8/10〜12 夏休み 源流バックパッキング (奥飛騨編)
 数週間の準備期間を経て、いよいよ、「夏休み 源流の旅」本番です。奥飛騨へ2泊3日の渓泊まり、同行者はしんのすけくん。彼は、何度かかの地に釣行しているので心強いです。しかし、事前の話では、山道の歩きはきつく、峪は険しいところが多く、釣り人、登山者の遭難も頻発しているそうです。更に、熊の生息数も多く、その気配は濃厚の模様です。この手の釣行は初体験の自分は、装備、体力共に不安でしたが、事前の準備は入念にこなしたつもりです。
 いざ、奥飛騨!出発当日は、大きな期待と僅かな不安が交錯して、少々興奮気味でした。

 中央道みどり湖P/Aでしんのすけくんと合流して、遠路遥々、ようやく高原川水系S川に沿う林道の車止めに到着しました。そこには、林道補修工事のために臨時のゲートが設けられており、テン場までのアプローチは更に遠くなっていました。
 いよいよ、きつい山道の始まりです。20kg近い装備を身に着けたとたんに、汗が滲んできます。自転車を押しながら、林道を歩むと、数メートルも進まないうちに汗が滝のように吹き出し、ザックが肩に喰い付きます。ボクは肉体労働者なので体力には自信があったのですが、あまりの汗の量と荷物の重さに、体力が持つか少し不安に襲われました。先を見るとうんざりするので、足元を見ながら黙々と歩を進めます。  

 しかし、1歩1歩と歩みを進めるうちに不安は消え去り、えも言われぬ爽快感が溢れてきました。渓谷の自然に包まれて、普段はあまり感じることの無い、清涼な空気、蝉の声、木々のざわめき。 山のえぐれからほとばしる沢水、素掘りのトンネルの岩肌から漂う冷気。その全てが身体に心地よく、疲労を感じません。
 1時間足らず、思っていたよりも早く、通常、一般車両の通行を規制するゲートにたどり着きました。
 そこには、ここから先に入ったきり、行方の分からない方の情報を求む看板や、この先に進む人への、注意と警告を促す看板が立っていました。そこから更に1時間弱の歩きでテン場に到着です。その付近には、発電所の工事によるものなのか、殉職した方々を供養する社が奉られていました。

 話は脇にそれますが、自分の仕事場である建築現場の真夏は、着ている服に白く粉がふくほどに汗をかくことも度々ですが、今日はそれよりも多い汗をかきました。1リットルほども汗が噴き出たような気がします。仕事の後は体を動かすのも億劫なほどに疲労困ぱいしますが、今日は驚くほどに爽快な気分です。この違いは何なのでしょうか?
 現代生活は、とても快適です。自動車、エアコンなどなど・・・ 自分もその恩恵に浸りきり、今の豊かな生活をありがたいと思って、日々の暮らしを送っています。
 しかし、人間が生きていくうちで、本当に大切な事って何だろう?って改めて考えずにはいられない、とても貴重な体験でした。
テン場の脇の水場です。歩きの後、渇ききった体に染込みました。10秒と手を浸けていられないような冷たさで、今まで飲んだなかでも1番の名水でした。
ゲートの先に待っている
のは・・・?
 テントを設営し、簡単に昼食を済ませ、昂る心を抑えきれぬまま川へと降り立ちました。
  源流ではありますが、この付近の流れは落差も無く、グリーンの清冽な水色のなかに、ドライフライに格好のポイントがいっぱい待ち構えています!
 最初のポイントから、(絶対に岩魚がいる!)って雰囲気がプンプンしてます。第一投をしんのすけくんに譲っていただき、興奮気味にキャストします!・・・が思惑は外れ沈黙です。
 「あれれ・・・」
 そんなボクを尻目に、しんのすけくんは幸先よく初物をキャッチしました。後に続けと釣り上がるも岩魚のアタックも頻繁ですが、なかなかキャッチまで至りません。
 100mほどで4〜5尾釣り落としたでしょうか?ちょっと頭に血が上り始めた頃、ようやく心地良い躍動が手元に伝わりました!ヤマメほど俊敏ではありませんが、ボクが経験した他の川の岩魚よりも、ずっとシャープで速い引きです。その躍動感は堪りません!!
  
 本来は、素早くフックを外し、スマートにリリースをするのが理想なのでしょう。しかし、せっかくの想い出に残る出会いなので、写真を撮りたいと思うのが人情です。
 いつも魚の写真には、手こずらされるのですが、ここの魚はいつにも増して大変でした。何しろじっとしていないのです。隙あらば逃げてやる!!とばかりに暴れ、野性味溢れています。この後、手にしたこの川の魚は全てそうでした。
 夢中で釣り上ります。9寸がらみも混じり、2人とも十分な釣果を得ましたが、釣り落としが多く、まだまだ釣り○チの虫はおさまりません。
 ところが、突然に体が重くなってきました。何か、夢の中のように体のコントロールが利かない感じ。つまらない石に蹴つまづいて無様に転んでしまいました。完全に燃料切れです。
 「もう、終わりにしませんか?」
 薄暮の中、食事を済ませると、辺りは濃密な闇に包まれてきます。夜はこんなにも暗いのか。本当に久し振りにそう感じました。
 下界のように、ドロンとした空気とは全く違う鋭利な空には、キラキラと星が瞬いています。
 
 後は眠るのみ。 実に心地よい、至福の眠りに就きました。
 翌日は、更に上流のパラダイスを目差します。林道は急に勾配を増し、ガレ場の続く廃道へと化していきました。
 ガレの後は、潅木の茂った藪のなか。濃厚な野生生物の雰囲気がします。笛をピーピー吹きながら、この先はどんな険しい川が待ち構えているか、と思っているうちに、拍子抜けするほど、明るく穏やかな渓が目に入ってきました。 
 脱兎のごとく渓に降り立ち、夢中でフライを投じ、渓を遡りました・・・・。
また来夏に!!
相棒。
 しんのすけくん、本当にお世話になりました。ありがとう。良き想い出として心に刻まれました。
 
 そして、来夏も!! 
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