小説を書くために
  祝福された土地、伊豆
 『血の日本史』や『金沢城嵐の間』などで、読者を増やす歴史小説家。
安部氏は、伊豆をこよなく愛し天城湯ヶ島町下船原に仕事場をもつ。
インタビュー

〇仕事場として天城湯ヶ島町を選ばれたのは?

 川端康成の『伊豆の踊子』の舞台であることや井上靖のふるさととして漠然と知っていました。ある時ふっと行って見ようとおもったんです。
 紀伊半島のヘソにあたる部分に天川というところがありますね。天川弁財天などがあって、心気の澄むポイントだと言われています。それを伊豆に置きかえてみると湯ヶ島ではないかと、ふと思ったんです。


〇いかがでしたか?

 素晴らしかったです。人々の親切、人情というか。山合の田んぼの田舎の風景。僕の田舎にそっくりなんですね。
 それに山の中の温泉、ここにいると不思議と心気が澄んできてイマージネーションが立ち上がってくるんです。
 川端康成とか梶井基次郎とか尾崎士郎とか、おそらく伊豆の湯ヶ島へやって来た多くの作家たちも同じように感じたんじゃないですかねエ。