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フツーの日記/2000年7月版
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07/23(日)-湯

イタリアから流れて今はイギリスの田舎に居る。イギリスの宿には店主が好きな点が幾つかあって、その内の一つが、殆どの宿にズボンプレッサー(イギリス式では「トラウザース・プレス」)が装備されている事だ。出張の様に持ち歩ける荷物に制限が出て、しかも毎度プレスだけを依頼するのもはばかられるもののアイロンを自分で掛けるもの面倒だが折り目は付けておきたいな、等という場合に大変重宝である。

もう一つ好きなのが、部屋に湯沸しポットが備えられている事。これがあるのと無いのとでは、旅行中の食生活に天地の差が出ると言っても過言ではないだろう。

店主は甘い物が好きで、でもそれは主に、和菓子系の餡子の甘さが好きなのだ。クリーム、バター+砂糖系の甘さは、嫌いじゃないけどこれから先一生、どちらか一系統だけしか摂ってはいけない、と言われたら餡子系をとる。そしてその餡子系の甘さには緑茶が欠かせない・・・こうしている今も、日本から持ち込んだ水羊羹と緑茶を頂いている。至福至極、である。

ポットと一緒にカップ類とティーバッグ、砂糖、ミルク、さらにはビスケット類なんかも置かれている。そしてそれらは使えば毎日補給され、更にハウスキーピングのおばちゃんと馴染みになれば「ビスケットもうちょっと頂戴♪」、なんて事もできる。が、とにかく湯、熱い湯が望む時に手に入る事とはこんなにありがたい事なのだ、と思わせてくれるのが湯沸しポットなのだ。そりゃ、ホテルのフロントに頼めば湯はくれるけど、熱湯はくれないみたいだし、魔法瓶ではまず出てこないし、一日に何回も湯をもらうのは憚られるし面倒だ。

普段何気なく使っているけど、「湯」が簡単に手に入る、というだけで食べられる物、味わえる物というのはそれが無い時に比べて一気に増えるのだ。今回、2週間の予定だけれど湯がある事を当てこんだ食べ物を結構用意してきた。お茶漬け、カップめん、インスタントじゃないコーヒー、緑茶(とそれに伴う和菓子類)・・・やった事は無いけど、多分パックの御飯やレトルトのカレーを暖める事も可能だろう、おっと、今度は味噌汁も入れなきゃ、と夢は膨らみ、次の出張が待ち遠しくなる(ちょっと嘘)。

これで電子レンジがあればもっと豊かになるのだろうが、しかしそれではつまらない。日本にいる段階からスーパーストア、或いはコンビニエンスストアの陳列棚を物色し、計画を立て、食料分配を検討して使い切りつつ充分満足できる様に「献立」を考える・・・限られた手段の中でいかに自分を快適にさせられるか、の挑戦でもあるのだ。
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07/19(水)-イタリアで学ぶ「ピザの食べ方」

仕事でイタリアはトリノ市に来ている。先週の木曜からだから、今日で1週間居る事になる。この間何に一番神経を使わされたかと言うと、食事なのだ。

ホテルは、ヨーロッパで結構手広く展開しているらしいアメリカ系のBestWesternだから、フロントその他では英語が通じる。毎日出向いている得意先の人は英語を話す。タクシーの運転手氏は心得ていて、向こうから「レシート?」と手振りも使って聞いてきてくれる。が、食事・・・これがバリバリのイタリアーノだ。まず英語は通じない。

一つの傾向として、鉄道での国外旅行が行えるヨーロッパでは、特に大都市の駅の周りには英語が通じるお店が多い・・・と思っていた。しかしこのトリノ市の、店主が泊まっているホテルの近くの駅ではどうも普及具合がイマイチな様だ。「英語で良いか?」と聞くとほぼ「駄目」、と言われてしまう。お店の選択にセンスがないのかもしれないが。デリカテッセンの様なところに入ってショーケースの中のサンドイッチを指差し続けるのもちょっと嫌になってきた。ホテルで、英語でOK、のレストランを紹介してもらって2回はそこで食事をした。でもちょっとお高めで、毎回は行けない。それと、そこにはパスタはあるけどピザがない。イタリアに来てピザを食べませんでした、では何となくマズいだろう、と勝手に思い始めた。

という事で、在イタリア7日目、ついにピザに挑戦だ。小さいけど抜群だよ、とホテルでご推薦の店(英語不可なのを確認済み)に向かって、一緒に来ている同僚とお互いに気合を入れ合って歩いていったら営業を終了していた。

で、多少外れた気分のまま、開いていた2軒となりのお店に入る。「英語で良いか?」と聞くと一人だけ少し話せる、という。その人と5分くらいかけて意思を疎通させ、めでたくテーブルについて100%イタリア語のメニューを開くと・・・ピザだけで100種類以上ある。トッピングの説明がついているのだけれど、所々しかわからない。チーズの名前数種とマッシュルーム、ズッキーニ、生ハム、ほうれん草、位を辛うじて見分ける。

