私の書架2003年(4)

2003.8.  HOOT カール・ハイアセン 2 
悪役が類型的で陳腐。子ども向けだから仕方ないのかもしれないが、ユーモアのセンスも上質とは思えない。何より、うすっぺらなエコロジーに辟易。大手パンケーキチェーンの出店予定地に微笑ましく愛らしいナントカフクロウの親子が巣を作っていて…というのだが、フクロウに心を動かされていく人たちの感情的で独善的な反応が、とてもうさんくさい感じ。これが気持ち悪いヘビの親子だったらどうなのさ?って、小学生でも聞きたくなると思う。
2003.9.  放送禁止歌 森達也 4+ 
 著者の、ジャーナリストとしての誠実さにうたれる。取材を受け、放送業界の幹部が自問する姿もまた誠実である。放送に関わる人がみなこのような誠意をもっているのなら、私たちはテレビのようなメディアにもっと期待してもいいのだろうが…。
 考えることをやめて自ら規制を求めていく安易な姿勢は、マスコミに限ったことではない。その意味で、我が身を振り返る機会にもなった。巻末の「文庫版のためのあとがき」も、悲観的になりがちな私を勇気づけてくれる素敵な一文である。
2003.9.  A 森達也 4
 書かれた内容自体はさほどインパクトはないが,主題に強く共感する。現代社会はその排他性、独善性、短絡性においてオウムに酷似している。そして、そのことこそが危険なのだ。
 井田真木子の「小蓮の恋人」の感想に、“安易に結論に結びつけたり理解したふりをしない”姿勢が好きだと書いたが、「体験を拙速に加工せずに」(〜本書文庫版・宮台真司による後書き)自分の言葉で考えようとする森達也の誠実さにも、ジャーナリストの本質をみるようで救われる思いがする。
 「様々に加工され装飾された憎悪が、世論や良識などの衣を纏いながら…(中略)…市民社会という共同体の重要な規範を無自覚にコントロールし始めている」。私自身が現代社会に抱く危機感もまさにその点にある。
 研究誌「更生保護と犯罪予防」No.145で田中和哉が触れている「あいまいなものに耐える強さ」という言葉も、思考停止しないこと、問い続けることの力という意味で同義であろう。自分も、このような強さを持ち続けたい。
2003. 9.  真剣師小池重明 団鬼六 3
 将棋の子や聖の青春のような爽やかさはない。
2003. 9.  きよしこ 重松清 4
 いつものパターンだが… 「ゲルマとギンショウ」がよい
2003.10.  坐漁の人 諸田玲子 3
 ご当地もの 登場人物の魅力が伝わらない
2003.10.  よりぬき読書相談室 本の雑誌編集部 評定番外
 また未読本が増える…


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