まずはパッドを買ってきます。正直な所交換時期に来ていたのはリアだけだったので、総額$200くらい以下という予算でできるだけたくさんの車輪のパッドを交換する事にしました(笑)。
で、お店に行ってパッドの代金を聞いたら・・・フロント$7、リア$6(各2輪分づつ)・・・つまり、4輪で計$13(!)、一瞬耳を疑いましたが、即4輪分注文しました(笑)。フロントが明日、リアが明後日入るとの事なので、まずは一安心です。それにしても最終製造年から10年以上たった車の部品の在庫を持っているとは・・・物を大切にするアメリカ気質に多謝♪、です。 |
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パッドを取ってきたら、作業に入ります。例によって、手持ちの道具で勝負です(笑)。基本姿勢は、「最小の投資と最大の工夫(笑)」交換は1輪づつジャッキアップして行いますので、輪止めをかけます。ジャッキアップすると車は傾く事になり、この状態では意外なほどに車は安定しませんのでこれは必須です。が、店主輪止めを持っていない(涙)。
で、ガレージの中を捜し回って、以前自転車を壁から吊る為に作ったハンガーを見付けました。これを対角線上にある車輪にかけて輪止めをします。色もオレンジでなんとなく安全対策用部品っぽいし(笑)。 |
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フロントの場合、予め作業をし易い様にハンドルを切ってタイヤ後ろ側を外に向けておきます。が、これは好みだと思います。タイヤ(:ホイール)の外し方には色々とあると思いますが、店主の場合はくるくるとジャッキを回してタイヤが少し浮いた辺りでネジを半分緩めます。で、更に上げてタイヤが完全に浮いた所でネジを外します。ホイールにかなりの荷重がかかっている状態で緩めきると何となく良くないかな〜、と思うんです。それほど気にする事もないのかもしれませんけども(^^ゞ。 |
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おー、なんとこのFiat嬢、フロントにダブル・ウィッシュボーン(double
wishbone)・サスペンションをおごられています!上下2本のリンクを持っていて、タイヤの接地状態を常に理想的に保つ構造です。サスペンション形式としては特に新しい物ではないんですが、このクラスのこの時代の車についているのが店主には新鮮です(もし「一般的だよ♪」というのでしたらご容赦<(_
_)>)。それにしてもこの車、次から次へと驚かせてくれます。 |
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ディスクブレーキのキャリパー(ディスクパッドを保持している部分)っていうのはパッドの摩耗その他に合わせて動く様になっている必要があります(:フローティング・マウント)。店主の知ってるフローティング・マウントって、大抵上下2本の平行な棒に沿ってキャリパーが動く物なんですが、このFiat嬢のキャリパーはちょっと違った方法でマウントされてました。キャリパーの上下に小さな板が挟まれており、やはり上下に置かれた2本の「□」状のスプリングで支えられたキャリパーは、その板に沿って動く様になっています。この板が抜けてしまうとFiat嬢はブレーキングの能力を失ってしまう事になるのですが、その板の抜けを防いでいるのは・・・ |

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右の写真の右上の「ひょうたん型」の小さなスプリングです(^^;・・・因みに下においてある物差しが15cm・・・直接力はかからない構造なんですが、うーむ、これに命を預けているのかと思うと自然と取り扱いも敬意を払った物になります(笑)。写真の中に置かれている部品は、左上からブレーキパッド(2枚組)、キャリパーを支える板(2枚組)、抜け止めのスプリング、下の2個の小さな部品がブレーキパッドをアップライト(実際に車輪やブレーキ、ステアリング機構などを支えるブロック)の中の正しい位置に押し上げておく為のクリップです。どれも大事な部品ですが、その重要さに比べてなんと小さな事か(^^;。 |
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・・・といった部品を外し、ちょっとこじってやるとキャリパーが外れます。ブレーキパッドはこのキャリパーに組み込まれているピストンに押されてローター(:ディスク)を挟み、車の運動エネルギーを摩擦で生ずる熱エネルギーに変えて速度を落します。このピストンはパッドの摩耗に従って薄くなってきた分だけ前に出てきます(:パッドとディスクの間隔を一定に保ち、ブレーキペダルの踏み代を一定にする為)。で、新品のパッドを入れる時には、この出て来ている分を押し戻さなければなりません。が、店主もちろん(笑)専用工具など持ってない。
