お魚採り

  私達が採集する魚は主に初夏から晩秋にかけて黒潮にのってやって来
る熱帯性海水魚で、死滅回遊魚と呼ばれる魚です。彼等は南の海で産み落と
された卵又は仔魚の状態で黒潮に乗ってはるばる旅して来た末に、関東以南
の海岸に漂着し冬までの短い時を過ごすのです。だからといって「どうせ死ぬ運
命だったのだから」という気持ちで飼ってはいけません。狭い水槽で人に飼わ
れるより、僅か半年でも広い海の中で伸び伸びと泳いでいた方が彼等にとって
幸せなのかもしれません。採集は自分が管理できる範囲内にとどめるべきで
す。
 彼等は伊豆半島や三浦半島、外房などに毎年6月頃から姿を現します。その
年の黒潮の流れによって、沢山の魚が流れ着いたり、珍しい種類が多かった
り、殆ど姿を見なかったりと、必ずしも顔ぶれは毎年同じではありません。しか
し、同じ種類の魚が同じ場所に大体居着いています。また来年もそこに来て貰
えるよう、採集のためにその環境を破壊してはいけません。
私の所属するコバルトクラブでは、採集地の保護、環境破壊の禁止、漁師や釣
り人とのトラブルを避ける事が会の規則となっています。我々の孫子の代までこ
の美しい海辺を残していきたいものです。
 海水魚の採集は一般的には2本のタモ網を使います。また、私の所属するク
ラブでは特殊な網を使ったりします。何れにしても魚は追い回すのではなく、網
にうまく誘導してやることが基本です。水の中は彼等の方が得意。無理に追い
かけてもヒラリヒラリとかわされてしまいます。彼等がホッとして飛び込んだの
が実は網の中、という風に如何に網の中へ追い込むかを周囲の状況や自分の
位置などから計算する必要があります。それには数多く磯に通い、経験を積む
ことが最も重要かもしれません。自分のシナリオ通りに事が運んだ時は思わず
「やったー」と声が出てしまうこともあります。特に珍しい魚を追う時など自分の
心臓の鼓動が聞こえてくるほどです。お魚採りは楽しむものです。



一見ただの磯の風景ですが、水の中には南の海からの贈り物が・・・


                             
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