act.6 刻と光の神官


 「・・・『魔導書』が眠りから解き放たれた・・・」
 夢見るような言葉。淡く開かれた口元から発せられた言葉。
 「・・・!・・・『神託』か!?・・・魔名ちゃん!!」
 「・・・聞いてるよ、大丈夫」
 虚ろな瞳が真っ直ぐ空を見ていた。何も映さない瞳。
 「・・・右狂・・・何が見えるの?」
 虚ろな瞳は何も映さず、ただ静かに応える・・・。
 「・・・『刻と光を司る者・・・それだけでは夢から醒めない・・・。二冊の『魔導書』ありし時、夢から目覚める・・・』」
 「・・・『魔導書』?」
 「・・・刻の世界に在りし風の能力・・・これを持ちて、『嵐の魔導書』と呼ばん・・・。光の世界に在りし闇の能力・・・これを持ちて、『眠りの魔導書』と呼ばん・・・。それぞれの『守護者』はその能力を各々に秘めし・・・」
 そこまで云って、右狂は意識を手放した。
 「右狂!!・・・意識が飛んだか・・・」
 「・・・いいよ、これで幾つか判った。足りないものがあると云うことさ。必要なのは『神託』それぞれの魔力なのかもな」
 「・・・どう云う事?魔名ちゃん」
 「・・・『刻と光を司る者』・・・目覚めに必要なのは2つの『魔導書』と・・・それを正当に引き継いだ『後継者』たち。そして・・・おそらく『刻と光の神官』」
 「何だって・・・!?」
 「・・・今ので判っただろう?紅司。・・・右狂ははっきり云った。『魔導書が解き放たれた』と。・・・つまり、右狂は・・・『魔導書』と密接なかかわりを持っている」
 「・・・うん」
 「・・・つまり・・・もう一人・・・対極にあって最も近き存在・・・『刻の神官』もその能力を有する、と云う事だ」
 「まさか・・・っ!!」
 「・・・そう。・・・『神官』はおそらく・・・『鍵』としての能力も有する・・・」
 「なるほどね・・・。でも、魔名ちゃん・・・その『刻の神官』をどうやって見つけるんだ?」
 「・・・大丈夫・・・。知っているから」
 「え?」

 意識を失った楽斗を見遣り、舞紗が溜め息をつく。眩葉と結城は何時の間にか姿を消していた。あの恐ろしい程までの魔力。神威の魔力。
 「・・・ガク、大丈夫なのかな・・・?」
 蓮が不安そうに呟く。血は繋がらないとは云えど、ずっと一緒に育ってきた兄弟。
 「・・・きっと、大丈夫さ。・・・神威に負けない限りは」
 有羽が呟く。・・・神威に負けない限りは。・・・あの魔力は恐ろしい程。
 「・・・う・・・」
 「ガク!?」
 「・・・った・・・」
 頭を抑えながらよろよろと楽斗が起き上がる。
 「大丈夫?」
 心配そうに舞紗が見つめる。
 「・・・大丈夫だよ。・・・舞紗」
 「・・・良かったぁ・・・」
 蓮が安堵の溜め息を漏らす。
 「・・・ガクちゃん・・・大丈夫?本当に・・・」
 「大丈夫だよ。心配しないで」
 「・・・うん」
 
 ドクンッ!!!
 「・・・・・っ!!?????」
 舞紗がゆっくりと倒れた・・・。突然。胸を抑えて。
 「・・・舞紗っ!?」
 「・・・っく・・・」
 激しい痛み。身体中が痛い。何で・・・?これは・・・反発力・・・?まさか・・・。
 「・・・舞紗っ!!」
 「・・・さ・・・かっ・・・な・・・で・・・!?」
 「舞紗!!大丈夫!?どうしたの・・・!?」
 「・・・反発力だよ。・・・それに僕が魔力を加えた・・・。ね?右狂」
 「・・・はい・・・」
 虚ろな紫の瞳。
 「・・・誰!?」
 「・・・魔名・・・?」
 有羽が微かに呟く。
 「・・・魔名って・・・舞紗の!?」
 「・・・久し振りだね・・・有羽・蓮・舞紗・・・それに・・・楽斗。いや、神威・・・」
 「・・・!!!・・・」
 「・・・こっちは紅司。腕のいい盗賊だ・・・今の僕のパートナー。・・・それから・・・右狂。『光の神官』だ」
 「・・・!!!」
 「・・・神官同士は近付くと反発力を受けて魔力が落ちてしまう・・・そこに僕の魔力をかけた・・・。だから・・・舞紗は動けない・・・」
 「・・・っ・・・く・・・何が・・・っ、・・・っで・・・!?」
 「・・・簡単さ・・・『夢のかけら』が欲しいからさ・・・」


     久々登場!!・・・Masaくん、ごめんなさい・・・苦しみながら『つづく』です(汗)kamiちゃんとMasaくんにも実は秘密があったんですね〜♪   
     今回、3周忌で書きました・・・。次も出来るだけ早く・・・(汗)


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