熱処理加工全般 |
金属熱処理について樺部熱工 |
1・ 熱処理とは?*金属材料にその使用目的、用途を考え所用の性質を与える為に行う加熱 冷却の組合せを(heat treatment)と言う。 2・ 連続炉(メッシュベルト式コンベアー炉)について![]() 連続焼入炉は簡単に言うと金属材料を焼入炉において十分加熱し、(*変態点 以上723度以上>)速やかに油層または水槽の中へ投入し、材料全体を *マルテンサイト組織に変態させ硬化させる。(焼入れ) その後、必要に応じた硬度に合わせた温度で焼戻す。 3・ 焼入れを行なうについて*変態点 金属材料を焼入れ炉内において加熱している時、材料が723度以上に 加熱されると、材料はオーステナイトと言う組織に変態(変化)する。 オーステナイト化温度は723度といわれているが、材料の中心部まで 熱が行き届く様に通常、焼入温度(焼入炉内温度)は723度プラス 150度〜100度の830度〜870度±20度くらいで行なっている。 当社は870度±20度設定が多い。 *オーステナイトからマルテンサイト組織への変化 焼入炉内でオーステナイト化した材料は通常そのままで使われる事はな く、油層又は水槽等の中へ投入し急速に冷却する。 急冷する事によって 焼入炉内で得られたオーステナイト組織がマルテンサイト組織に変化する。 材料が冷却されるスピードが速ければ速い程、より硬度の高いマルテ ンサイト組織が得られる。又、材料の質量が大きくなると冷却速度は遅く なる(質量効果)。当社は油焼入でやっているが、この油焼入も、種類 によって冷却能力が変化する。 その他には噴水焼入れ、熱浴焼入れ等があるが連続路では使用しない。 *マルテンサイト組織 油焼入れ後の材料は一般にマルテンサイトと焼入れの際、マルテンサイト に変化しきれなかったオーステナイト(残留オーステナイト)から成っており、 炭素量(C量)の多い材料程硬いマルテンサイトになるが同時に、 このマルテンサイトという組織は、硬いがもろく、不安定な組織であり、 材料内に大きな内部応力を持っている為、そのままでは使用できず、焼入れ 後の材料はなるべく早く焼戻しをしなければならない。焼戻しをせずに、 長時間放置しておくと、材料割れ等の不具合が生じるので注意が必要である。 焼入後の不安定なマルテンサイトや残留オーステナイト組織は、使用中に 相変化を起こし鋼製品の形状や寸法に狂いが生じやすいので、焼入れに よって金属材料に生じた組織(マルテンサイト、残留オーステナイト)を変態 又は、析出を進行させ安定した組織に近ずけるとともに内部応力を減少 させ必要な性質や状態を与える為に行なうのが次工程の焼戻しである。 4・ 焼戻しについて*焼戻し(tempering)は焼入れ後の材料を、その用途に応じた硬度 を得る為に行い、焼入れした材料の靭性(粘り強くて衝撃によく耐える 性質)を増加し、又硬度を減らす為に行なうのも重要な目的といえる。 その為に、焼入れ後の材料を変態点以下に加熱した後、冷却する。 戻し温度が必ず変態点以下なのは、前にも述べたように変態点以上に 加熱すると材料がオーステナイト化してしまう為である。 5・ まとめ![]() 以上の様な流れで素材が目に見えない所で変化しているが見えない分 注意が必要である。 当社では行なっていないが、焼入れには、他にも材料の表面層を硬化する為に、 ・浸炭焼入れ ・窒化 ・高周波焼入れ ・炎焼入れ 等があり、これらの操作を表面硬化という。 当社には上記の設備はない為直接には関係ないが、一応付け加えておきます。 *高周波焼入れと炎焼入れ 金属材料の表面を加熱し、オーステナイト状態にした後急冷すれば表面は、 マルテンサイトに変態し硬化する。表面を高周波電流による誘導加熱作用で 加熱するのを高周波焼入れといい、バーナー等の炎で表面加熱するものを 炎焼入れという。 これらは表面硬さを高める他、耐摩耗性を向上させる他、耐疲れ 性も改善させる。 * 浸炭焼入れ 金属材料の表面層の炭素量を増加するために、(鋼の硬度は、材料中の 炭素量によって大きく変化する。炭素量が多ければより硬くなる。)浸炭 剤中で加熱処理する事を浸炭といい、浸炭処理をした材料焼入れし表面の 硬度を得る事。この処理は、炭素量が少ない材料に用いられ浸炭には、 ガス浸炭、固体浸炭、液体浸炭、などがあり、使用する浸炭剤の種類に より分けられる。 * 窒化 材料の表面に窒素を拡散させて表面層を硬化する事。 ガス窒化、液体窒化、イオン窒化などがあり、表面の耐摩耗性が 大きく向上する。 ![]() ![]() |