ミステリー国内


泡坂妻夫 ともかく手品っぽいトリックは一級品。でも男女の機微のある作品がすきな作家さんです。直木賞をもらった「影桔梗」などは最高。元手品師の出てくる「奇術探偵曾我佳城全集」はトリッキーから人情まで、初期作品は好きですね。古い作品では「乱れからくり」や「亜愛一郎の転倒」「亜愛一郎の狼狽」「亜愛一郎の逃亡」などがお勧め。

有栖川有栖
暗い宿 角川書店 このごろ有栖川の宮の詐欺事件がありましたが、それとは関係ない方です。月光ゲームでデビューした、
本格推理小説家です。今回の暗い宿は旅館ホテルなどを舞台にした、短編小説集です。この作者は密
室などもありますが、大掛かりなものは少なく、実際に出来そうなトリックが多いです。作者が作中に出て
いますが、ワトソンのあつかいです。火村という犯罪社会学助教授が主人公ですが、なかなかクールな人
間です。その割には芯には暖かい物を持っているのがわかります。なかなかいい推理小説です。
絶叫城殺人事件 新潮文庫 久しぶりの有栖川有栖の新刊です。6個の短編からなる短編集です。本格のクイーンの後継者を目指している作者の手堅い1冊です。しかし、大トリックもなく、小粒な物という感じを受けます。まあ大トリックがない分気軽に楽しめますが・・・。森博嗣とか京極夏彦のように読むぞーという気合はいりませんね。

上遠野浩平 主にファンタジー?画主流の作者。現在1作のみで着ていて、短編集だけどもいい味を出している。ほのぼの不気味系?の人。必読。ファンタジーはブギーポップが最高にいいかんじをだしている。
・「しずるさんと偏屈な死者たち」


京極夏彦 第一作「姑獲女の夏」からはまりました。妖怪が合理的に説明されているのがすごい。ネックは情報量が膨大なこと。最新作
「陰摩羅鬼の瑕」は749ページにもなります。書痴向きの本といえます。書かれている視点は場面ごとに変わり、人間の脳や思
考について考えてしまう感じがします。登場人物の視点に立つと自分がだんだん狂気にとらわれるような感覚になってしまいま
す。探偵役の「京極堂」は古本屋を営む神主で、曳き物落としをする陰陽師でもあり、最後の瞬間に読者の憑き物も一緒に払
ってもらえる感覚が快感です。「この世には不思議なことなど何もないのです。」が決めせりふです。登場するもう一人の探偵
「榎木津礼次郎」は正に神のごとき名探偵でしょう。何しろ結果だけ見えてしまうという、霊能探偵のような探偵です。トリックス
ターというか、ジョーカーのような存在です。正に言霊のような小説、なんてね。
・京極堂シリーズ「姑獲女の夏」「魍魎の匣」「狂骨の夢」「鉄鼠の檻」「絡新婦の理」「塗仏の宴 宴の支度「塗仏の宴 宴の始
末」「百鬼夜行ー陰」「百器徒然草ー雨」「今昔続百鬼ー雲」「陰摩羅鬼の瑕」
・その他「哂う伊右衛門」
続巷説百物語 中央公論新書 実はこの本は何ヶ月か眠っていました。何しろあの厚さですから・・・。読むにも一苦労です。しかし読み始め
たら一気に3日がかりで読んでしまいました。「巷説百物語」の続編ですが、相変わらずのキャラが面白いで
す。ある意味「宮部みゆき」の感じの本です。この作者の特長でしょうが、妖怪、怪異が人間の未知への恐
怖を名前をつけることによって解決している部分があり、「京極堂シリーズ」に通じています。また、名をつけ
るというのは「夢枕獏」の「陰陽師」に通じています。しかし、結局世の中の表と裏は交わっても混ざらないの
も似ています。ちなみにアニメ化されて、秋より毎日放送系で夜中にやっています。こちらでは見れないのが
悲しいです。

加納朋子
螺旋階段のアリス 文芸春秋文庫 久しぶりに加納朋子を読む事が出来ました。「7つの子」などのようなほのぼのミステリーに分類されます。家族のあり方。夫婦のあり方。さまざまな家族、夫婦が出てきますが、その中のありよう心の動きを主人公の、脱サラ探偵「仁木」と押しかけ探偵助手の「亜理紗」が解決しながら物語りは進み、最後には自分たちの謎にかかわります。この作者に共通の心は温まる連作ですが、透明感のあるミステリーに仕上がっています。