で、通称「シャコ万」と呼ばれる「コ」の字型のバイスとスパナを組合せて使います。シャコ万を締め込んでいくと「ぢゅぅぅぅぅぅ・・・」という感じでピストンが戻っていきます。この「ぢゅぅぅぅぅぅ・・・」は、ブレーキ液がずっと配管を通ってリザボア(ブレーキ液をためておく所。ブレーキ液の減りなどを点検する時に見る、大抵は白っぽい、エンジンルームにあるちいさなタンク)に戻っていく時のものです。 |
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パッドに、お店のおっちゃんが「こいつはつけといた方がいいぜぃ!」と言って渡してよこした(もちろん有料(笑))「鳴き止めのシム」を貼ります。写真では形がわかりやすい様に裏返しです(ほんとは黒なので)。一般に鳴き止めにはパッドの背板にうすーく耐熱グリスなどを塗りますが、これを貼っとけばそれで良いそうなんでそうしました(笑)。にしても、パッケージの謳い文句には「あらかじめパッドの形に成形されて・・・」となっているのに全く合っていません(^^;・・・念の為にお店に持ってって再度確認したら「品番はこれで良い。もともと小さくできているのだ。」・・・って、おいおい、書いてある事と違うぞ(笑)。まぁ、「絶対OKだ!」って言うので、そのまま信じて組んでみる事にします。
パッドの背板にクリップをはめ、所定の位置に置きます。あとは今までの順番を逆に辿っていきます。フローティング機構の各部にはちょっとグリスを塗っておきました。 |
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フロント2輪の作業を終えてリアに移ります。同じ順序で持ち上げて、タイヤを外して、キャリパーを外して、ピストンを押し戻して・・・あれ?押し戻らない(汗)。もちろん、機械式と思われたパーキングブレーキは解除してあります。ちょっとピストンの動きが渋いのかな、と思って力をかけていきますが、びくともしない・・・参った。このままではキャリパーが広がらず、新しいパッドを挟めません。空気抜きのバルブを緩めたり、パーキングブレーキの動作を確認したり、どっかにワンウェイ・バルブ(一方向にしか流れない様になっているバルブ)がないかとか、小一時間あーだこーだとない知恵を絞っていろいろとやってみたのですが、ピストンはびくともしない(涙)。
仕方ない、そのままピストンを出し切ってみる事にしました。ブレーキペダルをきこきこと踏むとちょっとづつピストンが押し出されてきます。動作はきちんとしている様です。で、ぽこりと外れたのですが・・・目に入ったのはご覧のロッド。ピッチの大きな螺旋が切ってあり、ピストン側にはこれを受けるネジが組み込まれています。が、このネジが逆転しない様になっている。どうやらこれは、パーキングブレーキの引き代を一定に保つ自動調整機構らしい。うーむ、またも驚かされました。 |
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構造がわかった所で一旦外れたピストンをネジに軽く押し込み、時計回りにまわします。おー、するすると入っていく♪この時の気持ちは、「助かった」(笑)。反対側の車輪も同じ様に作業を進めます。が、こっちはちょっと動きが渋い。外してみるとブレーキ液のかすの様な物がピストンにこびりついています。拭くだけでは取れなかったので磨き落とす事にしました。が、絶対に液漏れに継がる様な傷をつける訳にはいきません(ピストンの表面はとても滑らか)。しかしもちろん(笑)、店主、気の利いた専用品なんて持ってない。そこで使うのが歯磨き粉です・・・ほんとに効くんですよぅ!
歯磨き粉は目の細かい、大変優れた水溶性の研磨剤なのです。もちろん人体にも優しいし(笑)。
で、一旦元どおりに組みますが、そのままではブレーキは効きません。キャリパー内に入っている空気を追い出し、キャリパー内をブレーキ液で満たさなければならないのです。そうしないと、ブレーキングに使う力が空気の圧縮で食われてしまい、いくら踏んでも効きません。で、空気抜きという作業が必要になります。
キャリパーには、前述した空気抜きのバルブがついています。これに透明なパイプ(店主はストローで代用(笑))を継ぎ、ちょっと緩めてブレーキペダルを踏んでやります。すると空気の泡の混じったブレーキ液が出てきます。で、ペダルを踏みきったままこのバルブを閉め、ペダルを戻してからバルブを開けて踏んで・・・を、出てくるブレーキ液に泡がなくなるまで続けます。進むに連れてリザボア(前述)のブレーキ液が送り出されて減りますので、それに応じて足していきます。 |
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ここまでできたら、あとはタイヤを元どおりに組んで、車に関する作業はお終いです。ちょっと走りに出て何回か軽くブレーキングしてやると当たりが出てきて、最初はがくがくとしていた感じもパッドの落ち着きにあわせて消えていき、滑らかになってきます。そこそこ滑らかになった所で安全な直線路を見つけて、やや高速から数回の急制動をかけてパッドの温度を上げてやり、新しいパッド回りの要らない油やその他の付着物を飛ばします。ある時期からぐん、と制動力が上がりますんで、それが感じられたらOKです。