗を恐れずにどんどん挑戦してみてください。
 
●ヒールとは?
 
 リードのヒールといわれている部分はとても重要で、ヒールが3oあると音が丸くなるというのは興味深いことです。実際、これは根拠のあることで、逆にヒールが薄くなればなるほど音は明るくペラペラな感じになってしまいます。
 ヒールをもう少し違う方法で探ってみましょう。例えばヒールを2pほど切ってしまうとどうなるでしょう。そのリードは強さがなくなり、ほとんどリード自体が無いに等しくなります。
 これらをみても分かるように、リードのヒールが音質にたいへん関係があり、その部分を固定するリガチャーとその役割がいかに重要であるかを理解できます。
 ドイツの人たちが細いひもを巻いてリードを固定するやり方は理屈にかなっているわけです。金属製のリガチャーはリードの振動を止めてしまう傾向にあるようです(しかし、最近では金属製でもよく鳴るリガチャーが増えてきている)。そういった意味では合成皮革などの材質で作られたリガチャーはたいへん効果があるようです。リードの振動を助け、音を丸く柔らかくしてくれるからです。僕も、自分のイメージに近い音が出せるので、この合成皮革のリガチャーを使っています。



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