北森鴻
顔のない男 この人のは光文社の「本格推理」で始めて読みました。面白いのは「メインディッシュ」です。料理の部分のうまそうな描写が食欲をそそります。この作品は趣を変えて刑事の物語ですが、1場面ごと独立したお話になって、しかも全体ではつながっていると言うタイプの本格ミステリーです。被害者が、名前・住所以外の、私生活を調べても見えてこない生活をしています。それに絡んで、独立した事件が見えて発生してきます。その被害者の残したノートを元に、主人公が真相に迫ります。最後のほうまでたのしめます。

鯨統一郎
あすなろの詩 角川書店 この方は「邪馬台国はどこですか」でデビューした作家です。はっきり言って今回のこの本の結末はちょっとと思いました。好きになれません。文章がいいのにもったいないです。あんまりわけをいってしまうとネタばれになるので書けませんが、ちょっと実際観がないです。最初の章とつぎの「殺戮の章」がいいのにもったいないです。動機の面で納得できないです。この方の本だとやはり「邪馬台国はどこですか」「なみだ研究所へようこそ」でしょうね。


関田涙
刹那の魔女の冒険 講談社 関田涙の3冊目の本です。はっきり言って本格好きな僕としては気に入りません。いわゆる階層小説というような
出来です。ちょっとファンタジーが入っています。全2冊のほうが好きですね。太田忠司の「新宿少年シリーズ」な
どが好きな方は向いてるかも。


田代裕彦
平井骸惚此中ニ有リ 富士見ミステリー文庫 まずは大正の頃のお話です。帝大生・河上太一は今をときめく推理作家・平井骸惚の本に出会い増す。そし
て弟子入りを志願。認められずにいたところ、骸惚の知人、池谷是人が不可解な自殺。その事件解決の折に
は弟子入りを認められる河上。とまあこんなところですが、骸惚の娘との掛け合いや、ほのかな恋?模様。ず
んすいなトリックで本格しています。しかし、ネックとしてはもっと掘り下げて濃く書いていればより本格を楽し
める感じです。登場人物がやや薄っぺらい感じがします。

柄刀一
殺意は砂糖の右側に 祥伝社 この作者のはこれがはじめて読みますが、天才「天地龍之介」の第1冊目です。本格物で、内容が平易で、科学トリックか
ら物理トリックが出てくる正統派本格です。近頃珍しく心理トリックをあまりつかわないというのがなかなか気に入ってしま
いました。続いてぜひとも読みたいと思った1冊です。
殺意は幽霊館から 祥伝社 これも天才、天地龍之介シリーズです。トリックが科学的に説明されるのが良いですね。事件としては小さいですが、なかなか読ませてくれます。龍之介と私、天地光章とその恋人、長代一美さんがひなびた温泉宿1泊旅行。そこで夜、間欠泉の見物に行くと、近くの幽霊館とうわさの建物の空中で幽霊らしき物を見る。そこで行ってみると小学生が引率の先生と肝試し。そこでも窓から落ちる幽霊を見る。翌日3人の目の前で事故車のトランクよりしたいが・・・。しかもその死体は昨日の幽霊?容疑者は光章と一美。さて・・・という感じです。中篇ですので、やや薄い感じがします。短編の方がいい味があるあるきがします。


はやみねかおる 児童文庫が主力の作家ですが、ちゃんと本格しています。息子がも少し小学校高学年にでもなったら読ませたいです。お好みは「少年命探偵虹北恭介の冒険」です。日常のなぞと、周りの登場人物の暖かさがいいです。また作者が小学校教師なので、救いのない話がすくないので全体的にお勧めです。
・名探偵夢水寄与志郎シリーズ「そして5人がいなくなる」「亡霊は夜歩く」「消える総生島」「魔女の隠れ里」「踊る夜光怪人」「機巧館のかぞえ唄」「ギヤマン壺の謎」「徳利長屋の怪」「人形は笑わない」「ミステリー館へようこそ」「あやかし修学旅行」
・少年名探偵 虹北恭介の冒険シリーズ 「少年名探偵 虹北恭介の冒険」「少年名探偵 虹北恭介の新冒険」「少年名探偵 虹北恭介の新々冒険」
・[バイバイスクール」

早見 裕司 Mrサイレントが面白いです。はまりました。主人公の声の出ない探偵がいい味を出しています。日常の謎がいい感じです。ネット社会のなかの現実を主題にしているようで、面白いです。ちなみに土曜日に4巻を買ってみて読みましたが、それから面白くて1日で1巻〜3巻までを買ってしまい、一気に読んでしまいました。ぜひお勧めの1作です。


森博嗣
四季 秋 講談社新書 この本は、森博嗣の最初の「すべてがFになる」からのすべてのシリーズに連なる関係が明らかにされます。なるほどと思ってしまいました。しかし犯人?である「まがた四季」という超天才の部分はある意味なるほどと納得してしまいます。しかし突き詰めて考えていくと頭が変になりそうです。この作者の淡々とした表現は癖になりますね。

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