VOL. 20
● 1年戦争
第1話 【暴走】
2004年5月29日(土)。2週間前にサスペンションのO/Hとチタンコート,カシマコートチューニングを愛車のRVF/RC45に施した為、感触を確かめる為に浜名湖湖畔北側にある通称、三ケ日オレンジロードに繰り出した。ここはスリッピーな路面で事故も多く「攻める」走りをするにはリスクが大きい場所として知れ渡っており取り締まりも厳しい為、レザースーツ姿で訪れた事は一度も無い。土日ともなると常連の走り屋連中が命を削って走行しているが、毎月、事故の報告を受けている場所でもある。
三ケ日方面から細江町方面に向けて走り出し、加速→ブレーキング→ブレーキリリース→リーン→加速をコーナー毎に繰り返しサスの動きをチェックしながらリズム良く走行していた。やがて前方に黒色のホンダインテグラ・TYPE-Rが頑張って攻めているのが視界に入ってきた為、スロー走行。スモークガラスでドライバーの表情も伺え知れない為、しばらく距離をとって後ろを走行していた。やがて国道へ繋がる支道となる15番ポストの数百メートル手前からインテグラがハザードを点灯させて左路肩に寄って減速し始めた。「何かトラブルか?」と思い巻き込まれを避ける為にこちらも減速し、対向車が来ない事を確認してウインカーを出して対向車線の最右側から追い越しを開始した。ところがこのインテグラ、後方確認もせずハザードを出したまま左路肩から支道へのY字路のスペースを利用して急にUターンを開始したのだ。
目前に迫る横向き状態のインテグラ。Fサスペンションがフルボトムする程のフルブレーキで接触を回避しようとするものの10mも無い距離ではブレーキも効かず空走距離区間であえなく運転席ドアに激突。激突直前の1秒も無い時間の中でニュータイプ能力が覚醒したのか時間を操る能力が発動したのか分りませんが、「もう、この状態では激突は避けられそうも無いな。運転席の真横に激突しそうだからバイクは諦めて身の安全を考えよう。このままハンドルから手を離して激突の衝撃で前方に放り出されれば上手くいけば車を飛び越えて反対側に飛ばされる事が出来るかもしれない。」と考える余裕がありました。(←本当です!)そしてやっぱり激突。イメージ通りにインテグラの屋根を飛び越えて飛ばされます。次の瞬間に空が見えたので、「これは空中で1回転しているな。落下の時に受身を取って身体へのダメージを最小限にしよう。」とここまで考える事ができていました。(←くどいですが本当です!)
どうやって地面に落下したのかは覚えていませんが、ライディングパーティー時のライダーミーティングで「転倒した時にはすぐに安全な場所に避難して二次災害を防ぐ努力をするように」という根本健氏の言葉を思い出しガードレールの外側へ這って避難します。この時、インテグラは何を思ったのか激突した状態で車両を停めることなくUターンを続け反対方向へ走り去ってしまいます。RC45は事故現場で自立しているのが見えましたがインテグラが居なくなった事であえなく傾き始めその場で倒れました。視界からインテグラが居なくなり「ヤバイ!逃げられる」と思いましたが見通しの良い場所に車を止めドライバーが降りてきました。通り掛かりの他のライダーも集まってきてRC45を路肩に引きずって移動させたり飛散した部品を拾い集めてくれています。
インテグラのドライバーはまだ若い青年でした。ガラスで顔を切ったのか上半身、血まみれであり「大丈夫ですか?救急車を呼びますか?」と声を掛けてきた。これだけの人が集まればもう逃げる恐れも無いだろうと判断して、「警察と救急に連絡してくれ」と頼みガードレール脇にもたれ掛かって救急車の到着を待ちます。ヘルメットを脱ごうとするが左手が全く動かず右手だけで脱ぎます。通り掛りのライダーにグローブとジャケットを脱がしてもらいバイク店に電話して引き上げを依頼。自宅にも連絡するがこちらは留守で誰も居ない状況。救急車を待つ間、左手が痺れてきて脂汗と嘔吐感が出てきた。「これは骨折しているな」と直感します。
間もなく救急隊と警察が現場に到着します。救急隊は血まみれの青年を見て「君がバイクに乗っていた方?」と質問しています。「違う!こっちだ。格好を見れば分るだろう!」と私。事故状況から脊髄に損傷の恐れがあるかもしれないとの判断で「大丈夫です」という私の抵抗もむなしく首と腰を固定されストレッチャーに乗せられます。インテグラの青年も同じ救急車に同乗して簡単な事故状況の質問を受けていました。この時に青年は「Y字路を右折しようとしたんじゃないですか?」と訳の分らない事を言っていましたが、私には何も聞かれなかったのでダンマリを決め込みました。
普段の掛かり付け病院である聖隷三方原病院への搬送を依頼し救命救急センターに搬送されます。着衣を全部脱がされ血圧計やら脈拍計を付けられレントゲンを何枚も撮られます。限定発売のCastrol
HONDAのポロシャツは無残にも切り刻まれました・・・。丁度、テレビドラマで救命救急病院を扱ったドラマが流行っていた時期でありちょっとワクワクしました。
レントゲンの結果、脊髄関係には問題はなし。左肘だけが痛かったのでレントゲンを撮ると脱臼の恐れがあるとの事で麻酔で眠らされた後に処置をしてもらいますが、嵌った手応えが無いとの事で『脱臼骨折』の疑いがあるとの診断結果でした。土曜の午後でもあり一般病棟は休診となっている為、月曜日に再度、精密検査の為に来院して今日は帰宅して良いですとの事だった。相変わらず実家とは連絡が取れなかったので勤務中の妹に連絡し迎えに来てもらった。
明日の日曜日は全日本選手権観戦の為に鈴鹿サーキットへ会社の応援バスツアーだったのに。行けなくなっちまったじゃねーか!
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事故現場 | キャスター角 0°の事故車 |