大井川を越えると東海道二十四番目(静岡県十四番目)の宿、金谷だ。ここで、何とも心温まる郷土料理に出会った。
「菜めし田楽」。大根の葉っぱの混ぜご飯に、豆腐の田楽を添えただけの料理である。そもそも食物が乏しかった時代、飯の量を増やすために根菜を加えるという発想から生まれた菜めしは、旅人相手の食べ物商いが盛んになるにつれ、洗練された割烹料理になった。菜の薫りを楽しむご馳走となったのだ。金谷の郷土料理店「よし善」で、菜めし田楽の作り方をうかがう。
菜めし田楽は、大変手間のかかる料理だ。大根の葉っぱを湯掻いて冷水にさらし、ざるにあげて切り刻み、厚手の鍋で一時間ほど空煎りしてからご飯に混ぜるのだ。
「昔は殿様にお出しする料理でした。庶民は生の葉を混ぜて食べたようです。手間ひまかけることで、遠くから来たお客さんをもてなす料理として伝わっています」
一見つましく見えるが、菜の薫りがきいた炊き立ての菜めしは、お腹も心もあったまる。高い素材を使うばかりがご馳走ではないことを感じさせる料理であった。
1998.11 NOVEMBER L&G [ 特集 ] 静岡より