みきのくち 1



隣家の大工さんが、年の暮になると、ビシュウ檜の板を削って経木を作り、それを組み合わせて、お正月の神棚を飾るための細工物を作っているが、名前も何を象っているのかも知らないと言う。
何を象っているのだろうか?歴史は?他県にもあるのだろうか?




♪ 「正月ん来たっちょ、何にのって来たっちょ、ゆずり葉にのって ゆずりゆずり来たっちょ」 ♪ (清水市民謡)

日本人は、神様は、私達人間世界にいつも居るものではなく、お祭りの時、天空から舞い降りて来て、福を授けると考えて来ました。


神様をお迎えするためには、神棚、床の間などの神様の鎮座する神座(しんざ)が必要です。神座には、鏡餅やお神酒などの神饌(お供物)をお供えします。お神酒を入れた瓶子やお神酒徳利(お神酒すず)などの口を飾る縁起物が、ミキノクチです。ミキノクチには、紙製、竹製その他いろいろな種類がありますが、常緑樹(杉、桧、松など) の小枝をミキノクチとしてお神酒徳利などの口に挿すことは、全国的に行われて来ました。ミキノクチには、御幣(ごへい)門松のように、舞い降りた神様を宿らせるための、 よりしろ(依代) としての役割もあります。 祭りなどでは、その後、お神酒は下げて、皆でいただきます。
○「依代よりしろ)」・神霊が宿ると考えられているもので、古木、巨木、巨岩や御幣、樹木、動物などですが、依代そのものではなく、依り付く神様を敬います。





神国童子訓
(しんこくわらべおしへ)

万達(まんたつ) 著

(文政13年と書き込みのある写本から)
みきの口(紙製) ★は、往来物(寺子屋用教科書)の印也。

御幣へいそく(幣束=御幣)ハ神前へ物をそなへ奉るに、是を付して納る礼儀なり。神馬の上に幣を立るを以ってしるべし。世俗の人貴人へ物を送るに、のしを付して送る。のしはへいそくのりやくし也。
御神酒みきの口を紙にてたヽむも、「へいそく」を付(つけ)しかたちのりやくし也。
雄蝶雌蝶」を略した折形もあり、「略瓶子(飾)」とも言われました。




御幣の原型と考えられているものが、削り花(削り掛け)です。ヌルデ、ニハトコ、柳などの柔らかい木の枝を途中まで削って、花のようにしたものです。小正月に、神仏に供えます。全国各地で作られていましたが、ミキノクチと同じように作者が激減しています。
清水市山間部でも、戦後しばらくまで、「アーボー」と呼ばれて製作されていました。

小正月飾り
ダンコウバイ製 マメンブシ(キブシ)製
山梨県富士河口湖町 清水区宍原(ししはら)
作者
望月 多喜夫 氏
提供
宍原小教育ボランティア・大木静子 氏
有難うございました。





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