中小零細企業への補完金融は
地域経済の活性化に不可欠、
間接融資では補えない

 私たち政府系金融機関労働組合(政金労)は、『国民生活金融公庫を民主化し「国民に役立つ公庫」をつくる運動を行う』ことを方針に掲げて活動しています。
 いま小泉内閣は、政府系金融機関の整理合理化計画の策定に取り組んでいますが、政策金融にたずさわっているものから見た問題点等について考えてみたいと思います。
<はじめに>
 中小企業は日本経済の主役で、重要な役割を担っています
                           (中小企業白書2002年版から)

 

実  態

構成比

企 業 数 割合

  4,836,764企業

99.7%

従業員数  割合

27,073,036人

66.4%

製品出荷額 割合

  1,535,100億円

51.2%

卸売業販売額割合

  3,086,180億円

62.3%

小売業販売額割合

  1,054,230億円

73.3%


 中小企業については、中小企業基本法の基本理念で『我が国経済の活力の維持及び強化に果たすべき重要な使命を有するもの』と位置付け『多様で活力ある成長発展が図られなければならない』と明言されているとおり、日本経済の基盤としての重要な位置と役割を担っています。
 私たちは、中小企業への補完金融を推進することで日本経済の発展に大いに貢献していることに確信と誇りをもつとともに、融資や債権管理のあり方などについて常に切磋琢磨し努力することが求められています。

T、政策金融の整理・縮小は中小企業基本法に抵触する
 中小企業基本法は、36年ぶりに見直され平成11年12月に改正されました。この新中小企業基本法の第4節第23条(資金の供給の円滑化)では次のように謳っています。
 第23条 国は、中小企業に対する資金の供給の円滑化を図るため、政府系金融機関の機能の強化、信用補完事業の充実、民間金融機関からの中小企業に対する適正な融資の指導その他の必要な施策を講じるものとする。
 @このように国に対して政府系金融機関の機能の強化を義務付けており、中小企業の多様で活力ある発展のためにも政策金融の整理・縮小ではなく、機能の充実・強化が必要と明示しています。
 A信用補完事業についても、信用保証協会の保証制度を支えている信用保険の収支は、13年度6000億円の赤字を計上し保険準備金の残高は5800億円に減少しており、14年度には枯渇して制度を維持することが難しい状況になっております。
 B加えて民間金融機関の貸出残高は95年末と01年末を比較すると62.5兆円(18.6%)も減少しており、中小企業基本法が全く尊重されておりません。
 このように中小企業基本法で定められている資金の円滑な供給は、どれも大きな問題点を抱えていますが政府はこれを厳しく受け止め中小企業基本法第23条を遵守する立場で政策金融・補完金融の充実・強化を図るよう取り組むべきです。

U 民間を通しての間接融資では、補完金融は衰退する
 国民金融公庫(環境衛生金融公庫と統合前)における普通貸付の代理店(民間金融機関)扱の融資残高について、88年度と98年度を比較すると、件数は202千件から90千件(44.6%)に、金額は6128億円から3926億円(64.1%)にいずれも減少しています。
 この実績を見る限り民間金融機関を通しての間接融資では実効ある補完金融が遂行されるか非常に疑問があります。
 バブル崩壊後民間金融機関においては苦難の日々が続いています。96年11月〜02年3月の間に160もの信用金庫、信用組合等が破綻しています。さらに現在708ある金融機関を03年3月までに合併や統合などで650に減らすともいわれており、また、日本銀行は、銀行が保有する株式を買い上げるという世界でも例がない「禁じ手」を発表するなど、日本の金融システムは先の見えない不安定な状態にあります。
 このようななか地域経済の安定からも政策金融機関とくに中小・零細企業向けの安定した資金供給が重要となっており補完金融は必要不可欠の存在といえます。

V 低金利、長期間融資は補完金融の使命
 公的資金が投入された民間の中小企業向け貸出は、01年度は2310億円増加の計画でしたが、実績は▲5兆996億円となりました。貸し渋りや貸しはがしが横行したため巨額の5兆円もの資金を逆に吸い上げており、中小・零細企業の企業倒産に拍車をかけています。政府の指導も無視するかのような勝手でわがままな行為は容認できず、社会的にも何らかの責任が追及されるべきでしょう。
 民間金融機関からは政府系金融機関の中小企業向け貸出市場のシェアが約9%と高いとの批判もでていますが、これは民間金融機関の貸出が大幅に減少していることが大きな要因です。01年末の政府系のシェアは中小企業向け総貸出残高がピークだった95年末の残高で比較すると8.0%となりますが、01年末の総貸付残高での比較では9.6%となります。民間は貸出残高を95年末から01年未までに62.5兆円も激減させていることが政府系のシェアを上げる結果となっており、自らの貸出姿勢を棚上げにした一方的な批判は詭弁ともいえます。
 私たちは、体力も信用力も弱い中小・零細企業への融資は、総てに競争の原理を当てはめることは公平とはいえず、金融政策や中小企業政策として、より低い金利や長期間の融資を保証すべきで、それは政策金融や補完金融の使命でもあり今後とも堅持すべきと考えています。

W 政策金融・補完金融が整理・縮小されたら高利金融が繁栄する
 政府の指導でこれまで行ってきた不良債権処理は、中小・零細企業への貸し渋り貸しはがしを横行させ企業倒産の増加を導き地域経済を大混乱させています。このようななかで踏ん張り支えなくてはいけないのが政府系金融機関であり補完金融ですが、政府は「行政改革」を断行すると言明しています。
 「行政改革」の名のもとに国民生活金融公庫などの政府系金融機関が整理・縮小・廃止されれば資金供給が細くなり、中小・零細企業は運転資金など資金調達が一層困難となり、高利金融業のノンバンク(商工ローン、サラ金など)やヤミ金融を頼らざるを得なくなるでしょう。マイナス成長やデフレ経済下での高利金融の繁栄は日本社会の暗部でもあり強い憂慮を抱きます。
 このような事態を防ぐためにも中小・零細企業向けの政策金融・補完金融は整理・縮小することなく充実・強化を図るべきです。

X O2年2月に国民生活金融公庫に提出した私たちの要求
 (業務に関する要求)<抜粋>
  @総ての貸付制度について、無担保・無保証人制度を導入すること。
  A資本金を1兆円に増資し、公庫の基盤、機能を強化拡大すること。
  B貸付金利の引き下げ、長期で十分な資金を確保し、簡便な審査と迅速な融資を公平に行うこと。
  C高利借入金対策の融資制度を創設すること。
  D不良債権の償却を適正に実施すること。

Y 行政改革に対する政金労の基本方針
 1、中小・零細企業の成長と発展をめざし政策金融を推進する。
 2、中小・零細企業への補完金融は直接融資を基本とする。
 3、融資は長期、低利、十分、迅速、公平の5原則を堅持する。
 4、総ての業務で中立、公平を堅持する。
 5、支店の統合などを含め、国民サービスの低下につながる行政改革には反対する。
 6、一方的な労働条件の改悪には反対する。

2002年10月15日
政府系金融機関労働組合
中央執行委員会