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オニのおにぎり

おにぎり屋さんのおじさんはオニなのかな、とケンくんは思いました。
絵本で見たアカオニに似ているような気がしたのです。人間と仲良くなりたがっていたアカオニです。
それならぼくは仲良くしよう、とケンくんは思い、おうちに急ぎました。

「おい、おにぎりにいれたクスリは間違いなく効くんだろうな」
店の奥に入るなり、赤ら顔の男は声をあげました。
「大丈夫。明日の朝には、町の人間のほとんどがこっちのロボットになってるよ」
奥では、光を放つおにぎり製造機が、次々とおにぎりを握っています。かたわらの別の機械からは、何やら通信が入ってきているようです。
「本隊から催促だ。やれやれ。早く終わらせて、この着ぐるみを脱ぎたいや。腕をいれるところが2本分しかないから窮屈でかなわん。しかし、本当に正しいんだろうな、この姿は。さっきの子供が妙な顔をしていたぞ。この星のおにぎり屋は頭にツノをはやした赤ら顔の大男でいいのか?」
「そのはずだ。ほら」
仲間が3本目の腕の8本指で示した先には絵本がありました。
「よく見ろ。人間どもにおにぎりと飲み物をふるまっているだろう。この地域ではこのやり方で正しいはずだ」
赤鬼が人間たちにお茶やお菓子を出して仲良くしている挿絵です。
「他地域では、太って杖を持った老人に化けてフライドチキンを配ったり、それなりに成功しているようだな。よし。本隊に連絡だ。地球侵略のための第一段階はほぼ成功。基地確保のため、人員増強を要請する」
「了解」
2人の侵略者の傍らで、おにぎり製造機が、再び、人間を言いなりにする薬を入れたおにぎりをポンポンと作りはじめました。
END

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