結局、生ハムとマッシュルームのピザとカプチーノを頼んで待つ事暫し、思ったより大きなそれが運ばれてきた。直径30センチ位か・・・が、いわゆる「シン・クラスト」で生地はとても薄い(店の一角で生地をこねて丸く作っているけど、見事だった)ので、意外とボリュームはないのかもしれない。

4つの切り込みを入れて8つに分け、手に持って食べ始める。ほんとに生地が薄く、三角形の中心側の頂点のあたりはあっさり垂れ下がるので具がぼとぼとと落ちる。仕方ないのでそこを折り返して食べる。ちょっとかっこ悪いかな、などと思う。

その頃まで店内のテーブルの見える範囲には店主たちしか居なかったんだけど、隣に母子づれが座ってピザを注文し、食べ始めた。子供の方をちらっと見ると、ピザを小さくナイフで切ってフォークで口に運んでいる。しまったさては本場ではそうやって食べるものだったのかもしかしたら店主たちはとてもカッコ悪い事をしていたのか、と思い、慌てて手を拭ってフォーク+ナイフ式に切り替える。外側の方の、割と固めの部分も「そうなんだから」、と頑張って切って食べる。

で、暫くして再び伺いみると・・・その子は手にピザを持って食べている・・・。何の事はない、先端部の、手で持つのに具合が宜しくない部分を先にナイフ+フォークで切り取って食べ、手で持てる硬い部分はそうして食べていただけだった。

食事のマナー、作法とは、基本的には、その雰囲気に合わせた中でお互いがお互いに不快な思いをさせずにおいしくいただく為にあるもの、だろう。大抵の場合、それは無理なく食べ物を口に運べる様な方法に落ち着くものだと思われる・・・なんて事を考えずとも、ピザくらい好きに食べればいいのか。
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07/07(土)-ハムスター

暫く前からハムスターを飼っている。これは店主達にとって3匹目のハムスターになるんだけど、一見同じなハムスターもそれぞれ微妙に、でも明らかに違うのだ。

諸般の事情から「てっちゃん」と名づけられた「彼女」は、前の2匹に比べると店主達に良く懐いている様だ。これはもしかしたら、飼い始めの時期によるのかもしれない。てっちゃんは以前の2匹に比べて小さい頃から飼われ始めていて、だから「刷り込み」に近い事が行われているのかもしれない。或いは前の2匹で培った経験が生きていて、手懐け・・・いや仲良くなるのが上手になったのか、いや用意した餌や小屋などの環境が気に入って感謝の意を表しているのかも・・・とまあ、何とか自分達に懐いていると思いたがり、そうじゃないかと薄々どころか9割方まで思っている「個体差」「個性」をできるだけ後ろの方に置きたがっている状態を指して「ペット馬鹿」と呼ぶのだろう。

が、何と言われようとかわいい。籠の中に手を差し入れてやるとくんくんと匂いをかいでからちょこんと前足を乗せ、ややあってよいしょと上ってくる、その時点でかなり幸せになれる。手に乗せようと思う時には、できるだけ不安感や違和感を与えない様にときちんと手を、それも石鹸を使わずにお湯と水で良く洗ってからアプローチ、だ。何かの上から取り上げる時にはゆっくりと両側から包む様にしてできるだけ急激な動きを避ける。また床に放して動き回るのを座り込んで見ている時、店主を見つけて身体に上って来たり、小さな黒い目でじっと見られたりすると幸福も絶頂に達する・・・ハムスターはすごい近視で、自分の目の前にある物の姿かたちもはっきりわからないらしい、というのは都合良く忘れる。

大きな声、音などで驚くたびに寿命が縮まり、急激な環境の変化にもあまり強くなく、とても小さくてふわふわしているので何かを無理強いしたりなどという気にはとてもならない。また残念ながら何かを教え込んだり、双方向のコミュニケーションを取る様な状態に持ち込むのは諸説総合するとほぼ不可能らしい。そんな思いの中で、「てっちゃん」がランダムに示す親愛の情らしき兆候を見つけ出しては、或いはそうこじつけては嬉しがり、なかなか思い通りに動いてくれないときにはがっかりする。明日はもっとお近付きになれるかも、と、せっせと世話をし、乗って頂けるまで辛抱強く籠の天井に空いた穴から手を差し入れつづける。座り込んだ店主の周りを走りまわり、服を掴んで上ってくれば「懐いた、懐いた」と大騒ぎする。

さあ、この関係において主導権を握っているのはどちらなのか・・・体重体格の比率から言うと、てっちゃんが偉業を成し遂げている事には疑いがない。
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