フットボールが好きな人にとっては、「ダービー」という言葉はもはや常識であろう。 簡単に言えば、同じ町や都市に本拠地をおくチーム同士の対戦であり、試合自体も 白熱することが多い。2004年のチャンピオンズリーグ準決勝、アーセナル対 チェルシー戦の際、「イングランドダービー」や「プレミアダービー」なる言葉がよく聞かれたように、 現代においては同じ地域、同じ国と解釈が拡大されている。

中世から19世紀にかけてイングランドでは、祝祭日に村中をフィールドとしてボールを運びあう「フットボールが」行われていた。 その中でももっとも盛大で激しく行われていた町が、イングランド中部のダービーであったことに始まる。 当時のダービーでは、セント・ピータースとオール・セインツという二つの教区によって行われる対抗戦という形式をとっていた。 つまり、同じ町の中の二つの「チーム」が争っていたということで、後に同じ町、市のチーム同士が戦う試合にこの名がついた、とされている。

競馬の「ダービー」はダービー卿という人物から派生した言葉だが、サッカーの「ダービーマッチ」も、 この言葉から始まったとする説もあり、英国の書物でもそう明記しているものもあるが、フットボールの歴史的な背景からして、 地名の「ダービー」説が一般的になっている。

数あるダービーの中でも1、2を争う激しさとなるのがこの対戦。 もともとトッテナムがいたロンドン北部にアーセナルが後から移転してきた経緯があり、しかもアーセナルの 本拠地はトッテナムの本拠地と目と鼻の先。そのために両チームのサポーター間の敵対意識は凄まじい。

ロンドン西部においては、チェルシー、フラム、QPR、ブレントフォードがそのエリアでの覇権を巡って対立を続けている。 特にフラムはチェルシーに対して特別な敵対心を持っているが、アブラモビッチの買収によってビッグ3の仲間入りをした チェルシーにとってはあまり興味がないようである。

ロンドン東部ではウェストハム、チャールトン、レイトン・オリエントが覇権を争い、ロンドン南部においては ミルウォール、クリスタル・パレスが対立している。しかし、これらのチームは単に同じ地域にある、というだけで 争っており、アーセナルとトッテナムの間にあるような背景は特にない。