機関誌あけびより 『幸せの背くらべ』

あれこれ裏話

劇団NLT制作の塚原純江さん。黒柳徹子さんと地方公演の旅を始めて早20年。「世の中みんなテスト病」「ニノチカ」「幸せの背くらべ」の三作で日本3周は廻っているという塚原さんに、徹子さんのことや今回の芝居について、お話を伺いました。
 
 中央が劇団NLT制作の塚原さん
徹子さん じつは今…
 「徹子さんて舞台もやって、テレビにも出ていて、(ユニセフなど)外国にも良くいってて、どうしてそんな時間があるのですか」って皆さん言われるんですけれど、とにかく頭の切り替えが早い人なんてすね。実は今、もう開演まで二時間無いですけど藤枝市民会館の楽屋で東京の出版社の人が来て本の打合せをしてるんです。たとえば一緒に出ている阿知波や真堂は、開演の二時間くらい前から徐々に役に入っていき、終演後もやっぱり二時間位かかって役を降ろすんです。でも徹子さんは開演ギリギリまで書き物をしていたりFAX読んだりしています。で、カーテンコールの瞬間にはもう黒柳徹子に戻っています。あのカーテンコール、女性Aは完全に抜けてるのわかりますでしょ?並んで立っている阿知波や真堂はあの時点ではまだ女性BだったりCだったりしてる訳ですよ(笑) ああいう芝居ですからそれが普通なんてすね。徹子さんがスゴイの。テレビがまだ生放送だけという時代からやってるから訓練されたんでしょうね。

じつはアレ…
セットは裕福な女性が六十年あそこで生きてきたと感じさせなきゃならないから小道具が大変。徹子さんからの借り物もあります。椅子はアンティークの高価なもので保険掛けてるし、三人の衣裳は手縫いのスパンコール付で一着二百万円。阿知波には太ったら自腹で直せと言ってます(笑)。それから天井があるセットって珍しいんですよ。舞台ではどんなに立派に家を建てても天井はないのが普通。天井がある分、トラックが二台になってしまいました。その分だけ上演料が上がってしまってすみません(笑) 「地方公演は天井をやめてトラックー台にしようか」とも考えたんですが、やはり地方だからって変えたくない。ちゃんとやりたい。2ステージの団体ではバックステージツアーというのをやっていて、セットの隅から隅まで説明付で会員さんをご案内するんですよ。藤枝は1ステージで時間がないので出来なくて残念です。早く2ステージにして下さい(笑)。あれだけのセット、たった一晩で壊すなんて勿体無い!と思うんですよ。
じつは昨日…
パッパッと切り替えるのが日常の人。昨日は富士宮の公演だったんですが、昼間ちょっと時間が空いたんですね。そうしたら着物屋さんに行くといって歩いて出かけまして。前の日にタクシーの中から良い着物屋さんを見つけたらしいんです。『世界不思議発見』は着物でやってますでしょ?地方公演の時は、移動中にデパートにパッと寄って衣裳用の服を買うなんてこともよくあります。『徹子の部屋』なんかはゲストに合わせて衣裳を決めてますから。衣裳さんもいるけれど、徹子さんのほうがゲストの方をよく知っている場合が多いんですね。


じつはクタクタ…
静岡の公演中は役作りに二時間、上演に二時間半、役を解くのに二時間、さらに、ほぼ毎日移動がありますから、普通は《舞台のための1日》になってしまうんです。でも、それではあれだけのことはこなせないです。とにかく時間を無駄にしないで人の二倍は生きてる人です。二十年一緒にいますけど本当にすごい人だと思います。私は普通の人なので一緒に居るとクタクタになります(笑) それだけ忙しい人なのに、公演が終わるとスタッフ全員にお礼状を出したりするんです。感謝の気持を決して忘れない。そういう人ですから、みんなも「徹子さんの為に」って自然と心配りをするし、頑張るんです。


芝居のこと じつは???
 「幸せの背くらべ」は、初めて台本読んだ時はなんだか訳が判らなかった(笑) 徹子さんもそう言ってました。台本読んで喜劇だと思えたらすごい、文字だけで見たらとても笑えない。この芝居であれだけ笑えるのは徹子さんの力。ボケた様子や性的に際どいセリフなど徹子さんがあそこまでやってくれますから、観ている人が入りやすくなる。彼女でなければ本当に暗くて難しいだけの芝居になってたと思います。
2005年3月27日 藤枝市民劇場 事務所にて


作品紹介に戻る